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シルバーリング  作者: Yua
76/91

第76話「求めよ、さらば与えられん」以外と難しいのです……。

おひさー、です!

村人Y「はぁ~気持ちええわ~」

黒助「だね~」



おはようございます。黒助です。18歳です。


18歳といえば、地球ではたしか、いろんな物事が解禁され始める年齢でしたよね~。そういったものに興味がなかった僕も、18禁という文字自体は何度も目にしたことがあります。でもなんで18なんだろう? そもそも、何のための規制だったんだろう?


18歳未満の人が、他の人がセックスしてるビデオを見るのはダメだけど、自分たちがセックスするのは別にいいって、何のための規制なの? 何を規制してるの? え、それともなんですか? するよりも見る方が凄いってことなんですか? 未経験だからわかんない。


……ま、どうでもいっか。



 そんなこんなで、こんなくだらないことを考えてしまうくらいには、今の僕はとってもリラックスしてしまっています。只今、温泉に浸かってます。朝風呂です。


はぁ~、極楽です。朝風呂って、なんでこんなに極楽なんでしょうね~。夕方や夜に浸かるのとは、何かが違いますよね~。なんだろ~。朝風呂ならではの、何かがありますよね~。なんだろ~。



 今僕が浸かっているこの温泉は、村のだいたい真ん中あたりにあって、誰でも好きな時に好きなだけ浸かることのできる、とても広々とした温泉です。もちろん、混浴です。この村には、温泉だけに限らず、男性と女性を区別して分けるような施設は存在しません。トイレや更衣室、寝床だったりなんかも、みーんな一緒です。

 

 性別にかかわらず、なにかと区別したがる地球で育ったことのある僕も、初めのころは驚いたりしたようなこともあったけど、慣れればこれが普通で、気づけば当たり前のことになってましたー。



 そんなわけで僕の隣では、狐君の母親でもある、小さくて可愛い9個の尻尾たちがとっても魅力的な、ヨウコさんが極楽しています。ヨウコさんはとても明るく陽気な人で、とっても綺麗な人です。そして僕と同じくお風呂ダイスキーな人で、よくこうして一緒に浸かることがあります。


あとー、性欲が凄い人ですねー。性に奔放なここの村人たちの中でも、ヨウコさんの性欲は別格です。今でも、村人たちとだけでは飽き足らずに、よくふらっと村を出て、普通の人に化けて多くの男性と夜を共にしているだそうです。そうしている内に、滅んでしまった国なんかもあるんだとか……。こうして一緒に浸かっている時なんかに、よくそういった話やボヤキみたいなのを、本人から聞きます。



 そんな傾国の美女さんは、今日も隣で、なんだか感慨深そうにぼやいてます。


「ほんに、優しすぎいうーんも考えもんやわ、まぁでも、外に刺激求めて出て行っても、結局はここん人達の優しさいうんが、1番ええなぁってことんなって、すぐに帰って来てまうんやけどな……」


ヨウコさんはそう感慨深そうにボヤキます。


おそらくこの後に、今日も数多の村の男性たちが、ヨウコさんに食べられてしまうことになるのでしょう……性的に。あ、それと女性も食べるそうです。見境なしです。



そんなヨウコさんは、僕の剣の師匠のギンさんと結婚していて、狐君という子供だっていますけど、他の人とは避妊さえすれば、あとは許可されてます。


まあ、師匠って仙人みたい……というかもう仙人だし、全然性欲ないみたいだし、仕方ないです。それに、寿命なんかもないみたいだし、なんていうかホントに凄い人です。


 

そんな感じで、この村では結婚してても他の人と性行為をするのは、別にいけないことではありません。パートナーが許可を出していて、しっかりと避妊をしていれば、あとは自由です。


ただ結婚中は、村長の許可を得て子作りをすることが多いので、避妊魔法が解けます。なので結婚後はパートナー同士としかしない夫婦の方が多いです。


もし村長の許可なしに、パートナー意外の子供を妊娠する、もしくはさせるようなことになれば、猫さん達の二の舞です。村の禁忌です。



「ほんに、あの子を産むんは大変やった……。ギンを欲情させるんも、あの長い禁欲も……。やから、あの子、身ごもったんわかった時いうんは、本当に嬉しかった……」


あの子というのはもちろん狐君です。それにしても、師匠が欲情する姿かぁ……確かに想像できないです……。そういった欲求みたいなのとは、本当に無縁な人なんで……。



師匠を欲情させるために、ヨウコさんは、あの手この手を尽くしたそうです。……本当にあの手この手だったそうです。そうして何とか、師匠と一夜を共に出来たんだそうです。


「ギンが私を抱いてくれたんは、前にも後にも、あの時だけ……。あれ以来、私の相手なんか、まったくしてくれはせん……。とうに、何であないな人、好きになってもうたんやろ……」


