9 ドローンで調査
「ちょっと前までは、空中を調査するなんて難しかったけどな。今はこれがあるんだ」
池水さんが、持ってきた黒いソフトケースを開いてみせた。
中にはプロペラが四つ付いた白いヘリコプター。
「ああ、店長ドローン買ったんですね。でも、この辺露天風呂はないですよ」
楽々浦が軽口をたたく。
「いや、古地図の調査で、歩いて行きにくい場所も多いからさ。空中から探索できるようにね。一昨日届いたところなんだ」
ウキウキした表情の楽々浦と池水さん。
男って、こういうメカが好きなんだよな。僕も好きにならないといけないかな。
ちらりと七巳を見ると、彼女は無関心にドローンを見下ろしている。
「これが前方カメラで、下向きのも別のカメラが付いてるんだ。最高速は時速70キロ出るし、完全自動で手元に戻ってくるんだぞ」
「うわ、いいですね。僕もこういうの欲しかったんですよね。幾らくらいするんですか?」
僕と七巳の冷めた表情にまったく気づかないのだ、この二人は。
「さあ、行くんでしょ。早くしましょうよ」
ドローンの仕様説明を続ける池水さんと、それを詳しく聞こうとする楽々浦に七巳が決着をつけるように言い放った。
四人で軽自動車に乗り込むと、早速出発。
助手席は楽々浦が座ったから、僕と七巳は後席で隣同士だ。
ちょっとカーブで揺れると、僕の左肩と七巳の右肩が触れ合う。
自転車デートの後はドライブか。時空の穴はどうでもいいけど本当に今日は来てよかったな。
「ねえ、由紀はどこの道場に通ってるの?」
隣の七巳が聞いてきた。
「ぼ、僕は道玄坂の道場だよ。な、七巳は?」
どうしても吃ってしまうな。でも、彼女の名前を初めて呼んだ気がする。
嬉しかった。
「私は学校のクラブだけだよ。幼い頃からおじいちゃんには教わってたけどね。ところで、由紀って僕女なんだね」
僕が頷くと、彼女は僕の耳元に顔を寄せて、可愛いと一言いった。
そして続けて囁く。
「由紀って、私のこと好きなの?」
「わ、わかるの?」
僕も囁き声で返す。
「そのくらいわかるよ。異能者楽々浦じゃなくたって。由紀の言動バレバレだもの」
そうだったのか。バレバレと言われて恥ずかしいけど、気持ちをわかってくれたのは嬉しい。返事を考えていたら追撃が来た。
「でも、付き合うんだったら、男役は私だからね。由紀は女役」
そう言いながら七巳が僕の耳にキスをした。
全身に電気が走る衝撃。うっと呻いてしまったが、前の二人はドローンの話で盛り上がっていて気づかれずにすんだ。
「僕は、心は男なんだけどな」
と言うと、
「男女の交際だって、女攻めってあるでしょ。あんな漫画見て思ってたんだ。彼氏できたら縛り上げてやったら面白いなって」
七巳の言葉で、裸にされて縛られる自分のイメージが頭の中で回転しだした。
ドキドキする自分に活を入れる。
「駄目だよ。僕は男らしく有りたいんだから」
彼女の目を見てそう言ったとき、車が目的地に到着した。




