表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/151

砂漠の上を飛ぶ

 ベスと出かけた日から何日か経った。ジョーたちが作ってくれた装備が出来上がり、俺たちはダンジョンに向かう事にする。


「装備がかなり変わったから、忘れ物はないかな?」


 俺の装備は剣と防具の一部が変わり、砂漠で熱くならないように布を巻いたり魔道具化して温度調整をしている。


「ドリーは準備できたよ」

「僕も用意はできてます」


 ドリーとリオに関してはアンを乗せて飛ぶ予定な事もあり、杖を強化した上で、飛ぶのを補助してくれる魔道具も準備した。


「拙者も全部持ったと思いますが、装備が変わりすぎていて不安ですな」


 フレッドの装備がかなり変更されており、盾と剣をステンレス製に変えて強度をかなりの物にしている。盾と剣は魔道具化して、温度管理をしっかりするようにかえた。同じように鉄製の鎧も用意しようという話になったが、行く場所が砂漠なこともあり、魔道具化するなら革製の鎧の方が安定すると、今回は見送って革製の鎧となっている。


「私は装備がそこまで変わっていないですから、問題ないです」


 アンの装備は弓を作り直して、鉄が露出している部分を極力無くした設計になり魔道具化して温度調整もしている。矢に関してはワームに効きが悪いと、魔道具の矢中心で貫通力ではなく熱を持ったり冷やしたりと、特殊な矢を量産した。


「私も準備できていますわ」


 ベスは槍ではワームの相手が難しいし、飛ぶのに邪魔だと、今回は槍ではなく剣を持ってダンジョンに挑む事になった。剣は魔道具化している。ベスの見た目は俺と似たような装備になっている。


「宿泊用の道具も分担したし、全部持ったようだ。それじゃ馬車に乗って移動しよう」


 最低でも一泊は必要そうなので、泊まる準備もしてある。今回は携帯食も多めに準備してあるし、草原で何かを狩ってから砂漠に向かう予定だ。サソリとコカトリスは出会う可能性が低いので、何かを狩っておかないと携帯食だけ食べる事になりそうだ。

 方向を示す魔道具についても、はぐれた場合に備えて全員分を用意して各自が持っている。今回は砂漠の経験者が居ないのもあって、かなり装備を慎重に用意した。

 ダンジョンに向かう道中でベスが話しかけてきた。


「砂漠に向かう前に、二回ドリーの講義ができて良かったですわ」

「ああ。オジジも来てくれたから、一人が教える量が減って助かったよ」


 ドリーが教える薬作りだが、普通の薬なら教えた人たちは作れるようになった。魔法薬に関してはもう少し訓練すれば作れそうではあった。


「薬が安定して生産され始めたら、アルバトロスから輸出され始めるかもしれませんわ」

「そんなに作って意味があるのかと思ってたけど、エマ師匠が他の病気にも効果があるって発見したから、今後は欲しがる人が多そうだ」

「ええ。エドの考えを元に魔法を作って、魔法を試していたら分かったのだから凄いですわ」


 俺が転生者としての知識から病気の原因だと予想した、自分の免疫から攻撃を受ける事で病気になっているので、魔法で治療しても再び病気になってしまうという理論を元に、エマ師匠は魔法を作り出すのに成功したようだ。

 作り出した魔法が効いた患者については、同じ薬で治る可能性が高いと、エマ師匠はレオン様に相談して投薬をしたようだ。結果は、薬が効いて病気が治ったと聞いた。


「薬は幅広く使われそうだけど、素材を集めるのが大変な上に、作るのが大変だからな。エマ師匠が魔法の使い方を広めてくれるらしいけど、魔法が広まるには時間がかかりそうだね。魔法も覚えるのが大変みたいだし」

「そんな事を言っていますが、エドとドリーは聞いただけで魔法を使えるようになっていますわ」

「実はルーシー様に使った魔法とほぼ同じだったんだよね。あれってどっちが効いたんだろか?」

「…どちらも効いた事にしておきましょう」

「確かに効きが速すぎたし、どっちも効いたのかもな」


 俺の考えた理論なのだから、エマ師匠より俺の方が先に魔法が使えるようになるのは当然なのだが、ベスは思いつかなかったようで、聞かなかった事にするようだ。

 草原で夕食に食べるのに丁度良い大きさの動物を狩って、草原を抜けて砂漠まで歩いていく。


「やっぱり今回も、サソリにもコカトリスにも会わなかったな」

「そうですわね。ですが一泊するならどうしますの?」

「砂漠で寝るのは嫌なんだけど、早く着きすぎて寝るには早いんだよな」

「草原で狩りをしたのに、まだ昼過ぎですわ」

「サソリとコカトリスがいない前提で、昼から出てくるべきだったかな?」


 飛んで移動するので戦闘が無い前提であれば、一直線の飛んでいければ日没前に砂漠を越えられるかもしれないが、砂漠の地図が大雑把な事もあって、方向を示す魔道具があると言っても出口を見つけるのが難しそうだ。


