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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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鍛錬と製作依頼

 ベスを少し休憩させた後にエマ師匠は、ドリーに魔法を使うように言う。


「では次はドリー、全力で魔法を使ってください」

「うん!」


 ドリーが集中すると魔力が動き出し魔法が使われる、改めて魔力の動かし方をみると俺の動かし方に似ているが、ドリーの動かし方は少し違う、ベスは更に違ったので、魔力の使い方は個性があるとエマ師匠が言っていた事に納得する。

 エマ師匠は、ドリーに俺と同じように魔法を維持するように言って、ベスがある程度観察したところで、魔法を消すように言った。


「ベス、ドリーの魔法どうだった?」

「とても綺麗でしたわ」

「やった!」


 ドリーは無邪気にベスと交流している、見た感じはベスも嫌がっておらず、俺としては安心する。

 エマ師匠が、今日の訓練は終わりだと告げる。


「では、本日は魔法の訓練はこれで終わりです」

「あら、本当に早いのですね」

「個人差もありますが、魔法を使う回数が増えると時間は多少伸びますが、長くても一時間かかるかどうかと言うところですね」

「それならば、力の鍛錬にも支障がありませんから安心ですわ」


 ベスはどこまでも力の鍛錬が優先のようだ、そんなことを考えているとベスが、俺とドリーを交互に見てから話しかけてくる。


「ところでエドとドリーは、変わった服を着ていますのね」


 今日は要らないかなと思いつつもフード付きのポンチョを着てきたので、珍しかったのかもしれない。


「にーちゃが、作ったの!」

「あら、エドが?」

「うん!」


 何故かメイドさんたちがざわついている、俺はそれに困惑していると、ベスが服について聞いてくる。


「エド、これはどういう服ですの」

「これはポンチョって服に、フードを付けてる服で、上着だったり雨具に使うんだ」

「雨具ですの?」

「この布だとそこまでの効果はないけど、蝋とか塗れば水を弾きやすくなるはず」

「便利ですわね、私にも作ってくださる?」

「え?」


 ベスからまさかの服の注文で俺は困惑する。素人が作ったものだしとメイドさんに視線で助けを求めると、予想外の反応が返ってくる。


「エドワード様、失礼ですが服を見せてもらっても」

「え?はい」


 メイドさんが俺のポンチョを調べた後に、返してくれる。


「訓練時や、鍛錬中に使うのなら問題ないです」

「え!」


 まさかの製作許可が出て、俺は更に困惑する。


「それではエド、私にも作ってくださいな」

「え、あ、はい」


 ドリーが喜んで、ベスに話しかける。


「やったー、ドリーとベス一緒だね!」

「ええ、一緒ですわ」


 怒涛の展開で回らない頭でドリーが喜んでいるなら良いのか、とかよく分からないことを考えていると、ドリーがベスに何かお願いをしている。


「あの、ドリーはベスにお願いがあるんだけど」

「あら、なんですの?」

「力の鍛錬っていうの、みてみたい」

「あら、良いですわよ」


 頭が回っていない状態で、まさかのドリーからのお願いを、ベスがさらっと答えてしまって俺は慌てるが、もうどうしようもなさそうだ。


「槍と剣を持ってきて」

「はい」


 ベスがメイドさんに命令すると、メイドさんが屋敷に戻って行った。

 待ってる間ベスは体の動きを確認するように動いていると、メイドさんが女性の騎士であろう人物を連れて戻ってきた。


「エリザベスお嬢様、槍と剣でございます」

「ありがとう」


 まず槍を受け取ったベスは槍を振り始める、まだ本気で振っている訳では無さそうだが、素早く槍をついたり、振ったりと、素人目でもすごいと分かる。

