ベスの腕輪
ハンバーガーは何だと魔法使いたちが言うので、昨日教えた料理だと伝えると食べたいと、部屋を出て行った。
「この間に腕輪を完成させようかな」
「僕も何か作ってみたいです」
掘り出した宝石を好きに使っていいと渡して、リオに作り方を教えながらベスの腕輪を作っていると、ハンバーガーを食べ終えた魔法使いたちが戻ってきて、リオに作り方を教えてくれ始めた。
「できた」
「腕輪ができたんですか?」
「うん。後でベスに渡そうと思う」
リオとドリーに見せると、綺麗だと言ってくれる。フレッド、アン、バーバラさん、アンの兄弟弟子も丁度部屋に入ってきたので、フレッドとアンに腕輪を見せると良い出来だと言ってくれた。
フレッドとアンは俺たちと同じように、魔法使いに捕まって身体測定をされている。
「装備を作って貰えるので文句は言いにくいのですが、これはどうにかなりませぬかな?」
俺はジョーが金属の説明にレオン様の元に行っているので、作るのが止まってしまっているので、魔法使いたちが暇なのだと伝える。
「そう言うことなら、エド殿が考えた飲み物でも皆で作りませぬか」
「ああ、コーラとジンジャーエールか。バーバラさんもそのために来ただろうし、作ってみようか」
魔法使いたちを巻き込んで、料理を始める。料理というか実験のようになっているが、魔法使いたちも面白いようで、違う味の飲み物を量産していく。
「色々なコーラや果汁を入れた炭酸飲料が出来たのは良いんだけど、何がどうなって乳酸菌飲料が出来たんだ?」
「拙者もよく分かりませんな」
魔法使いなので、魔法でどうにかしたのか、乳酸菌飲料まで作り上げてしまったようだ。正直作りすぎたので、どうするか迷う。とりあえず協会の料理人を呼んで作り方を教えておいた。
そんなことをしていると、ジョーたちが戻ってきた。
「説明は終わったぞ! 作るんじゃ!」
そう言い切ったジョーは、早速装備を作り始めてしまった。
「エド、この大量の飲み物はなんですの?」
ジョーと一緒に戻ってきたベスは飲み物が不思議に思ったようだ。俺はベスに暇な間に作った飲み物について説明していく。ベスに短時間でこれだけ作り出したのに驚かれた。
「ベス、腕輪が完成したんだ。受け取ってくれないか」
「私の腕輪ですの?」
「気に入る作りにならなくて時間が掛かったんだけど出来上がったよ」
「嬉しいですわ」
ベスは俺の作った腕輪を付けてくれる。腕輪はベスによく似合っている。
「綺麗ですわ」
「よく似合っているよ」
ベスは俺にお礼を言った後に、魔法を試す。
「以前より魔法が安定して使いやすいですわ」
「動いても腕輪が邪魔にならない事と、動きながら魔法を使えるように魔法の制御を補助してくれるように、腕輪を作ってみたよ」
「私のための腕輪ですわ」
ベスはよっぽど嬉しかったのか俺に抱きついてくる。俺は抱きついてきたベスを受け止める。ベスは周りに人が居るのを思い出したのか離れて顔を赤くしている。
「嬉しすぎて取り乱しましたわ」
「そこまで喜んでくれて嬉しいよ」
「エドから貰ったものは何でも嬉しいですわ」
真っ直ぐに俺に好意を伝えてくるベスに今度は俺が恥ずかしくなってくる。
というか、周りに人が居るんだったと思い出して、周りを見ると目を逸らされる。どうやら見られていたようだ。流石に恥ずかしい。
「ドリー、エドを明日借りたいですわ」
「いいよ!」
「エド、明日は私と出かけますわ」
「え? うん」
気づいたら俺は貸し出されていた。俺は明日、ベスと出かける事になったようだ。
「今日は装備を作りますわ」
上機嫌なベスは装備作りを手伝い始めた。俺も慌てて参加して装備を作っていく。
装備を作る休憩中にベスが思い出したように、バーバラさんに話しかけている。
「バーバラ、ドリーに教わって薬を作る話は薬師組合から聞いていますの?」
「はい。光栄なことに声をかけて貰っています」
「ドリーの見た目で侮らない相手を選ぶのが難しかったと聞いていますわ。それで私たちがダンジョンの砂漠に挑むのもあって、辺境伯は一度はドリーによる講義を開きたいと考えているようですわ」
「アンから凄さは聞いていますので安心してください。急ぎならば、予定を変えて向かいます」
「申し訳ないのだけど、お願いしますわ」
今リング王国でも魔法薬を安定して作れるのは、俺とドリーしか居ないため何があるか分からないと、急ぎドリーによる説明をするようだ。薬を作るだけならオジジが居るとベスに俺は伝えた。
