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第8話 結婚の宴

10年前。

幼い栄心は、足にケガをして、診療所にいた。

「何で、子供に修行なんてさせるの!」

「樹の上から、落ちただけですよお」

母と父が、ケンカをしていた。

「栄心に、危ないことをさせないで」

母は、栄心のもとに来て、言った。

「栄心。修行なんかしなくていいのよ」

「え…」

栄心は、下を向く。

修行をしたい。

小鳥たちが大好きだから、守りたい。

「今度は、気をつけて修行します。母さま」

「栄心。修行なんてやめなさい」

母は、強く見つめてくる。

何で、母は、止めるのだろう。

「小鳥たちを守る人になりたいんです」

思っていることを素直に言った。

「…小鳥?守る?」

「小鳥たちの守り人になりたいんです」

「…」

母は、黙って栄心のそばを離れた。

その後、性格の不一致を理由に両親は、離婚した。

母は、栄心は父に似ていると言い残した。


結婚を守るのは、難しい。

栄心は、思った。

でも、大君殿下と式部ちゃんの結婚までは、守らなくてはいけない。


第8話 結婚の宴


世桜城。離宮。

「熱病は、驚くほど回復したよ」

眼鏡で体格のいい大君殿下は、栄心に感謝していた。

突然の、原因不明の高熱。

心配をかけた式部ちゃんの頭を優しくなでてあげている。

失恋した多くの悲しみが生んだ、燃える霊・ホムラ。

炎の子供。

それは、栄心が封印した。

その後、大君殿下は、熱から回復した。

お城の恋桜も、異常なまでの赤色から、元通りに戻っている。

「もう少し落ち着いたら、結婚の宴を開こう」

「はい」

大君殿下と式部ちゃんが見つめ合う。

二人は、本当に大好き同士なのだ。


離宮。紫咲大臣の居間。

「結婚の宴は、世桜城で開かれる予定だ」

紫咲大臣は、扇子を広げる。

結婚の宴。

両想いの大君殿下と式部ちゃんが行う結婚式。

恋霊の騒ぎもなく、燃える霊の騒動も解決した。

「大義だったわ。栄心くん」

飛流さんは、素直に褒めてくれる。

「霊的事象に精通する者。護りびととしての役目は、十分にこなしてもらったが、結婚の宴がある。もうしばらく、滞在をしてもらいたい」

「いいかしら…?」

「…はい。まだまだ修行中の身ですが、お役に立てるなら、霊力者としてお手伝いします」

栄心は、深々と頭を下げる。


世桜城。野外の宴の広場。

恋桜たちが見渡す限りに立ち並んでいる。

恋桜の樹は、正常な色に戻りつつある。

「ここで、結婚の宴を開くんですね」

「そうよ」

飛流さんがうなづく。

「結婚いいなー。ワタシも栄心とー」

「俺は、まだ結婚しません」

「結婚しちゃえばいいじゃ〜ん」

「しません」

栄心は、吹雪と木織をかわす。

この二人には、相変わらず緊張感がない。

「…緊張してるの?栄心くん」

「え、えっと、緊張してます…」

「お城の盛大な宴だものね。護りびととして緊張する気持ちはわかるわ」

「はい…」

「大人がたくさんいるのよ。大丈夫。いつも通りでいてね」

「は、はい…」


ぴいちく。ぴいちく。

恋桜の樹の上に、小鳥たちが集まっている。

「小鳥たち…」

栄心は、恋乃夢桜神社の小鳥たちを思い出す。

じめじめしてはいないだろうか。

心配だ。

結婚の宴が無事終われば、帰れる。

何事もなく、無事であれば…。


「私を大君殿下に会わせてーーーっ…!」


女性の叫ぶような声がした。

美しい紫色の長い髪の女性が、警備団たちに詰め寄っている。

百式ひゃくしきさま。落ち着いてくだされ」

「百式さま」

「私の妹が、何故選ばれたのよっ…!」

警備団に止められている。

紫咲むらさき百式ひゃくしき。25歳。

紫色の長い髪の美女。

式部ちゃんの年の離れたお姉さんだった。

姉の百式さまは、元々の大君殿下の婚約者だったらしい。

それが、いつの間にやら、大君殿下は妹の式部ちゃんと恋仲になっていた。

それが、気にいらないで騒いでいるらしい。

幼い妹に、婚約者を取られたら、不満もあるだろう。

「妹が、泥棒猫だなんて、がっかりだわっ…!」

「落ち着いてくだされ」

「ここは、結婚の宴の予定地ですぞ」

「くっ…」

百式さまは、辺りを見回す。

「金髪の霊力者は、どこにいるのっ…」

「え…」

栄心は、百式さまと目が合う。

すたすた。

こっちへ、歩いてくる。

「金髪の霊力者。…恋霊の出し方を教えなさい」

ビシッと、百式さまは言い放つ。

恋霊の出し方…?

恋霊は、片想いの強い心と霊力のある女の娘が生む怨霊。

この世桜の都に、霊力の高い女の娘は、ほとんどいない。

恋霊は、もう出現しないだろう。

「出し方は、ないのかしら」

「出し方…ですか?」

「知っているなら、はやく教えなさい」

どうやら、百式さまは、恋霊騒ぎで結婚の宴の邪魔をしたいらしい。

悪いことを考えている。

教えるワケにはいかない。

そもそも、教えてどうなるものでもない。

「何か、悪い霊の出し方を教えなさい」

百式さまは、しつこい。

悪い霊は、いるにはいる。

出し方など教えられない。


「悪い霊か〜。黒い霊気なら、栄心がいつも困ってるじゃ〜ん?じめじめが発生させるやつ〜」

突然、木織が答えた。

「今、黒い霊気の話は、しないでください!」

栄心は、慌てて木織の口をふさぐ。

「黒い霊気ね?それで、結婚の宴を台無しにしてあげるわ。見てらっしゃいっ…!ふふふ」

不敵に笑う、百式さまである。

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