第80話「天高く馬肥える秋」外出日和なのです。
僕は前世で、地球で、そして日本という国で、ずっとずーっとヒキニートでいてしまったからなのでしょうか? ここ最近ですね、そこにいた頃の、持病みたいなものが再発してきてしまいました。
その病名はというとですね、『一人になりたい症候群』――といいます。
症状といたしましては、一人になりたくなることは勿論ですが、とにかく何でも一人でしたくなります。身の周りのこと、それ以外のことも全て一人でしたくなってしまいます。他との関りが苦痛になってきてしまいます。億劫になってしまいます。
前世の僕は、周りの人間と波長が全く合わずに、それでも合わせようと無理をしてしまったのがおそらく原因で、その病気を患ってしまいました。なんちゃって系な人間嫌いなんかではなくて、ガチのマジの人間嫌いになってしまいました。何処からか聞こえてくる、誰かの挨拶の音一つで、吐き気を催してしまうほどのガチさ加減でした。
ですが、今の僕は、その地球に居た頃なんかとは全く違って、家族や村の人達が、嫌いになったとかでは決してありません。むしろ、みんなのことが好きです。大好きです!
なのに……、何故でしょうか……。
無性に一人になりたくなります……。
何故でしょうか……。
きっと前世の僕だったなら、これくらいのことなら平気で一人で抱え込んでいたことでしょうが、今の僕は一人ではない……僕一人で抱えて悩んで傷ついてしまうと、周りのみんなのことも傷つけてしまうことになるので……まずは家族に相談してみます。
「よく分かんないけど、とりあえず一人旅でもしてみたらいいんじゃない?」――まりー
「そうだな、一度、黒助も外の世界を見てみるのも、いいのかもしれないな」――ゴルト
僕の悩みに対しては、両親は特に悩むようなことはしないで、それを軽く提案してくれました。僕の両親はいつも大体こんな感じで、僕の悩みや相談というのを軽く扱います。僕にとっては、そのおかげで、小さなことも気軽に相談しやすくてありがたいなぁって思っています。何でもかんでも重く受け取られると……しんどいです。
まぁそれはそれとして、『一人旅』ですか……。
――いいですね! なんかいいです! 特に、『一人』というところに、気が惹かれます! します! 一人旅しちゃいましょう! 今すぐにしましょう!
……あ、あれ、そういえばですけど、思い返してみると、僕って今までこの村の外に出たことって、一度もないような…………。なるほどー、どうやら僕は、今世でもずっと引きこもりだったようです。生粋の引きこもり体質ですねー。
ならば! 今から早速その体質を改善すべく、脱引きこもりの旅へと参ろうじゃないか! えっとー、必要なものは……。
「え、黒兄、本当に行っちゃうの……?」
「うん、行ってくるねー」
「やだ! 行くなら紅葉も行く!」
おや、紅葉が駄々をこねるなんて、珍しい……。まさか紅葉が反対するとは思いませんでした。ですがこれはもう譲れません! 『一人旅』――あぁ、なんと魅力的な響きなのでしょう……。
そのあと、紅葉を説得し終えた僕は、両親から軽く外の情報を教えてもらい、それをまとめた結果――とりあえず僕は、ヴェギ王国まで、お試しのプチ一人旅を敢行することに決めました。いきなりの遠出は紅葉がどうしても反対したので、まずは近場です。そのプチ旅から帰ってきたら、今度は少しばかり遠出をしてみるのもいいかもしれませんねー。どうやらこの世界には、魔王だとか勇者なんていう存在もいるみたいだし、それが全く気にならないと言えばウソになります。
なんかいいですねー、冒険って感じで!
なんだか、ワクワクしてきます!
紅葉は最後まで、ついて来たがりましたが、何とか理解してもらいました。まぁ今回は直ぐに帰ってくるからね。それまでヒロト君をもふって待っているそうです。それと、お土産だけはしっかりと頼まれました――ちゃっかりしています。
「くろすけー、私も一人旅するから一緒に行こう!」
「いや、それだと一人旅じゃなくなるから」
「なら、後ろからバレないように、こっそりついて行くから、許可して!」
「新手のストーカーなの!?」
こんな感じで姉ちゃんも付いてこようとしましが、雑にお断りしました。姉ちゃんとの二人旅も、とてもとても魅力的ではありますが、今回はどうしても『一人旅』がしたいので適当に断りました。帰ってきたら誘ってみようかなー。姉ちゃんと二人で遠出するのもいいかもです。
。。。
さて、というわけで「思い立ったら吉日」です。
用意は特にしていません。木刀と多少の衣類くらいです。ヴェギ王国って、思っていたよりもすぐ近くにあるみたいだし。こんな感じで、まぁ多分大丈夫です。
エルナ村とヴェギ王国周辺の地図だけは、しっかりと頭に入れておきました。徒歩で行きます。あとはノープランです。さっそく出発です!
季節はまだ暑さの残る秋の始めです。帰ってく頃には、村の森には沢山の美味しい果物が実を付けているはずです。では行こう!
「行ってきま~す!」