 少しした後に、剣を同じように振って何かを確認した後、メイドさんが連れてきた女性の騎士と稽古をし始める、すごい速度で打ち合いながら結構な時間稽古をしていた。

 終わるとベスがドリーに声をかける。


「ドリーどうでした、こんな感じですわ」

「すごーい、かっこよかった!」

「ふふ、ありがとう、ドリーもやってみますか?」

「ドリーは弓なら少しできるよ!」

「あら、そうなんですの?」

「うん!」


 その説明では要領を得ないだろうと、俺が追加で説明しておく。


「最近弓を習ったばかりなので、一応使える程度ですが」

「そう言うことですの」

「俺もドリーも、罠や投石の方が得意ですね」

「罠に投石ですの?」

「はい元々、獲物を狩る猟師のような生活をしていたので」

「獲物を狩る猟師?魚を取る漁師ではなく?」

「はい」


 俺とドリーの出身は一応秘密にはなっているので、エマ師匠にどうすれば良いか尋ねると、ベスなら話しても問題ないと言われて、俺とドリーの出身について話すと、ベスは同情しつつも怒ってくれる。


「それは酷すぎますわ!」

「今はエマ師匠やベスにも会えたから、これで良かったんだと思う事にしています」

「エドは優しすぎますわ」


 ベスはドリーを心配したようで、ドリーに声をかける。


「ドリーは大丈夫ですの」

「ドリーはにーちゃいるから、いいの」

「ああ、ドリー」


 ベスはドリーを抱きしめようとしたが、自分が汗だくだと気づいたようで。


「一度汗を流してきますわ、ドリーまた後で話しましょう」

「うん!」

「ドリーたちを部屋に案内しておいて」


 そう言うとベスはメイドさんを連れて屋敷へと戻っていった、俺たちは残ったメイドさんに案内されて部屋に移動する、椅子に座るとメイドが話しかけてくる。


「服を仕立てるのに、お嬢様の採寸した情報をお渡ししますが、どの程度必要でしょうか」

「ポンチョは簡単な作りなので、そこまで詳しい情報は必要ありませんが」


 俺は必要そうな情報を貰って書き留めておく、聞いてから聞くのも何なのだが、俺が服を作っても良かったのだろうか。


「その、ベスの服を素人の俺が作って良かったんですか?」

「エド様も困るとは思いますのでお話ししますが、お嬢様が衣類に興味を持ったのは、ほぼ初めてと言って良いのです」

「えっと?」

「欲しいものは武器や鍛えるための物で、服といえば防具なのです」

「その何ていうか、一途ですね…」

「はい」


 ベスがポンチョに興味を持った時、メイドさんが動揺していた理由が分かった、何というかとてもベスらしいと言えばいいのだろうか。

 でも、別に俺が作る必要はないのでは?


「その、俺が作る必要はないのでは?」

「お嬢様が興味を無くされる前に、許可を出すべきだと判断いたしました」

「さっきの話を聞いてると、あり得そうですね」

「服を選ぶということをしませんので、可能性は高いかと」

「そうですか、理由はわかりました」


 師匠から貰った布はまだ余っているので、同じ柄で良いかなどメイドさんに聞いていくと、問題ないと言われたので、俺が作ることは決定してしまった。

 メイドさんが、俺に相談があると声をかけてくる。


「相談なのですが、エド様」

「はい?」

「可能ならお嬢様に服を仕立てる方向に、話を持っていけませんか」

「俺がですか?」

「はい」


 何故かまた俺は無茶なお願いをされている、何故だろう。

 ベスに、魔法を覚えるように説得できた効果が強すぎたのだろうか。


「できる限りやってみますが、難しいと思いますよ?」

「やはり難しいですか、普段から自分の服を見繕って欲しいのですが…」


 流石にメイドさんも無茶なお願いだと自覚していたのか、あっさり引いてくれる、ベスのメイドさんは気苦労が多そうだが、メイドさんたちはベスを嫌っている様子はない、普通の令嬢と違うだけで慕われてはいるのだと思う。