……今日のヨウコさんのボヤキは、いつにも増して濃いめです。


ヨウコさんがこうしてボヤく時、僕はいつもこんな感じで、隣でただ耳を傾けているだけのことがほとんどです。


だってー、僕が何かを言えるような話ではないですからー。



 ヨウコさんは、師匠と初め会った時、全く相手にされなかったのが逆に新鮮で、ついつい夢中になってしまったと、そして勢いあまって結婚までしてしまったんだと、この人を本気にさせてみたいと思ったんだと、以前にボヤいていました


けど、今はもう、何もかもを諦めてしまったそうです。無理だって、悟ったみたいです。このまま無理をするのは、お互いにとって良くないと思ったそうです。


「ほんに、何であないな人を…………でも、それでも、あの時の、あの時のことが、他のどんな何よりも、幸せやった……。忘れられん……本当に、忘れられへん……。もう一回……もう一回だけでええから、またギンに、抱いて欲しい……。どうしたらええんやろ……」


最近のヨウコさんは、こういったような、師匠に関するボヤキが多くなったような気がします。なんだかんだ言っても、結局は好きなんだって……大好きなんだって……本当はもっとギンさんに愛されたいんだって……。ここ最近はよくそういったことを呟いています。僕はただ頷いて聞いてます。


それと、ここ最近のヨウコさんは、村を出て行く回数が減ってきたように思います。それに、たとえ村を出て行ったとしても、以前に比べて、帰ってくるまでの期間というのも早くなっていると思います。そのせいか、僕とヨウコさんがこの温泉で出くわす回数というのも、随分と増えたように思います。以前までだと、数か月ほど見かけないなんてことも普通にありましたけど、ここ最近は長くても数週間ほどです。今回もわりと早い再会でした。


「もうね、飽きたんよ……チヤホヤされるん……。そないなもんよりな、結局は、ここん人達に優しいされる方が、満たされんのよ……。これより上、求めて村出ていっても、結局はここん人たちとが、やっぱり一番満たされるんやなって、そう気づくだけで終わんねん……。


どこの貴族だろうが、聖職者だろうが、王族だろうが、どんな立派な立場の奴でも、スラムの奴でも、大人でも子供でも、男やったらみんなが嬉しそうに私の上乗っかって、股開いて、挿れて、気持ちよさそうに腰振って、そうやって私の体に夢中になって、幸せそうに果てる……。


初めはそれ見るんが楽しかった。チヤホヤされるんも嬉しかったし、私も気持ちよかった。それになにより、私の体で誰かが幸せになってくれるいうんが本当に嬉しかった。誰かに必要とされてる、役にたってるっていうんが、快感やった……。


だって、ここん人らやったら、別に私がおらんでも何も変わらんから。私の代わり、幾らでもおるから……。私よりも賢い人、強い人、器用な人、そんで美しくてきれいで魅力的な人、いっぱいおる。私だけにしかできんこと、私だけの取り柄いうん……何もない……。私が本当に必要とされるいうこと、ないねん……。


けど外の世界やと違う。外の世界やったら、私は誰よりも賢くて、強くて、器用で、そしてなにより、美しくて綺麗で魅力的な人になれる。私だけが持ってる、私だけにしか出来んもんで溢れてる。私の代わりはなかなかおらん。私より魅力的な人はそうそうおらん。だからみんなから必要とされたし、私とヤった後なんかは、みんな本当に、ほんっとうに幸せそうに眠ってくれる……。その寝顔を見るんが幸せやった……。誰かの役に立てたっていうんが嬉しかった……。


けどな、飽きてん……。なんか違うなって……なってん……。私は本当にこの人たちの役に立ってるんかなって、私が本当にしたいことはこんなことなんかなって…………。だって結局はみんな下心やねんもん……。どこまでいってもそんなんばっかやねんもん……。誰もかれもが自分、自分って、自分の事ばっかり……。私のこと勝手に決めつけて、押し付けて……。結局、私はこの人達にとっては、ただの消耗品でしかないんやなって思ったら……急に虚しくなってん……。


私に優しくしてくる奴なんかもようさんおったけど、結局はみんな下心やねん……。ミエミエやねん……。そんな下心ばっかな奴に付き合うんな、だんだん嫌になってきてん……。そんな自分勝手な奴らに、自分の身、削るんな、だんだん嫌になってきてん……。


私が欲しいんは、求めてるんはなんやろなって考えたら…………ギンやねん。ギンだけやねん。ギンに抱いてほしい……それだけ……それだけやなって、気づいてん。それさえ満たせば、もうあとはなんもいらん。けどそれがどうやっても満たされんから、つい他をあてにして、外に出てまう……。今はもう、ただそれだけ……。


