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シルバーリング  作者: Yua
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第81話「浮世の苦楽は壁一重」覗いちゃいます?

「甘~い」


村を出発して森の中を歩いていたら、とても大きな無花果の木を見つけたので、思わず立ち止まり、果実を摘み、つまみ食いをしてしまいました。みずみずしく甘くて、このざらざらとした触感がたまらんです。


あっ、向こうには、小さいですけどプラムの木があります。




「あっまーい」


前世の学校の給食で出てきたスモモって、凄く酸っぱかった記憶があるんですけど、こっちの世界のスモモは甘いですね。とにかく甘いです! もぎたてだからかな?


ついでにこれも食べよう。




「ん~、こっちは本当に酸っぱ~い」


昨日、歩いている時に見つけで採ってリュックに入れておいた、野いちごを口に含みます。とっても酸っぱいです。まだ早かったでしょうか? でもこの酸っぱさがクセになります。




……いやー、それにしてもです、僕はエルナ村を出発してから、いったいもうどれくらいの日が経ったのでしょうか? うーん、多分一ヶ月はまだ経ってないと思います。あと、それとなんですけど…………ここってどこですか?



……もちろん、そんな僕の素朴で質素な質問に、答えてくれるような声はありません。代わりに、可愛くて綺麗な小鳥のさえずりが四方八方から返ってきます……。癒されますねー。



……はい、ただいま僕は、絶賛迷子中です。


村から意気揚々と旅立ったところまでは良かったんですが、その後がとにかく酷かったです――まぁつまり、わりと最初から酷かったということですねー。


あのころの僕はヴェギ王国までの地図が頭に入っているからと、慢心していました。地球にいた時のような感覚でした――困ったらスマホがある、コンビニがある、最悪の場合は、優しそうで気弱そんな年配の方にでも尋ねればいい……みたいな感覚です。


まぁとにかくです、あの頃の僕というのは、とにもかくにも慢心してしまっていました。だから……「人道通って回り道なんてするよりさ、森を直線に突っ切った方が早くね?」――なーんて考えが、浮かんでしまったんでしょうねー。


あの頃の僕は、そう独り言をつぶやいて、迷いなく舗装された道を外れました。そして道なき道を歩きました。誰も歩いたことのない道を行く――それはまるで、僕がこの森のパイオニアにでもなったかのような気分でした――。その足並みはとても軽く、ズンズンと勢いよく森を突っ切っていきました。



ですが、僕はどうやら森という存在を舐めてしまっていたようです。森を歩くこと数日――いや、もしかすると一時間ほど歩いたころにはもう既にだったかもしれないですが――僕は驚くほどにあっけなく、この森での方向感覚を見失いました。……つまり迷子です。



「まぁでも、ヴェギ王国は、村から東だから――朝、太陽のある方向に歩いていれば、多分そのうち着くよねー」



……なんてことにはなりませんでした。


「あれ? なんかここさっき通ったくね? というかもう結構な日にち歩いたけど……、もしかしてもうヴェギ王国、超えちゃってる可能性ある? うーん、少し戻るか……」




 。。。。。。


数日後……。


「んー、ちゃんと戻ってるはずなんだけどなぁ……。見覚えのある場所が、ない……。どうしよう……」




こうして僕は、ビックリするぐらいの迷子さんになってしまいましたー。


「とりあえず休憩~、さっき取った青ミズ、湯がいて食べようー」



まあでも、迷子だからといって、悲観に暮れるなんて事はないです。


「あ、そうだ、一緒に栗も茹でよう」



水は水魔法があるから問題ないし、僕は火の魔法も使えます。まぁこの二つがあれば、森にある大抵の物は美味しく食べられます。食器も土魔法で作れます。そしてなにより、ここには村の大精霊の加護を受けた、手付かずの資源豊かな森があります。


たかが人一人程度が、この森で飢えて苦しむなんてことは、どうしたって起きえません。もしここで飢えて苦しもうとするのならば、それはとても苦難な道のりとなることでしょう。そのように僕の目には映ります。



「セフィルちゃんありがとう~。いっただきま~す! う~、ホクうま~」


僕はなんとなく、村の大精霊ちゃんに感謝を述べて、その恵みをいただきます。



「ごちそうさま~」


いやー、ごちそうでしたー。ここ最近はこんな感じで沢山食事をとったり、食べ歩いたりしているせいなのか、少しだけ体重が増えたような気がします。なんだかこの森を独り占めしているような気分で、申し訳なくなっちゃいますねー。



「まだ早いけど、もう今日は寝ちゃおうかな? うん、寝ようー」


そうして僕は、土魔法で地面を軽く掘って、地下に小さなカマクラみたいなのを作ります。そして入口を最小限にして布を張ります。次に、落ち葉を拾ってきて、敷いて布を被せてベットにします。そして…………寝転がるー。


初めは木下の芝生に、布を敷いて寝ていたんだけど……、虫が凄すぎて……、特に蚊が本当にうざすぎて……。とても普通に寝れるような環境ではなかったので、僕は睡眠魔法を独自で編み出して、自分に掛けて無理やり眠ってました。けど起きたら、当然だけどあちらこちらが刺されまくりで……。これではダメだと思って試行錯誤した結果、今の形に至りました。


このカマクラみたいなのを編み出したおかげで、虫の問題は大体解決しました。けれど、落ち葉を敷いているとはいっても下は固い地面なんで、寝心地というのはあまり良くないです。なので、睡眠魔法には相変わらずにお世話になってます。良く眠れます。快眠魔法です。



「あ、そうだ、寝る前に日課の素振りと、お風呂に入ろう!」


そう思い立ち、僕は体を起こして外に出て、まずはお風呂を作ります。土を掘って固めて水を入れて温める……はい完成! 毎日毎日、繰り返していたので慣れたものです。魔法って便利ですよねー。僕って便利?



そうして次は、日課の素振りを始めます。


「っ…… っ…… っ……」 フンッ フンッ フンッ



ある程度、いい汗をかいたら、そのままお風呂に浸かります。少し冷めてるので温めながら入ります。


「ふ~、あ~、いい感じ~」



やっぱり、お風呂はいいですね~。最高です。


そんな感じで暫くの間、湯に浸かります。だいたい一、二時間ほどです。……長風呂ですか?



そうして二時間ほど浸かってから、湯に浸かったまま、湯で軽く洗濯をしてから湯を出て、近くの木にでも適当に干して、そしてそのままフラフラとカマクラの仮ベットまで行き……、寝ます。



「おやすみなさ~い」


――そうして僕が寝ようとした時……、あることが頭をよぎります。



「あれ? 青ミズがあるって事は、近くに水辺があるって事だよね? 村やヴェギ王国の近くに、水辺ってあったっけ?」


それは割と一大事です。つまり、僕が今いるこの場所は、村からもヴェギ王国からも、ほど遠い場所であるという証拠なのだから……。



「ま、別にどうでもいっか、寝よー。明日はどっちに歩こうかなぁー。ワクワクー」


まぁこんな感じで、僕は森での遭難生活を楽しんで、満喫しています。僕がヴェギ王国にたどり着く日は、いったい何時なのかー。僕が村に帰る日は、いったい何時のことになるのやら~。あー、楽し~。



おやすみ~。

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