45. 同伴相手
ある日の午後の授業が全て終わると、そのまま教師が話始める。
「皆さんに連絡事項があります。3ヶ月後の学園主催のパーティーですが、今年は同伴者の方とお揃いの何かを身につけて参加して貰うことに決まりました」
「それは、なんでも宜しいのですか?」
1人の令息が手を上げて教師に問う。
「はい。どんな物でも大丈夫です。例えば、ブローチとかでも結構構いません。また、色に関しも揃えなくて大丈夫です。ちなみに学園側では用意いたしませんので当日までに各自ご準備ください。以上です」
(学園主催のパーティー。ってことは断罪イベント――)
終焉が近いと悟り、唾液をごくりと飲み込む。
――翌日、夕食を食べ終えたロゼッタは、自室に戻ろうと廊下を歩いていると、不意に声をかけられその場で立ち止まり、目線を声の方に向けるとそこには、ピンク色の髪を頭上でまとめている20代前半ぐらいの学園に通い始めてから見かけるようになった、ほとんど面識の無い侍女がいた。
「あの、もうすぐ学園主催のパーティーが開催されますよね? しかも今回から同伴者の方とお揃いの物を身につけて参加するとか。その、もう既にお決まりになられましたでしょうか?」
「え? まだだけど――」
「そうですか。お決まりになられましたら、私にお聞かせ頂けますでしょうか?」
「どうして?」
ふと思ったことを口にすると侍女は慌てたように言葉を付け加える。
「言葉足らずで申し訳ございません。その件の手配を私が任されましたので、事前に把握しておきたくて……」
なぜ侍女が、お揃いの物が必要になったという、まだ誰にも伝えていない事実を知っているのか不思議に思いながら返事をする。
「――そう。分かったわ。決まったら貴女に報告するわね」
「宜しくお願い致します」
(同伴――)
――そこからアスベルトとのお茶会の日。
日中とは言え、外は冷え込んできており、風を引かないように毎年雨が降った日に使う応接室でショートケーキを口に含んでいた。
(はぁー。最近、いろいろとありすぎてケーキの甘さが心にしみる)
ひとりでに目が閉じ、鼻からゆっくりと息を吐き出す。
「どうかしたのか?」
「え?」
「いた、君がケーキを食べてそんな風に息を吐くなんて珍しいと思って」
アスベルトの言葉を聞いて目が点になる。
毎回、同じようにケーキを食べて息を吐いていると思うが、そんなことを言われたのは今回が初めてだった。
彼の問いに直ぐに答えられず、アスベルトの顔をじーと見る。
すると若干気まずい感じの顔にアスベルトなった。
そして、その視線に耐えきれなくなったのかアスベルトから話しかける。
「悪い。踏み込み過ぎたな。でも、もし何かあったら俺にいつでも相談してくれ」
「ありがとうございます」
アスベルトの気持ちを嬉しく思いながら、再びケーキを食べ始める。
食べ終えるのを見計らったかのように、再度彼が口を開く。
「ところで、学園主催のパーティーの事なんだが、何が良いとか決めているか?」
「……!?」
「参加するには、同じ物を身につけるようにと言われただろ?」
正直、同伴がどうなるか分からなかったが、心のどこかで自分は同伴相手には選ばれないと思っていた。
そのため、ロゼッタは目を引ん剝く。
「……あの。私で良いんですか?」
「俺は、ロゼッタ以外と同伴をするつもりは無い」
躊躇なくそう告げられ、思わずロゼッタは自分の耳を疑いそうになったが、あまりにも真剣なまなざしだったので、それが聞き間違いでもなく、その場しのぎのウソでもなく彼の本心なのだと悟った。
「それで、決めているのか?」
「いえ、まだ……。アスベルト様は何かお決めになられましたか?」
「まー。一応は考えている」
何気なく問いかけてみると、既にアスベルトがお揃いの物を考えてくれていた事に驚く。
(考えてくれてたなんて思って無かった……)
「それでしたら、アスベルト様がお考えになられている物で、私は何も問題ありません。もし、私の方で必要な物がありましたらお声掛けください」
「分かった。なら今回は、俺が考えている物で進めていく」
「よろしくお願いします」
ロゼッタはアスベルトの顔を再び見つめる。
(アスベルトはいったいどんな物を考えてくれているんだろう?)
それが何なのか分からずに、お茶会はお開きになった。
家に戻ったロゼッタは、例の侍女に必要な物があれば声を掛けると伝えた瞬間、侍女の顔が一瞬こわばる。
しかし、すぐに表情を戻す。
「……かしこまりました。何かあれば遠慮なくお申し付けください」
そう言い終わると、侍女は深々と頭を下げる。
それを見たロゼッタは、侍女に「それじゃ」と言って自室へと戻っていった。




