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ニセモノシリーズ  作者: 偽物
3/5

楓の仕事

翌日、僕は楓に呼び出された。

「仕事ってのは、人助けだよ。これ」

楓が見せてきたのは一枚の紙切れ。

そこには、丸く可愛らしい字で、『兄を助けてください!ここのところ毎日思い悩んでいるようなんです。お金なら払いますから』と書かれていた。

「でも、助けるって、どうやって?」

すると楓は馬鹿にしたように、「会いに行くに決まっているだろ」と言った。

全く、好きにやらせておけば良いのに。

そう思うが口にはしない。

「わかりました。で、その差出人は誰なんですか?」

すると楓は困ったように、「さあ?」とボヤいた。

「も、もしかして、わからないんですか?」

予想的中!嬉しくない、全く全然嬉しくない。

「なんで、そんなの引き受けたんですか!」

怒鳴っても意味が無いことなど解っている、解っているけれども、怒鳴らずにいられるか!

「まあ、まあ、落ち着けって。だからお前がいるんだろう?」

「・・・・?なんで僕が・・・」

「お前、Sの一人、しかも最年少リーダーだろ?ならこれくらいどうってことないさ」

特別有能捜査官、通称S。FBIにも時には呼び出され、協力を要請される。とりあえず凄いらしい。

だが、Sの正体は殆んど明かされていない。なのに、なぜ楓は知っている?

すると、僕の気持ちを読んだのか、「Sってのは、私のような業界には有名なんだ。まあ、リーダーがお前のような若造と知った時は、流石に驚いたよ」と、サラッと流した。

「で、楓さんはなんの仕事を?Sの情報は機密情報ですよ。そんなに簡単に普通の人が知るわけないですよね。もし、これが漏れ出した情報なら、貴女を抹殺しなきゃいけなくなる。だから、どうか、僕にそんな面倒くさいことをやらせないでください」

ポケットのなかに入れてあるSの証であるバッチを強く握りしめながら、声に表情を乗せずに会話を続ける。

本当は殺しなんて面倒くさいこと、したくないし、臆病者のぼくにはきっとできない。

「お願いですから、僕に貴女を殺させないでください。貴女のことはそれなりにきにいっているんですよ」

だから、これは、精一杯の、強がり。

だが、彼女には、総て、お見通しだったらしい。

「心配するな。間違ってもお前には殺されないよ。情報は私の仲間だよ。中田傭兵、知ってるよな」

それは疑問ではなく確認だった。

「ええ、ぞんじていますよ。サイバー攻撃のプロですよね。3年前のあの事件を機に僕等の間じゃ、かなり有名になりましたから」

中田傭兵、Sの捜査力を持ってしても捉えることが出来なかったプロ中のプロ。

だが、結局は一人の高校生の手によって御用となったことは、Sのプライドをヅタヅタに引き裂くことになった。

「で、田中がどうしたんですか?ああ、たしか護送中に脱走されたんでしたっけ」

「そうだ。そいつからの情報だ」

ーそうか。それなら僕のこと知っていて当然だな。

「そうですか。でもそれなら、田中に頼めばいいじゃないですか」

田中なら楽勝に居所くらい割り出せることだろう。

だが、そう簡単にはいかなかった。

「それは考えたんだがな、今は海外旅行を満喫しているらしい。今頃フランスの警察と遊んでいることだろうよ」

「でも、協力は無理です。そちら側に田中がいる限り、僕は貴女の味方はできませんよ。僕が協力したことが暴露たなら、僕自身抹殺されちゃいますからね」

「だから、これは一人の隠れ楓からの依頼だ。私一人の頼みなら何の影響も無いだろ。それとも、困っている人を見捨てるのか?知ってしまった以上、この子がお前の知らないところで苦しむのは無理だ」

ーまったく、どうして、こうなるのか。そうだよ、弱い人見つけたら、助けちゃうんだよ。お人好しなんだ。だからこそ、この依頼は受け取れない。

「無理です。貴女は巻き込めません。だから、この依頼は貴女からじゃない、僕が勝手に見つけて、勝手にあなたの仕事を横取りしただけだ。だから、これは依頼じゃない」

楓はフっと微笑むと、「お前ならそう言ってくれると思ったよ」

そしてー急に鳩尾に振動がきたと思ったら、視界が暗くなった。


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