イフリートの解体
俺の説明が衝撃的だったのか、レオン様は固まっている。レオン様は復活するとジョーを呼んできた。
「解体の準備があるじゃが、なんのようですかの?」
「フレッドに作った装備が熱で消える可能性はあるのか?」
「は? フレッドの装備といえば盾じゃから、溶かすのでも大変ですぞ?」
俺はレオン様に溶けていた可能性を伝える。
「エド、溶かすのも大変じゃと今言ったじゃろ」
「でもジョー、フレッドの装備が無くなったんだ。どっかに飛んで行った可能性もあるけど、だったらフレッドがもっと大変な事になってるし」
「どういうことじゃ?」
俺はジョーにフレッドに起きたことを説明すると驚かれる。
「何故それでフレッドは生きておるんじゃ」
「俺も不思議だったんだけど、獣人化が進んだんじゃないかって話になった」
「それで片付けていい話じゃないじゃろ」
確かに鉄が溶ける温度だとすると、フレッドが生きていたのも不思議だが、フレッドの後にいた俺たちが無傷で生きていたのも不思議だ。フレッドはどうやって炎を防いだのだろうか?
「そもそもフレッドの盾はドラゴンの鱗を粉末にしたものを混ぜて使って、強力な魔道具にしておるんじゃぞ。それが溶けるか消えるかなんぞしたら、人の方が先に蒸発するんじゃ」
「言われてみればそうなんだけど、フレッドも俺たちも生きてるし」
「理不尽じゃな」
ジョーの話を聞いていたフレッドも不思議そうに、何故助かったのか分からないと言うので、答えは見つかりそうにない。何故助かったか分かるかは分からないが、ガーちゃんに今度尋ねてみるしかないようだ。
「フレッドの装備が全て無くなったのなら、作り直しじゃな。今度はイフリートと戦っても壊れない装備を作るんじゃ」
「そんな装備作れるの?」
「ドラゴンの鱗を使ったとはいえ、ステンレスがまだ作ったばかりなのもあって、金属との相性が良かったかは分からないんじゃ。ドラゴンの鱗で強化をしていたから、魔道具として成り立っていた可能性があると思うぞ」
ステンレスの相性についても調べないと装備が作り直せないので、装備については後日話し合う事になった。
「これからイフリートも解体されて素材になるのじゃし、調べがいがあるんじゃ」
「ジョー、イフリートの解体お願いします」
「うむ。話し合いに参加してくるんじゃ」
ジョーはそう言って解体をする人たちの元へと帰っていった。
俺たちは解体を待っていると、ライノとレオン様が、ダンジョンの草原以降には絶対に人を入れないようにと、再度話し合っている。
「本当によく無事だったな」
「うん。ライノ、ところで冒険者で俺たちより深くの階層に行ってる人は居なかったの?」
「運良く居なかったようだ。イフリートに出会っていたら死んでいただろうな。イフリートに勝てる冒険者は現在アルバトロスに居ない。イフリートの強さを聞いた限り、勝てる可能性が有ったのがエドたちだな」
俺たちより先に進んでいる冒険者が居るのに、何故俺たちだけが倒せる可能性が有ったのか不思議に思って尋ねる。ライノはレオン様が説明してくれたように、俺たちのようにワームを無傷で倒せる冒険者は居なく、基本的に冒険者は先に進むことを優先しているので、装備の強さは違うが、基本的な戦闘能力で言うと、俺たちと変わらないか落ちるくらいらしい。
「奥に進めば進むほど、魔力が増えたり獣人化が進みやすいので、戦えるのなら奥を目指すのだ」
「なるほど。俺たちはダンジョンの奥にいるイフリートを倒したから、一気に獣人化が進んだり魔力量が増えたのか」
「エドたちはイフリートでかなり変化したのか」
「俺は魔力が増えたし、アンは魔法使いになった。見た目はベスが一番分かりやすいと思うよ」
ライノはアンが魔法使いになったことを喜んでくれた。ベスは聞こえすぎて制御が難しいと人間の耳にしていたのを、ライオンの耳にしてライノに見せると驚かれている。
「そこまでの急激な変化は初めてみるな。私も変化しているので分かるが、変化すると力の使い方が変わるので慣れるまで大変だろう」
「屋敷ならまだ良かったのですが、馬車で移動し始めたら聞こえすぎて辛すぎて耳を変えましたわ」
