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シルバーリング  作者: Yua
86/91

第86話。シルヴィア3「灯台下暗し」あ、こんな近くにあったのですか……。


「ごめんなさい……」


今の私は、もうどれだけそう呟いただろうか……。

もうどれだけ彷徨ってるだろうか……。


どれだけそう口にすれば許されるだろうか……。

どれだけ彷徨えば許されるだろうか……。


どれだけ苦しめば許されるだろうか……。

いつまで彷徨えばいいんだろう……。


もう、死のうかな……。なんでまだ生きてるの……? 

私が生きてる意味なんて、価値なんて、なにもないのに……。



私が生きてる意味ってなに……。


 …… …… ……



私が生まれた意味ってなに……。


 …… …… ……



私は何が欲しかったのかな……。


――力が欲しかった。力があれば何でもできると思った。……けど間違っていた。力は私を生かしただけで、人を傷つけ、私を苦しめるモノでしかなかった。


『私が欲しいものは力ではなかった』



私は何がしたかったのかな?

力を手に入れて私は何がしたかったのかな?


――見返したかった。認められたかった。優越感に浸りたかった。……けど間違いだった。そんな物を手に入れても、私は満たされなかった。虚しくて淋しいだけだった。


『見返し、認められ、優越感に浸ることが、私のしたいことではなかった』



私を満たすものってなに?

私はなんで生きたいの?

私は何が欲しいの?


 …… …… …… 



私ってなんだろう?


 私は、この世界の誰からも愛されない……。そんな存在……。



私は何が欲しかったの?


 私が……欲しかったもの……、



何を求めていたの?


 求めていたもの……。



何?



 私は……、誰かに……、







――『愛されたかった』――。




 私は……、誰かに……、 







――『愛されたい』――。







 ―― ―― ――


「あら? あなた見ない顔ね――って、泥だらけじゃない!」

「ほんとだ~迷子~?」


そう二つの何かが、当時の私に話しかけてきた。



――『殺される』


そう直ぐに悟った。それほどまでに、その二つの圧力は凄まじかった。



「なに、これ……。こんなのが、この世界に、居たの……? でも……、なんで、今なの……」


「えー、なに? こんなの? セフィルのこと?」

「いや~、まりーのことだと思うな~」



でも、どうしてなのか、その二つに攻撃の意思はなかった。


(私が魔族だと、気づいてない? そんなことが、あるのかな……。この私の、見た目で……)



薄汚れた白髪に、淀んだ赤い目、そして、血泥まみれの褐色肌の不気味な魔族――この時代のこの世界で、これらを携えた私に襲いにかからなかった人間は、今までに出会ったことがなかった――。



(なんにせよ……、逃げなきゃ……)


そう思った時には、すでに私は逃げ出していた。けれど……。



「なになに~鬼ごっこ? わたし~強いよ~!」


私が逃げ出した時には、もう既にその小さな緑のなにかが、私の前に回り込んでいた。



(どうしよう……どうすればいい……どうすれば…………、


いや……、もうやめよう……。諦めよう……。この二つには、どうしたって勝てないし、逃げられない……。あぁ、呆気ないなぁ……)


私はそうすべてを諦めて、膝を、腰を、地面につけてうなだれた。



「ははは……、こんな終わり……。せっかく、ここまで……、苦しんで……、ぅ……、せっかく……、ぅ……、答えを……、みつけたのにぃ……」


私の瞳からは、自然と涙が流れていた。この時ほど『死にたくない』『生きたい』と、願ったことは今まで一度もなかった。 




「ちょっと、セフィル! なに泣かせちゃってるのよー!」

「え~! 私なにもしてないよ~」


「え、そうなの? なら、なんでこの子は泣いてるのかしら?」

「さぁ~なんでだろ~」


そんな私を他所にこの二つは、これからやってくる絶望に涙を流す私のことを不思議がる。


(え……、もしかして、この人たち……、本当にまだ私が魔族だって気づいてない……? それなら、もしかしたら……、このまま気づかれずに、見逃してもらえたり…………、


いや……、やめよう……。そんなこと、あるわけないし……、それに正直もう……、疲れた……)



