第89話「水の流れと人の行方」どこに行くのですか?
「うま~い!」
どうもこんにちは、ただいま絶賛迷子中の黒助です! 僕は今、僕が作り、ぽかぽかに温めたカマクラの中で快適に寛ぎながら、丸まると肥えた金柑を味わっています。それにしても、真冬に食べる金柑は別格ですねー。甘味が違います! 美味しいです! ついつい食べすぎちゃいます。僕も肥えちゃいますねー。
そういえば、柑橘類って夏の食べ物ってイメージでしたけど、この世界ではほとんどの柑橘類が冬の食べ物みたいです。真冬の今も、外には沢山の実が生っています。地球でもそうでしたっけ? 勘違いだったかな?
まぁでも、イメージの影響ってバカに出来ないですよねー。
前世ではほとんど社会と関わりなく一人で過ごしていた僕でも、欲しくないもの求めてないものを生み出し消費し続けないといけない……、そんなせわしない前世の人たちが試行錯誤して、あちらこちらで飛び交っていた宣伝や広告によって、知らず知らずに植え付けられたイメージというのも少なくなかったのかなぁって、今は感じています。
欲しくないものを大量に作っては大量に捨てて、やれ経済危機だとか嘆いていた人たちは、一体何がしたかったんでしょうね? ま、いっか。
そうそう、イメージといえば、こっちの世界に転生して、面白いなぁって思ったことがあるんですよ。
それは……、ゴキブリです。
突然何をって思うかもしれないけど、この世界の人たちは――といってもエルナ村の人たちしか知らないけど――、みんなゴキブリを怖がらないんですよねー。
みんな、『あ、なんか虫がいる』――くらいな反応なんです。
僕はそれが結構な衝撃的でした。だって、日本人ってみんなゴキブリ、嫌いですよね? 僕も大大大っ嫌いでした!! あの黒い塊はヒキニートの天敵です。あのガサガサした足音に何度、僕の胸が飛び跳ねたか……、それにどうしてあんなに向かってくるんですか? 何度、僕の体が飛び跳ねたことか……。
でもそれって、なんでも、殺虫剤メーカーが売れるために国民に植え付けたメディア洗脳だったていう話を、昔前世のどこかで聞いたことがあります。
「そんな馬鹿な……」――って、僕はその時は思ってましたけど、エルナ村の人達のゴキブリに対する反応を見ていると、その信ぴょう性があるような気がしてきます。
嫌った反応を見せていたのは僕と紅葉くらいです。他の人はいたって平気そうでした。そんな環境で育ったためなのか……、今では僕も割と平気になっちゃいました。本当に。今では、なんであんなものに怯えていたのか不思議に思ってしまうくらいです。
そんなわけで、もしかすると僕がゴキブリを怖がっていたのは、前世で知らず知らず植え付けられていたメディア洗脳だったのかなぁって、今では思います。
どうなんでしょう? 地球のメディアさん達は、スポンサーの為なら何でもしてましたし、自分が作った商品が売れるためなら、地球の方たちは何でもしてましたからねー。
大量無駄生産、大量破棄、大量環境破壊社会、
大量消費、宣伝広告金融経済社会おつーって感じです。
とまぁ、そんなどうでもいい話はおいておいて、それにしても僕と紅葉って、驚く程に趣味嗜好が似ています。とにもかくにも、紅葉の前世が日本人なのは間違いなさそうです。本人も少しずつ思い出しているようでした。
……でも、紅葉は日本の話が余り好きじゃないみたいです。何かトラウマでもあるんでしょうか? 僕みたいに? そんなところまで似ています。
本当に、似たもの兄妹ですねー。今頃なにしてるのかな? ヒロト君といちゃついてるかな? もふもふしてるかな? なんかいいなぁ、あの二人……。
まぁでも、そんなのは別にどうでもいっか。
。。。。。。
とりあえず気晴らしに、ついさっき極寒の中、外に顔を出して取って来たリンゴをすり潰して、布で濾してジュースにして、それにレモン汁を添えて少しだけ温めて飲みます。
「あー、うまーい!」
お次は、以前にそのすり潰したリンゴを乾燥させておいたリンゴチップを、小さく小分けして布で巻いて、お湯につけてリンゴティーにしていただきます。
「あ~、落ち着く~」
温まります~。
次はそれに、りんご酵母を混ぜて飲みます。
「う~、濃い!」
このちょっとした苦味がクセになりますねー。
ちなみに、リンゴ酵母の作り方はとっても簡単です。
普通の容器を熱湯で消毒。切ったりんごと水を溢れるまで入れて蓋をする。それを3日程冷やして放置する。後はたまに開け閉め振りしながら放置するだけ。シュワシュワしたら出来上がり。まじうまい。
外にはリンゴや金柑だけでなく、他の柑橘系の果物といったのも鈴なりになっています。今度はこれを酵母にしてみようかなぁって思います。なんなら、パンを作ってみてもいいかもしれませんねー。なにか粉になりそうなものないかな~。
あー、なんだかこういうのって、楽しくなっちゃいますよねー。
。。。
もうここ最近、僕は服を着るのも辞めました。だって着る意味ないし、洗濯面倒だし。そういえば、地球でヒキニートやってた時も、僕は毛布を包んでるだけでずっと生活してました。
初めは抵抗あるけど、慣れてしまうと、とっても快適なんですよねー。そうやって生活していると、たまに服を着た時なんかは、その違和感がすごくてビックリしちゃったりするんですよね。――あれ? 今まで、本当に僕はこんな物を着て生活してたっけ? ――って感じで驚くんです。それだけに収まらず、その後しばらくしてから、全身が痒くなって赤くなったのは、今ではいい思い出です。
。。。。。。
僕にとって、ここでの生活というのは、とても美味しい食べ物が豊富にあり、着るものにも困らず、寝る場所にも困らない。そんな快適な生活です。
なんだか、前世の、あの頃のヒキニート生活に戻ってきたような気分です。
これでいい?
わかんない!
けどまぁ、とにかく今は、この遭難生活を精いっぱいに満喫しようかなって思います。
村人N「ネクロマンさー」 ――ネロ
村人W「ウィザード」 ――ウィズ
村人Z「ゾンビ」 ――ゾリア