「砂漠で休むのは嫌だけど進もうか」

「寝ている時にコカトリスがリスポーンするのも嫌ですから、それが良いですわ」


 砂漠で寝るのが嫌ならコカトリスのいる洞窟になるので、ベスが言った通りコカトリスがリスポーンした場合は、毒を使われる可能性があるので、それなら砂漠の方が良いかもしれない。


「確かに。移動を開始しよう」


 俺たちは杖を取り出して飛んで移動し始める。想像以上に空の上は快適で、高度を上げていればワームに襲われる事もなく、砂漠を進んでいく。道中に岩棚を発見したので、アンを一緒に載せるのをドリーとリオが交代する。


「岩の上にコカトリスが多少いますが、相変わらず弱いですな」

「アンの弓だと貫通してどっかに飛んで行く位だからな。砂漠に落としてワームが出てきたら大変な事になるから、魔法で倒してしていこう」

「了解致した」


 再び飛び始めると、何事もなく進んでいき、日没近くなって来たので、今日はこのくらいにしようと、休めそうな岩棚を探し始める。


「エド、見つけましたわ」


 ベスが最初に岩棚を見つけて、その場所に向かう。俺たちは見えてきた岩棚に降り立つ。少数のサソリがいたので倒してしまう。


「寝る準備をしようか」


 砂まみれになりたくないと、前回と違ってしっかりと泊まる準備をしてきた。砂漠の上に物を落としてワームを呼ばないように、岩棚のなるべく中心で泊まる事にする。


「ワームが振動だけにしか反応しなくて良かったよ」

「エド殿、そうですな」


 大きさを確認し忘れていたのあって、メアリー様にお願いして本をもう一度見せて貰った。ワームは振動にしか反応しなく、目は見えていないか、見えていても視力はかなり弱いようで、目の前にいても動かなければ襲われない事もあるようだ。


「エド殿、気になっていたのですが、あそこにある植物はなんですかな?」

「あれ? サボテンなんてあったんだ」


 準備をしていて気づかなかったが、岩棚の上にサボテンが生えていた。近づいて見てみると、実をつけているようだし持って帰る事にする。今食べるのは怖いので、大きさはそこまでないので全体を切って、収納の魔道具に入れた。


