第6話 年の差なんて
恋乃夢桜神社。本堂内。
片想い恋愛相談室。
「さて、どんな片想いじゃ?」
「…私、親子ほど年の離れた方に片想いしていたのです。見た目が若く見えた方なので、気づきませんでした」
「おうおう。年の差は、引っかかるのう」
「そうなんです」
町娘は、真剣な表情だ。
恋は、突然はじまることもある。
どんな人なのか、くわしくわからないまま、恋に落ちることもある。
ただ、外見で、雰囲気で好きになることもある。
年齢。
結構、重要だ。
若くてカッコいいなら、誰でもいい人もいる。
でも、恋は落ちるもの。
たとえるなら、沼。
確認も重要だ。
相手が、独り身かどうか。
すぐ調べよう。
「すでに、結婚していたらどうしましょう…!」
「不倫は、よくないのう」
修連老人は、遠い目をする。
町娘も遠くを見つめる。
不倫は、良くない…。
「どうすればいいでしょう…」
「あきらめも、一手じゃな」
「片想いをあきらめるんですか?嫌です。…でも、不倫は絶対やめましょう」
町娘は、不倫を絶対しないと言う。。
第6話 年の差なんて
世桜城。離宮。
「ここに居たかい。式部ちゃん」
立派なハカマ姿の青年が入ってきた。
眼鏡をしている。
「大君殿下!お久しぶりです!」
式部ちゃんは、明るい顔になって青年の元に駆け寄る。
「久しぶりじゃないだろう。昨日も会ったよ」
眼鏡の青年。
世桜大君殿下。34歳。
白桜色の短髪。
体格の良い、表情穏やかな好青年。
大人気城主。
大君殿下、本人である。
「紫咲大臣に聞いたよ。護りびとが助けに来てくれたんだよね」
「はい。そうなんですよ。お名前は、確か、栄心さん」
「そうかい。栄心さんだね。…よろしく。栄心さん」
「は、はい。よろしくお願いします」
栄心は、慌ててお辞儀をする。
「ワタシは、連れだよー」
「オレは、友達だよ〜」
吹雪と木織はお城のお殿様を前にしても、変わりない。
大君殿下。
優しげな眼鏡青年だった。
思ったより、柔らかい感じの男の人だ。
人気もうなづけるような気がする。
しかし、気になることがある。
手を取り合う、大君殿下と式部ちゃん。
34歳と14歳。
年の差が、20歳はなれている?
下手したら、親子くらいの年の差だ。
「年の差交際なんですね」
「年の差は、あるねー」
「年の差いいの〜?」
栄心たちは、思ったことを言う。
「そうかな?気にしないでほしいな。わたしが、式部ちゃんを好きなのは変わらないんだよ」
「わたくしだって、大君殿下が大好きです」
ひしっ
大君殿下と式部ちゃんは、抱きしめ合う。
大きな体格の殿下と小柄な式部ちゃん。
本当に仲良しだ。
「やっぱり、秘密は良くない。公言するのを急ごう」
「大君殿下…」
「そしたら、すぐ結婚をしよう」
「はい…」
恋人同士の二人には、もう何も見えていない。
「栄心さんは、“護りびと”なんだよね」
大君殿下は、栄心に確認する。
殿下は、予定が決まっているという。
まず、新聞で恋人の公表をする。
都中に知ってもらう。
騒ぎにはしない。
後、結婚の宴を開く。
という流れだ。
「大騒ぎになると思うんですけど…」
栄心は、感想をのべる。
「え?そうかな?」
「皆んな、大君殿下のことが大好きだから、大丈夫ですよね」
「そうだね」
式部ちゃんと大君殿下は、微笑み合っている。
大君殿下は、大人気城主。
多くの町娘が憧れる、片想いの相手。
霊力を持つ町娘が、一部、恋霊となったりした。
ウワサでも、恋人がいるなんて、大騒ぎ確実ではないだろうか。
「大君殿下に片想いする町娘が、大騒ぎになりますよね」
「そうだとは思うよ」
大君殿下は、大きくうなづく。
「騒ぎは、お城の警備団で何とかする。問題は、霊的なことだろう?」
「霊的なことは、護りびとさんが、何とかしてくれるんですよね」
式部ちゃんは、笑顔だ。
護りびとの栄心を完全に信用している。
「いや…。俺の実力知っていますか?まだ、何もしてないんですけど」
栄心は、小鳥たちの守り人。
霊力はあるが、まだまだ修行中の身。
世桜城にきてから、会話をしただけで、特に目立った霊力は使っていない。
自信もない。
しかし、父に送り出されたのだ。
しっかりと霊力者としての実力は示したい。
「ただ、信用している」
「ただ、信用しています」
大君殿下と式部ちゃんは、意見が同じだ。
「えーと…」
何も言えない栄心。
「栄心、大丈夫ー?」
「どうなるんだろ〜」
吹雪も木織も、不安が隠せない。
次の日。世桜の都。
号外が、飛ぶように配られた。
“大君殿下に熱愛発覚”。
それは、都中にまたたく間に広がった。
多くの町娘が、驚きと失意につつまれた。
恋霊騒ぎは、ない。
都は、いつも通りに日常を過ごしていく。
ただ、世桜城に異変が起こった。
大君殿下が、熱病で倒れたのである。