「メイドさんたちは、ベスの事が心配なんですね」

「そうですね、私たちはエリザベスお嬢様が、貴族社会にとっても普通でないことは分かっていますので、出来る限りのことはしたいのです」

「ベスは慕われているんですね」

「はい、私たちにもお優しい方ですから」


 俺が納得していると、エマ師匠が服のことについて声をかけてくる。


「エド、服の事だけど、エドも買わないと辺境伯の屋敷に来る服が無くなってしまうわ」

「そう言えばベスが魔法の訓練をするのなら、俺も結構な頻度で来ないとダメだから服も必要ですね」

「この後、古着屋で服を見繕う予定だったけれど、予定を変えてベスに選ばせられないかしら」

「そんなことできますかね?」


 俺とエマ師匠はメイドさんに視線を向けて可能かどうか聞くと、逆に聞き返される。


「エドワード様が服がないのは、先ほどの出身の話と関係が?」

「そうですね、俺もドリーも服が元々少なくて更に旅をしてきたので、辺境伯の屋敷に入るには大分くたびれてしまって」

「それならば、私からエリザベスお嬢様に服を作って貰えるように進言いたします」

「ベスの服ではないですが、良いんですか?」

「エリザベスお嬢様の服も作れれば大成功と言えますが、どのような服を用意するか選ばれるだけでも十分成功です」


 美的感覚を鍛えて欲しいということなのだろうと俺は理解する、だからベスの服でなくても人の服でも十分なのだろう。

 どうやって選ばせるかなどを作戦会議していると、ベスが部屋に入ってくる。


「エマ、エド、ドリー今日は魔法の訓練楽しかったですわ、明日からもよろしくお願いしますね」

「ベスということは、毎日魔法の訓練をするってことかな?」

「ええ、そうですわ」


 上手いこと話が進んでいると、事前に作戦会議をしていた人たちは感じただろう、なので今なら話を切り出せるとメイドさんも思ったのだろう、話に入ってくる。


「エリザベスお嬢様、そのことなのですが、エドとドリーの方に問題があるとのことで」

「あら、問題ですの?」

「旅をして来た為、お屋敷に着て来れるような服が今着ているものしかないと」

「それはいけませんね」

「はい、それでエリザベスお嬢様の許可が貰えれば服を用意しようと思いますが」

「勿論、許可しますわ」

「かしこまりました、お針子を呼びます」


 メイドが一人そう言って出ていく、俺はベスに服を選んでもらうためにお願いしてみる。


「ベス、俺は服を作ったことはあるけど、才能があるとは思ってないんだ。だから作って貰えるなら、ベスも一緒に屋敷に出入りしても問題ない服を考えて貰えないかな?」

「私が、ですの?」

「そう、お願いできないか?」


 ベスが迷っている様子なので、ドリーもお願いしてくれる。


「ドリーもベスに選んでほしい」

「ドリーもですの?」

「うん」

「分かりましたわ」


 メイドさんがお針子さんを連れて戻ってくると、俺とドリーの丈を測って貰った後に作って貰う服の話になって、ベスとお針子さんが色々選んで、どういう服にするか決まって行く。

 俺が作った服は、地球の知識を参考にして作っているので、こちらの世界では服に意味がある部分があるらしく、自分で決めないでベスに頼んで良かったと実感した。

 まだ実物が出来ているわけではないので、想像でしかないがベスが選んでくれる服は趣味が良いと感じる。

 俺とドリーに遠慮したのか普段から服を選んでないので頼んだ時に、躊躇したのかは分からないが、美的な才能は十分にありそうだ。

 服が一通り決まると、ドリーがベスを誘う。


「ベスも、服つくろ!」

「私も、ですの?」

「うん!」

「では、ドリーも一緒に選んでくださる?」

「じゃ、にーちゃもいっしょ!」

「ベスが良ければ」


 同意の返事をしながらドリーの誘い方がうま過ぎる、前からちょっと思っていたが、無邪気でありながら小悪魔的な誘導をする、ドリーの成長した将来が少し怖いなとか思ったりする。


