42 エルザの反省
ジェイド様と別れたあと、わたしは空を飛びながら王都の様子を観察していた。
みな、さきほどの魔物による被害の対応にあたっている。
「怪我をされた方は、あちらに臨時の救護所がありますので。そちらに!」
「おい、土木班、早く材木屋から必要な資材もらってこい!」
憲兵や騎士団の兵士たちは、組織的な動きをしており、迅速な復旧作業をすすめていた。被害がひどい場所がみるまに片付いていく。
「うわあああん、お母さーん!」
「明日からどうしたらいいんだ……」
それはそれとして、いまだに動揺している市民たちもいた。
怪我をして意識のない者、建物が壊れて途方に暮れている者など。
わたしはこういうときなんの力にもなれない。せめて鳥の魔物が出現したときにその場にいれば、どうにかできたかもしれないけれど。
わたしに会うために、ジェイド殿下とリフューズが王都を離れていたのが良くなかった。
そう思うと胸が痛んだ。
わたしという存在がいなければ、もっと早く守ってもらえたのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
いたたまれなくなって、わたしは王都から逃げ出した。
あの鳥の魔物は、オオカミの魔物――デルマのときと違ってかなり攻撃性が高い種族だった。
デルマのときはたまたま運が良かっただけだ。
単に、人間を「追いかけたい」だけの子だったから。
でもあの鳥の魔物は……強い羽ばたきで突風を地上に巻き起こしていた。建物を壊し、それによって人間をも傷つけていた。
もともとそういう習性のある鳥だったのかもしれない。
『生き物辞典』が手元にあれば、すぐに調べられるのに――。あとで村の図書館に寄ってみようか。私物であるその本が、まだ残されてるかはわからないけど。
しばらくして、西の村に到着した。
中央広場では着々と「宴」のための飾り付けが進んでいる。わたしは空のかなり高いところにいたが、誰も見上げる者はいなかった。
「はあ……」
わたしは何をやってるんだろうか。
魔女としてよみがえって。よみがえったら、彼らの助けになりたいと動いてしまった。
人として生きている間は何もできなかったから、せめて今生では、得た「力」を有効的に使いたいと思っていた。
でも、そんなのは全部傲慢だったのかもしれない。
西の村の人々にとっては益があっても、王都の人々にとっては損な存在となってしまった。
わたしはもともと、ジェイド様からもこの国からも「いらない」とされた人間だった。
「役に立たない」と判を押された人間だった。
だからこそ、今生では役に立ちたかった。
魔女となったならやれるはず、と――。
でも、当然だけどそんなうまくはいかなかった。
わたしができることなんて、たかが知れている。わたしは万能じゃない。わたしがいない場所のことまでわたしが救うことはできない。
それは、ジェイド様やリフューズだってそうだ。
彼らも神様じゃない。手の届く範囲でしか、他人を救えない。
ならば、わたしも手の届く範囲を救っていくしかないのではないか。
「たしかリフューズさんは、わたしたちの他にも魔の者が世界中で出現してるはずだ、って言ってましたよね……」
彼の言を信じればそうなる。
わたしは、この村だけでなく、行ける範囲の場所に魔物が出没していないか見回ってみることにした。