「実が何かになった気がするんだが、もしかしてこれが砂漠の薬草だったりするのかな?」

「エド殿でも詳しくは分かりませぬか」

「流石に分からないな。でも薬草だったとしたら鉱石とかも岩棚の上にあるんじゃ?」

「可能性がありますな」


 皆で探してみると、予想は当たっており鉱石を発見した。


「回収できるものは回収しましたが、半分以上は砂漠の上にあるので取れませんでしたな」

「落としてワームが出てきたら怖いから回収は諦めるしかなさそうだね」


 料理をして晩御飯を食べた後に、俺たちは前回同様に交代で眠って朝を迎える。


「準備をしっかりしたのもあるけど、思ったより寝やすかったな」

「ですな。思ったより魔力が回復していますな」


 皆も魔力はしっかりと回復しているようで、準備に時間をかけたかいがあったようだ。

 朝食を簡単に取った後に、俺たちは空を飛んで移動し始める。少し進むと凄い音が前方からする。


「なんだ?」

「分かりませんわ。エド、お婆様から砂漠に出る魔獣で、このような音を立てるような存在を聞いていませんの?」

「俺はワームが居るとしか聞いてないけど」

「想定外というのなら、引き返すことも考えた方が良さそうですわ」


 俺たちは空中に止まって引き返すか考えていると、音がした方角から砂煙が立ち上がっているのが見える。


「あれが原因かな?」

「だと思いますわ。あの量の砂煙が立つとなると、まずいですわね。本格的に引き返した方が良さそうですわ」


 ベスに同意しようと思いながら、俺が砂煙に目を凝らしていると、砂煙の中から火の光線のようなものがこちらに飛んでくる。俺は皆に攻撃だと伝えて、慌てて避ける。


「見つかりましたわ! こんな距離で見つかるなんてなんですの!」

「これは逃げられないか?」


 俺たちは避けながら会話をするが、連続して火の光線が飛んでくる。飛んでいるといつか当たってしまいそうだと考えていると、ベスもそうだったようで声をかけてくる。


「砂漠に降りた方が良さそうですわ」

「砂漠はワームが居たらどっちも相手する事になる。さっきまで居た岩棚まで戻ろう」

「分かりましたわ」


 火の光線を避けながら慌てて岩棚に戻る。なんとか岩棚まで戻って来れたが、砂煙は近づいてきている。


「近づいてきていますわ。まだ捕捉されているようですわ」

「逃げられないなら、戦うしかなさそうだ」

「エド、砂煙の大きさからして、相手は災害級の魔獣だと予想されますわ」


 ライノからもメアリー様からも災害級の魔獣がいるなんて注意は受けなかった。ならなんでそんな魔獣が砂漠の階層にいるんだ? ベスに聞く暇もなく砂煙が近づいてくる。


「見えましたわ!」


 相手を確認すると、炎に包まれた巨大な一体の魔獣だと思われる存在だった。魔獣は襲いかかってくるワームを気にした様子もなく、こちらに向けて進んでくる。


「最悪ですわ! イフリートですわ!」

「ベス、イフリートって?」

「もっと下の階層に居る魔獣ですわ。ダンジョンの奥から出てきた可能性が高いですわ」


 ダンジョンの奥から出てきたって、それはつまりネズミ返しとなっている部分を超えて、この階層までたどり着いたということか? だがイフリートの巨体では階段を上がって来れそうにないが、ダンジョンを破壊して上がって来たとでもいうのだろうか?


「来ますわ!」


 聞く暇もなく再びイフリートの攻撃範囲に入ったのか、炎の光線を打ち出してくる。当たったら大変な事になると、俺たちは必死に避け続ける。


「近づかないと一方的に撃たれるだけですわ」

「ワームが怖いけどイフリートが起こしている振動の方が大きそうだし、近づいてみよう」


 砂漠に降りてイフリートに近づいていくと、ワームはやはりイフリートが起こす振動に集まっているのか、イフリートの足元を攻撃しているようで、俺たちの方には寄って来ない。炎の光線を避けるのも顔の向きで判断できてきたので、イフリートについて聞いてみる。


「ベス、イフリートについて他に何か知っていることはないの?」

「炎の魔獣で形は自由に変えられますわ。ですが今の形が本来の形に近いのか、絵に描かれるイフリートと言えば今の形ですわ」

「炎の魔獣で形を自由に変えられるって、そんな魔獣いるのか」


 イフリートは二足歩行のドラゴンのような見た目をしているが、体が燃え上がっている。大きさはよく分からないが、ワームと比べると、イフリートはワーム以上に大きいので、かなりの大きさだ。

 体が燃え上がっているので、どう考えても近距離での攻撃は火傷をしそうで出来なさそうだ。だがイフリートが撃ってくる炎の光線は、俺たちが魔法を使っても届かない距離から届き、遠距離から攻撃するにしてもイフリートに近づいていくしかないようだ。


「攻撃が鬱陶しいですわ」

「ワームを引きつけてくれているだけ良しとしよう」

「ワームがイフリートを倒してくれると嬉しいのですが、イフリートはワームを気にした様子がありませんわ。イフリートにワームの攻撃はあまり効いていなようですわ」


 ベスの言う通り、イフリートはワームを気にした様子もなく進んでいる。攻撃されているのだから多少反応をして良いとは思うのだが、俺たちを標的にずっと攻撃をして来ている。


「ドリー、リオ、危険だが別々に分かれて飛んでみてくれないか。イフリートの狙いが分散するかもしれない。もし攻撃されなくても攻撃は控えるように、俺たちが近づくまで待機するんだ」

「うん!」「分かりました!」


 ドリーとリオに関しては歩幅の問題もあって、低空を飛びながら逃げ回っていたので、狙いを分散させるために別々に飛んでもらう事にする。成功したら俺たちも分かれて飛べば良さそうだ。


「一瞬攻撃が止まりましたが、ダメですわ」

「数が多い方を選んだのかもしれない。だけど最悪ドリーとリオは逃がせそうだ」

「そうですわね。アルバトロスに伝えに戻る人が必要ですわ。二人が素直に言うことを聞いてくれると良いのですが、難しいかもしれませんわ」

「そうはならないように、イフリートを俺たちで倒そう」

「当然ですわ」

ブックマーク、評価、感想がありましたらお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