昨日はライオンの耳のままで馬車に乗っていたのに何故だろう? 俺がベスに尋ねると、ベスも分からないようだったので、昨日を思い出してみると、馬車に乗っている時にフードを被ったままだったから、聞こえる音が減っていたのかもしれないという結論になった。
「耳を覆い隠せる布を用意しておきますの。しばらくはポンチョを着ておきますわ」
「それが良いかもね。慣れるのに時間がかかりそうだ」
ライノは聴力がそれだけ伸びているのなら、身体能力も大きく伸びていると考えられると説明してくれた。ベスは帰ったら確認してみると言う。
「やはり実際の冒険者に聞いた方が参考になるようだな。ライノ、余裕があればエドたちがどう成長したかの確認を手伝ってやってくれないか」
「レオン様、承知いたしました」
ライノにフレッドが生き残った謎を聞いてみたが、ライノも一緒に話を聞いていたので、分かったら聞いた時に答えていると言われた。やはりライノもフレッドの謎は分からないようだ。
「解体が始まるようだな」
レオン様の呟きに気づいて俺はイフリートを確認すると、何人もの人がイフリートの解体を始めていた。今更だが、炎の魔獣であるイフリートが実体があって解体できるのも不思議だ。ベスに聞いてみると、確かに不思議だと言うが、何故実体があるのかは分からないようだった。
「魔獣に関しては分からない事が多いですわ」
「そうなんだ」
「イフリートに関しても形を変えられると言うのは分かっているので、炎の魔獣と呼ばれているようですわ」
「実際に炎が元かは分かってないのか」
「そうですわ」
倒せているので良かったが、炎を消すつもりで魔法を選んでいたので、実は魔法の選択が間違っていたのかもしれないのか、危なかった。
解体を見ていると、解体をしている人たちがイフリートはまだ熱があって暖かいという。収納の魔道具に入れれたと言うことは死んでいる筈で、死んでも熱があるとは。炎の魔獣と呼ばれるのは熱が残り続けるからかもしれない。
「解体が進むのが早いな」
「事前にギルドと協会に連絡をして、イフリートを調べて貰っていたからな」
レオン様の説明に納得する。先ほどジョーたちが話していたのは最終確認だったのかもしれない。運びやすい大きさに解体されたイフリートは、荷馬車に乗せられて運ばれていく。イフリートの大きさが大きさなので、解体が終わるまでは時間がかかったが無事に解体が終了する。
「解体は無事に終わったな。エドたちからイフリートについても詳しく話も聞けた。今日はここまでにしよう」
「はい」
もう一日は最低でもゆっくりと休むようにとレオン様に言われて、俺たちは同意する。明日は集まらないで完全に休みにする事にした。
丸一日休んだことで疲れが抜けて体調が良くなったようだ。エマ師匠から聞いて初めて知ったのだが、俺たちは帰ってきてから丸一日寝ていたようだ。更に一日食べて寝ていたのだから、元気になるのも理解できる。
今日はやりたい事は多いが、アンに魔法を教えつつ、フレッドの事についてガーちゃんに尋ねに行った方が良さそうだと考えている。ベスとリオを迎えに行って、ベスに他に優先的にやる事がないか相談しよう。
「ベス、今日はレオン様やトリス様から何かやるように言われている?」
「いえ、特には指示は受けていませんわ」
俺はベスに今日の行動を伝えると、ベスも同意してくれた。
「アンの魔法が使えるようになるのは急いだ方が良いですし、フレッドに関しても早めに聞いた方が良いですわ」
「アンを迎えに行ってガーちゃんを訪ねてみよう」
アンを馬車に乗せると、ガーちゃんの元に向かう。
馬車の中で魔法の使い方を説明をする。アンの杖はジョーが準備をしていてくれたので、馬車の中で渡す。
「魔法使いと冒険者をしていたので、普通の人よりは詳しくなっているつもりでしたが、知らない事は多いですね」
「アンが普通の人より魔法使いに詳しいのは事実だと思うな。ジョーの部屋にあれだけ出入りしているんだし」
「そうですね。魔法使いになったら魔法薬を作ってみたいです」
「魔法が使えるようになったらジョーに相談してみよう」
「はい」
メガロケロスを呼んで、森の中に入ってガーちゃんに会いにいく。ガーちゃんを見つけるとドリーが駆け寄る。俺たちもガーちゃんに近づく。
