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44. 令嬢達との約束

 翌日のお昼休憩。


 昨日、隣組の令嬢達と一緒に昼食をする約束をしてしまったロゼッタは、サンドイッチの入った籠を持って1人で中庭へと向かっていた。


(気が重い……)


 憂鬱の気持ちで歩いていると、背後からの突風にバランスを崩し籠を地面に落としてしまう。

 その拍子で中身が無残に散らばる。


「あっ」


 突風が去った後、ロゼッタはため息をつきながら、散らばったサンドイッチを籠に戻していく。


 全て拾い終え、手を洗うために手洗い場に向かおうと立ち上がり、方向を変えるとマリナと目が合う。


「マリナ!?」


 マリナは直ぐに視線をそらし、急ぎ足でその場から離れていく。

 その姿に、少し悲しい気持ちにロゼッタはなる。


(はっ。ダメ、ダメ!)


 顔を左右に振り、一呼吸をして気持ちを切替え手洗い場に向かう。


(手を洗ったら、令嬢達にサンドイッチを落として食べられなくなったって伝えに行かないと。その後どうするかは、ひとまず後で考えればいいか)


 手を洗い終えたロゼッタは、そのまま令嬢達が待っている中庭へ再び向かう。


 辺りを見渡すと、一箇所だけやたらと令嬢達が集まっている場所を発見した。

 ロゼッタは直感で“あそこに昨日の令嬢達が居る”と察し近づくと、彼女達はすでに昼食を楽しいんでした。


 その中にいた令嬢の一人がロゼッタの存在に気が付く。


「ファームス様。お待ちしておりましたわ。ささこちらへ」

「いや……あの――」


 ロゼッタに喋る隙を与えないかのように、強引に空いている席に座らせる。


「申し訳ございません。お先に頂いておりましたわ」

「いえ。お気になさらず」

「有難うございます」


 そして、令嬢達は会話に花を咲かせる。

 喋るタイミングを逃しどうしようかと悩んでいると、近くに座っていた令嬢に声を掛けられる。


「あら? ファームス様、食べられないのですか?」

「実は――」


 ロゼッタは、食事を台無しにしてしまった事を伝えた。


「まー。それは大変ですわ」

「ファームス様。私たちは、ここでお待ちしておりますから、食堂で何かテイクアウトされてはいかがですか?」

「え?」


(……あっ。勝手に決められちゃった。確かに決めてなかったけど、できればイートインって言って欲しかった……。でもさすがにこの流れで「いいえ、イートインにしますわ」とは言えない)


「そうさせて頂きますわ」

「お待ちしておりますね」


 ここから食堂まで、往復しても12分ほどしかかからないため、あまり一緒に食事をしたくないロゼッタは、わざとゆっくりと向かう。


 食堂には、イートインとテイクアウト専用の窓口が併設されており、どちらもいつもより行列ができていた。


(すごい列)


 ふと、テイクアウトの列を見ると“最後尾はこちら、ここから30分待ち”と書かれた看板が立っていた。


(30分待ち!? なんでこんな時に限って)


 食堂に備え付けられている時計を見ると、お昼休憩が始まってからすでに30分が経過していた。


(今からじゃ、絶対にテイクアウトは無理。かと言って、勝手にイートインにしてご飯を食べるわけにはいかない。一度戻ってから今日はイートインにするって伝えないと)


 そう決めたロゼッタは、行きとは違い、足早に再び令嬢たちのもとへ戻る。


「おかえりなさいませ。あら?」


 何も持っていない彼女に気づき、不思議そうな顔をしながらも口元だけはわずかな笑みを浮かべていた。


「すいません。テイクアウトが30分ぐらいかかるそうなので、今回は食堂で食べようと思います」

「そうですが……。残念ですわ」

「それでは、失礼いたします。ごきげんよう」


 そう言うとロゼッタは、再び足早に食堂へ向かう。


(疲れた)


 食堂の時計を見ると、あれからさらに11分が経っていた。


(どうしよう。今から注文して提供時間と食事の時間、それに教室に戻る時間を考えると、イートインは難しい。てことは手軽に食べられるテイクアウトになるんだけれど――)


 テイクアウト専用の窓口を見ると、まだ少しだが列をなしていた。


(今から並んで注文しても、料理が出る頃にはもう食べるが時間無いかも。――おとなしく教室に戻ろう)


 とぼとぼと教室に戻り、空腹を感じながら午後の授業に使う教科書を机の中に手を入れると、柔らかな何かが手に当たる。


 それを机のから出すと、子袋に小さなマドレーヌが3つ入っていた。

 その袋には“もし、宜しければ召し上がってください。誰もいないときに入れさせていただきました。M”と書かれたメッセージカードが貼られていた。


(M? しかも、誰もいないとき?)


 書かれている内容を見なが、差出人を考えているとふと先ほどマリナに見られていた事を思い出す。


(いやいや。あの時、私のこと見てたからって)


 マリナの席へ視線を向けると、彼女はこちらを見ていた。

 目が合った瞬間、彼女は視線を落とす。


 先ほどとは違い、悲しい気持ちにならならず今後は、救われた気持ちになった。

 マリナからだと察した彼女は、それを持って人気のない廊下でひっそりと食べる。


(美味しい)


 先日の放課後、隣組の令嬢達に声をかけられ、食堂へ連れていかれて以来、何かと隣組の令嬢達と関わるようになっていた。

 それに比例するように、トラブルも増えていく。


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