「ターブ村の薬師を忘れていましたわ。お父様も忘れていそうですわ。伝えておきますわ」
「魔法薬はドリーしか安定して作れないから、ドリーによる解説と文章は残しておいた方が良いかも」
「前回の説明を書いたものがありますが、改めて確認しておきますわ」
俺たちは死ぬ気は無いが、ダンジョンは何があるか分からない場所だ。ベスはドリーにも同様の説明をして、ドリーは講義をすることを請け負っている。
バーバラが炭酸飲料をセオさんに伝えておくと言ってくれるが、炭酸水が魔法使いしか今のところ作れないのが問題だ。魔法使い以外でも作れるようには出来るが、乳酸菌飲料を作り出したから発酵させるか、重曹とクエン酸を探し出すのが良さそうだと伝える。
「難しそうですね」
「重曹とクエン酸だと味の問題もありますから、天然で炭酸水が沸いていると良いのですが」
「天然ですか?」
俺は温泉のように炭酸水が沸いている場合があると説明する。問題なのが二酸化炭素は酸素より重いため井戸などは二酸化炭素が溜まって高濃度になってしまう。なので炭酸水の井戸は、汲んでいる時に死んでしまう可能性があると伝える。
「以前そのような話を聞いた気が…」
「炭酸水が出る場所があるんですか?」
「炭酸水かは分かりませんが、危険な井戸だと閉めた場所を聞いたことがあります」
バーバラさんは場所までは思い出せないと、セオさんにも相談して探してみると言ってくれた。セオさんに伝えるなら、ハンバーガーやフライドポテトについても話してもらおうと、調理場で料理人に場所を借りて作り方を見せる。
料理人にラーメンの試食も頼まれたので、バーバラさんとアンの兄弟弟子も一緒に試食をしてもらう。アンの兄弟弟子は料理に凝っている人だと言っていた人なのだろう。料理人に色々と質問している。
「あの子は薬師というよりも料理人が向いているのかね」
「薬草を使った、薬膳料理なんて物を作っても良いんじゃ無いですかね」
「確かに薬草を使って料理をしているし、良い名前かもしれないね」
俺が作り出した料理の作り方を書いてバーバラさんに渡して、セオさんに伝えるのは任せる事にする。料理人とアンの兄弟弟子の話が終わったところで、俺たちは部屋に戻って、装備作りを再開する。夜まで装備作りは続いた。
翌日俺はベスを迎えに屋敷へと向かっている。予定を立てた方が良いのかと思ったが、ベスが腕輪のお礼で案内してくれるらしいので、迎えに来るだけで良いと言われた。
「ベス」
「エド、来ましたわね。早速行きますわ」
ベスから流石に護衛なしとは行かなかったとテレサさんや護衛の兵士が付いてくるようだ。ベスが行き先を告げると馬車に乗って移動し始めた。
「私はエドに、エドを結婚相手に選んだ理由をちゃんと話していないと思って、話したくなりましたの」
「少し聞いたけど、詳しくは聞いてないかも?」
「最初に会った時から私とテレサの組手を見ても驚いている程度で、私の方が強かったとしても気にした様子はなかったですわ。その後に服と選んでくれた時も私に似合って気に入る服を選んでくれましたわ。私としてはエドは相手として高得点でしたわ」
出会った時はベスには驚いたが、すぐに気にならなくなった。強さについては転生者なのもあって、勝てないものはあると理解していたし。
「シャンプーとトリートメントを私用に香りを作ってくれた時から、私はエドをしっかりと意識し始めましたわ。エドがお母様と会った後に、お母様にエドを私の騎士ではなく、結婚相手にできないかと相談していますわ」
「そんなに前から?」
「エドが好きとか以上に、私の都合でもありますわ。貴族としては当然結婚をすべきだと思っていましたが、結婚するならば相手に合わせる必要が私にはありましたわ。なのでエドと一緒ならば、私のままで居られると思い、お母様に尋ねましたの。ですが身分の問題もあって、結婚は無理だと言われてしまいましたわ。当然ですわね」
俺は魔法使い未満の見習いだった訳だし、ベスは王女だったのだから、トリス様のいう通り結婚なんて無理だろう。
「それで私はどうやったらエドと結婚できるか考えましたわ。考えた結果、ダンジョンの奥に辿り着けば結婚できると考えましたわ」
「それで冒険者になりたがったの?」
「そうですわ。元々冒険者というか、ダンジョンにはいくつもりでしたが、理由が増えましたわ」