「問題ありませんわ、エドもよろしくお願いします」


 いくつか服を選んだ後に、俺は冬がどのくらい寒くなるのか聞く。


「冬は、どの程度寒くなるんですか」

「雪が降ったりもしますわね、寒い年だと積もったりします」

「それならポンチョに似た形の、しっかりした形のコートを作りませんか」

「それは良いですね」


 お針子さんもポンチョは気になっていたようで、渡して見せると気に入ったようで、どのような形にするか聞いてくる。

 俺は地球の知識からケープコートのようなものはどうかと説明する、存在しない物を説明するのは苦労するが、何とか伝わったようだ。

 何回か作り直しをするかもしれず、作り直す時に意見を貰いたいと言われて、同意する。

 お針子さんが新しい服に興奮したのか他に無いのかと聞かれ、男だから女性物がそこまで思いつかないが、と言いつつ。

 貴族だから儀礼的な服の方がいいかと、スーツやブレザーなどに、上着にトレンチコートやPコートを提案すると。

 似たようなものが有るのもあるが、試しに作ってみると言われ、またケープコートのように意見を貰いたいと言われて、同じように同意しておく。

 急に現代的になってしまった気がするが、素材の問題で機能性重視の服は作れないだろうから、ちょっとは差があるだろう。


「ドリー、ふく楽しみ」

「そうですわね」


 ベスも楽しんで選べたようで俺は安堵する、この感じなら一人でも服を選んでくれるかもしれない、無理そうならドリーと一緒になら選んでくれるだろう。

 その時は俺も道連れな気はするが。

 メイドからのお願いを達成できたし、結構な時間かかってしまったので、今日は帰るのかと思ったら、エマ師匠が思い出したように渡したい物があると言う。


「そう言えば私も緊張していたのか、すっかり忘れていました、馬車に挨拶代わりにと用意した物があったのでした」

「エマ、気にしなくても良いのよ」

「いえ、せっかくですから是非もらって下さい、エドとドリーが作った物ですので」

「あら、エドとドリーが?」

「はい、二人が調合した液体の石鹸です」

「そうですか、でしたら頂きましょう」


 どうやらエマ師匠は、シャンプーとトリートメントを手土産にと用意していたようだ。

 エマ師匠は自分で取りに行こうとしたが、メイドさんがお持ちしますと言うので、エマ師匠は任せることにしたようだ。


「エドとドリーは、そのような事までできるのですね」

「二人は薬師で色々な薬を調合できます」

「そうなのですね、私も必要になったらお願いしようかしら」

「良いかもしれません、私も治療で魔力が必要ない時は薬を処方するのですが、その薬を今は二人に作って貰っています」

「それは凄いですわね」


 ベスは俺とドリーが、そこまでの薬師だとは思っていなかったのか驚いた様子だ。

 話をしているとメイドさんが戻ってきて、結構な量のシャンプーとトリートメントを渡してくる。

 エマ師匠は大量に準備していたようだ、在庫をほとんど持って来たんじゃないだろうか?


「これが液体の石鹸ですのね」

「はい、詳しくは作った二人に説明を任せます」


 エマ師匠が説明を俺とドリーに任せたので、俺がシャンプーとトリートメントについて話していく、使い方を説明した後に、何かあったら使用をやめることなど説明して行く。


「と言う使い方なのですが、問題ありませんか?」

「そうですわね、どうかしら?」


 ベスがメイドさんに質問をすると、メイドさんが質問をいくつかして来たので、答えていくと「問題ありません」と答えてくれた。

 その後に明日の時間などを確認すると、ベスと別れメイドさんに案内されて屋敷を出た。

 帰りに明日着て行く古着を一着買って、協会へと戻りエマ師匠から貰った布でベス用のポンチョを作っていく。

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この服は筋肉痛に効くんだ。 ポンチョだと下半身に効かないのか、一応全身にも効くのか……。
[一言] こんばんは コットン生地に蜜蝋やパラフィンを含ませたワックスコットンなら、製造に難しい技術は必要ないし、幌やテント、雨具にもなりますから、これがエドの商機になるかも
[気になる点] ドリーの方がエドより規格外な印象ですね ちゃんとしくじっていない転生者かと勘繰っでしまう!?
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