ガーちゃんにフレッドの事を聞くのにイフリートと戦ったことを伝えると、ガーちゃんに俺たちは心配されてしまったようだ。ガーちゃんの鱗があったから勝てたと伝えた後に、フレッドが改めてガーちゃんに尋ねている。
「拙者が生きているのは運が良かったと言われてしまいましたな。イフリートを倒すのが少しでも遅ければ、獣人化が進まず死んでいた可能性が高いとのことですな。しかも拙者は火に強いドラゴンの可能性が高いと言っていますな」
「火に強いドラゴンか。確かにそれなら耐え切ったのも分かるね」
「ですな。ガーちゃんも予想になるようですが、後ろに居たエド殿たちまで炎が行かなかったのは、拙者が火を吸収していた可能性があるようですな」
俺はガーちゃんにフレッドの元になっているドラゴンについて聞いてみると、ドラゴンの種類はかなり多いようで、ガーちゃんにも分からないようだ。
「食事についても聞いてみましたが、ガーちゃんのように苔を食べてもお腹は膨れるようですな。ですが、人間に苔は美味しくないだろうと、強い魔獣の肉を食べればお腹は膨れやすいと教えて貰えましたな」
「フレッドは苔でもお腹が膨れるのか…」
「拙者も流石に試したくはないですな。魔獣を食べるのは高くつきますが、拙者は自分で魔獣を狩っているのでどうにかなりそうですな」
フレッドはガーちゃんから聞いたところによると、苔以外にも高効率の食べ物はあるようだが、簡単に手に入るものではないので、魔獣の肉を勧められたようだ。
「食欲を抑える方法があって助かりましたな。このまま食べ続けないといけないのかと思いましたな」
フレッドとしては、自分が何のドラゴンであるかより、食事量が増えているのが問題だったようだ。
アンの魔法を教えるのにガーちゃんに場所を借りて魔法を教え始めるが、最初に魔力を大量に使って魔法を見せるのが良いと思い出して、何か魔法を使おうかと考えていると、ガーちゃんが魔法を使ってくれると言うので、俺たちは見学することに。
『ガー』
ガーちゃんが魔法を使うのに鳴くと、驚いたことにガーちゃんの鱗が何枚か生え変わる。ガーちゃんは俺たちに生え変わるのに落ちた鱗を、装備に使うようにとくれた。俺たちはガーちゃんにお礼を言って受け取る。
「アン、馬車で説明した通りに全力で魔力を使って魔法で水を作るんだ」
「分かりました」
アンは俺と同じように魔法は成功するが、魔法が暴走してしまったので、制御を奪って魔法を消してしまう。アンは一瞬記憶が飛んだようだが、魔法が成功したのは覚えているようだ。
もう一度魔法を見せようと思っていると、メガロケロスが鳴き出してガーちゃんと会話をしているようだ。フレッドが話を聞くと、次はメガロケロスが魔法を使うようだ。
「メガロケロスの魔法は初めてみますわ」
「確かにガーちゃんがいつも魔法を使ってたからな」
メガロケロスが魔法を使うと、ツノが輝いたと思ったら根本から落ちる。落ちたツノは輝いたままで、俺は驚く。
「こんなツノ初めてみる」
「私も輝くツノは聞いた事がありませんわ」
フレッドがガーちゃん経由でメガロケロスに尋ねると、ガーちゃんの鱗同様に装備にするようにと、ツノは俺たちにくれるとの事だ。俺たちはメガロケロスにお礼を言ってありがたく貰う事にする。
「凶暴な魔獣が溢れるとガーちゃんたちも困るとのことで、ツノをくれたようですな。流石にツノをもう一度生やすのは来年になるので、一頭で一回しか無理だと言っていますな。ちなみにガーちゃんの鱗も、ツノと同じように年に何回も生え変えるのは無理なようですな。」
フレッドとガーちゃんが喋っていると、ダンジョンが危なくなったらガーちゃんたちも手伝ってくれるとの事で、必要なら呼ぶといいと言ってくれた。ダンジョンを壊しながら進む事になるので、最後の手段にした方が良いとも伝えられた。
「ガーちゃんたちが手伝ってくれるのなら、安心できますな」
「最終手段があるだけで安心感が違うね」
メガロケロスの輝くツノに驚きすぎて忘れていたが、アンの魔力を感じる能力はかなり良くなったようで、次は成功しそうな気がすると自信ができたようだ。
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