「あのぉ……、できれば、楽に……、お願い…します……。痛いのは、やっぱりイヤなので……」


これまで痛いこと辛いこと、いっぱい経験してきたけど、結局それが慣れるなんてことはなかった。やっぱり痛いのはどこまでいっても怖い。この人たちの良心に期待して、私は覚悟を決めてそう言った。



「この子、何言ってるの?」

「さぁ~」


けれど、そんな私の覚悟を他所に、この人たちは依然として、私を見て不思議そうな表情をしていた。



(本当に……、気づいてないんだ……。なら、最後くらいは、潔く……)



「わたし……、魔族なんです……」


この時の私には、もう死ぬ覚悟ができていたし、固まっていた。だからその程度の希望では揺さぶられなかった。それに、そうして私が私の正体をこの人たちに告げたとき、私は恐怖や恐れよりも、どこかすがすがしい思いと、一滴の喜びを感じていた。



「「 ? 」」


しかし、そんな私の覚悟も思いも踏みにじるかの如く、この人たちの私を見る不思議そうな表情は、さらにその色を濃くしていった。



「そうね、魔族ね、いまさら何言ってるの? あ、ちなみに私は人間よ」

「うんうん~まぞく~。私はね~大精霊~」


「で、それがどうしたの?」

「どうしたの~」



「――えっ?」


私は完全に動揺した。この人たちが、私が魔族だと気付いていたこと、それを知りながらも、今こうして私と接していること、大精霊のこと、まったく頭が追い付かなかった。



「え、え……、だって……、私を殺すん、ですよね……?」


「意味不明だわ」

「いみふ~」



「――えっ?」


「「 え? 」」



この時の私には、何が起きているのか分からなかった。人間が魔族である私を殺すことが意味不明だと言う、この人たちのことが、私にとっては意味が分からなかった。



「魔族だと何かあるの?」

「あるの~?」


「えっ、えっと……、だって……、だって……」


そんな当たり前のことを聞かれるなんて思ってもみなかった。こんな常識を、こんな真顔で聞かれるなんて想像もしてなかった。当然言葉に詰まった。なんて言ったらいいのか分からなかった。



「えっ、えっと……、だって……、だって……」


「「 ? 」」


この人たちは相変わらず、不思議そうに私のことを見ていた。そんな己の無知を無知とも思っていない、この人たちの表情を眺めていると……、魔族は人間に害をなす存在で、人間は魔族を見つけ次第、殺しにかかってくること、それはこの時代では仕方がないこと――そんな私の認識が、常識こそがが間違っているのかと疑ってしまいそうだった。




「まぁ、それはよく分からないけど、それにしても、あなたのその銀髪……」 


――銀髪――、唐突にやってきたその言葉を耳にした瞬間、私の心臓は跳ね上がった。そして、おそらくその後に続くだろう罵倒の言葉に備えて、私は身構えた。



「とっても綺麗ね! 触ってみてもいいかしら!」

「あ~、まり~、ずる~い、私も~」


――私は固まった。それまでの私の、普通では、常識では、ありえない言葉を耳にしたから、私は自分の耳が本当におかしくなったのかと、この時ばかりは本気で思った。



「え…………、きれい……?」


「ええ、とっても綺麗よ――こんな綺麗な銀髪は、今まで見たことがないわ!」

「私も~」



「……きれ……い? 本当……に……?」


「ええ、綺麗よ! 本当に本当に、綺麗よ!」



 ……


 ……


 ……



「……ぅ……ぅ……うぅ……うぅぅ……うぅ……うぁぁ……あぅうぅ……あぁぁ……」



私は泣いた。いっぱい泣いた。嬉しかったから? ……わからない。私には、あの時の気持ちをどう表現すればいいのか、分からない……。ただ、とにかくこの時の私は、泣いた。




「ちょっと~まり~! なに泣かせてるのよ~!」

「えぇ! なんでよ! 私まだなにもしてないでしょ! 謝んないからね! 私まだ悪くないもん!」




 。。。。。。


このあと、私はまりーさんとセフェルさんに保護されて、エルナ村の家族になった。




……fin。

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