やっぱりダンジョンには元々行くつもりだったのか、ベスは貴族なので一回はダンジョンに行く事になっていたと思うが、一回だけではなく鍛錬のために何回も行くつもりだったのだと予想できる。
「冒険者になってからは楽しかったですわ。お忍びで屋敷を出れるようになりましたし、エドと一緒にアルバトロスを探索するのは楽しかったですわ」
馬車が止まったので降りると、最初にギルドから依頼を受けて手紙を届けた店だった。懐かしいと思っていると、露店でベスが食べ物を買って馬車に戻って乗ると馬車は再び進み始める。
「エドと一緒なら、このような事まで許されるようになりましたわ。エドはお母様からかなり信用されていたので、貴族になれば結婚できる可能性が高くなってきましたわ」
「でもトリス様だけ説得しても、レオン様にも許可が必要なんじゃ?」
「そうですわ。お父様が帰ってきてから説得しようと思っていましたら、まさか病気のルーシー様を連れて戻ってくるとは思いませんでしたわ。希望だけ伝えましたが、まともに話す機会もなく忙しい日々を送っていたら、エドとドリーが病気を治してしまいましたわ」
ベスが予想するに、レオン様も予想外だったようで、治療が終わったと聞いたレオン様は、ベスに俺やドリーの事を詳しく聞いたようだ。
「エドのことを聞かれた時に、結婚について聞いてみましたの。功績的には結婚できる可能性もあるが、功績が若干足りない可能性もあると言われましたわ。流石に爵位を貰えるほどの事が何回も起きるとは思っていませんでしたわ。ですが、起きましわ」
ターブ村の事件によって調査が必要になり、調べに行った結果、ドリーの友達のガーちゃんを連れて帰ってくるとは思っていなかったようだ、とベスが説明してくれる。
「災害級の魔獣が移動する事での混乱を収めた功績ができましたわ。二つの功績を合わせれば、結婚できる可能性が上がりましたわ。まずは結婚が可能な爵位を叙爵できるか王都に尋ねる事になりましたわ。叙爵が可能であれば、後は祖父様である国王陛下が許可があれば結婚できますわ」
叙爵可能かの返事はまだ王都から来ていないようで、返事が来てから俺に叙爵するか選んで貰うつもりでしたとベスは言う。
「そこで私との結婚についても話す予定でしたわ」
「ならなんで、あの時に?」
「エドが転生者であるなら話が変わってきますわ。それに、エドが悩んでいるようでしたから、元気付けたかったのですわ」
「元気付けられはしたかな?」
「それと、エドが弱っている今なら行けると思いましたわ」
元気付けられたと言うより混乱したのだが。しかし、弱っているなら行けるとは、トリス様が勘で動くなと言っていた気がするが、確かにベスは動物的な勘で動いていたようだ…
「エド、私はいつかアルバトロスを出る事になると思っていましたわ」
「ベスがアルバトロスを?」
「貴族として生きるのなら王都か、違う領地に行くと思っていましたわ。流石にツヴィ王国に行く気はありませんでしたが、エドのおかげで行かなくて済みそうですわ」
馬車が再び止まって外に出ると、そこは港だった。
「エドと共になら王都にでも、違う領地にも行ってみたいですわ。それこそツヴィ王国に行ってみるのも良いですわ」
「ターブ村には行ったけど、行っただけだしな。確かにベスと色々なところに行ってみたいな」
その時は船旅をしようとベスが誘ってくる。レオン様が辺境伯として所有している船が何隻かあり、ベスが使っても良いと言われていると教えてくれる。
「エドに結婚をしようと言った時は、今考えるとズルかった気がしますわ。エドは今でも私と結婚をしてもいいと考えていますの?」
「俺はベスが好きだよ。ベスには驚かされる事もあるけど、それ以上に楽しいから。それにベスみたいな生き方は俺は憧れるな」
「憧れるですの?」
「転生者だから独特な感覚かもしれないけどさ、転生者はベスみたいな生き方をしたい人が多いんじゃないかなって。転生前と今の俺は、別の人格と言っていいほど違うから、何となくだけどさ」
転生してやり直すのだから、自由に生きたいと思うのではないかと思うのだ。ベスに考えを伝えながら雑談していると、思い出したようにベスが俺に聞いてくる。
「エドは私の好意を全く気づいていなかったんですの?」
「皆にも言われたけど、全く気づいてなかった。後から説明されて納得したよ」
「エドは変なところが鈍いですわね」
「それについては言い返せないな」
ブックマーク、評価、感想がありましたらお願いします。