けどそうやって外ん人たちと関わってるうちにな、気づいてん……。私な、最近ようやく気づいてん……誰よりも一番、自分勝手やったんは、私やったって……。私はいっつも自分のことばっかりで、周りの事なんて全然見れてなかったって……ギンの気持ちなんて考えてなかったって……自分の気持ちばっか押し付けてたって……やっと気づいてん……。それだけやない……。私に優しくしてくれる人達のこと、蔑ろにしていた……そんで知らず知らずに、見下してた……。ヒロトのことだって、産んだっきりで何もしてない……。


これやアカンなって思ってん。やからまずは、もうむやみやたらに股開くん止めよって、思ってん。けどな……今までの習慣ってな、本当に恐ろしい……。ついついな、開いてしまう……。誰でもいいから挿れて欲しなんねん…………。わかる? この気持ち……。止めたいのに、やめられん……。イヤやのに、してしまう……。わかる?


そんでもな、まだここん人達とだけならいいかなって、別に我慢せんでもいいかなって、それは思う。みんな本当に優しいし、私も本当に幸せになれるし、いいかなって思う……。


けど……ここの人達って、もうあんまり私の相手……してくれんくて……。


それで、つい村の外に出てまう……。外の人やったら、みんな相手してくれるから……喜んで相手してくれるから……。そんで、ヤるんやけど……そうしてヤったあとにな、なんていうんか、喪失感、みたいなんが本当にすごくてな……。わたし、本当になにしてるんやろって……後からすっごい後悔する……。


それでも最近までやったらな、シてる間っていうんは、それなりに気持ちよかった。けどな……今はな、全然気持ちようない……。もう股開いてるくらいから、わたし……なにやってるんやろ……って、だんだん萎えてくる……。そんで不快にまでなってくる…………。なのに! なのに! 止められん…………。とうに、やめられん…………。


もう気持ちようなんてないんに……シたなる……。挿れてほしなる……。やめられん……。もう自分が分からん……。とうに、わからん……。とうに、どうしたらええん……。どうしろっていうん……。どうしたらやめられるん……。




なんで私って、こないに性欲あるん……。あっても仕方ないんに……。だって私の好きになった人、なってしまった人いうんは、性欲なんてもん、まったくない人なんやもん……。とうに、こんな夫婦……上手くいくはずなんて、ないやん……。どうしたって無理やん……。分かりきってるやん……。 


とうに、私なんであの人と夫婦なんかになってもうたんやろ……。すきになってしまったんやろ……。ほんと……嫌になる……。けど……でも、しょうがないやん……好きなんやもん……。とうに、好きなんやもん……………。 


とうに、もうあと一回だけでも、いい……。どうしても抱いて欲しい……。愛してほしい……。ただそれだけ……とうに、それだけ……。でも、どうせ無理やから、そんなん、私が一番ようわかってるから……またすぐに他の人で、ごまかしてまうんやろな…………簡単に股、開くんやろな……。




でも、こうやって湯に浸かってる間だけは、そういう考え薄まってくれるから、よう浸かりに来るんやけど…………。けどな、はっきり言ってな、今だって私、黒くんに欲情してんねんで……。黒君と、シたくてしょうがない……。ほんと……ヒドイ……ひどすぎる……。とうに、いやになる……。もういやや……こんなわたし……。こんなひどい私、もういやや…………。



なぁ……黒くん、どうしたらええ思う……」




こ、ここでくるのかぁ……。まぁでも、正直どこでこられても、僕にはとっても荷が重い話題すぎて、どの道、言葉に詰まるんだとは思うんだけど…………。なんていうか、あれですかね? つまりヨウコさんは、セックス依存性というやつなのでしょうか? 


もうね、今までの僕には全くの無縁な話題すぎてですね……まぁ未経験ですしー、要はですね……まったく分かりません! 分かるわけないでしょ! どう答えればいいんですか? ――えっと、どうしたらいいのって? 逆に聞きたいです……。




「うーん、まぁ、そういうのって、無理して頑張ってどうにかできるようなことじゃないと思う……簡単には変われないと思う…………。でも! たとえそうだとしても! ヨウコさんはヒドイ人なんかじゃないよ! 嫌いになったらダメだよ!」


そうです、こうなったら、もう僕の思うこと素直に言うしかありません!


「…………そうか……? なんていうか、自分でいうんもなんやけど、今の私って、ほんに、本当に、かなりヒドイと思うで…………」



「ヨウコさんがそう勝手に思ってるだけでしょ! だから僕も勝手に思わしてもらうけど、ヨウコさんはヒドイ人なんかじゃない! とっても素敵で、とっても優しい人だよ! それに、そんなことよりさ、たかが依存性一つ抱えたくらいで、ヨウコさんをヒドイ人呼ばわりするのは、ヒドイと思う!」


うん、依存症一つ抱えているだけでヒドイ人認定なんてされてしまったら、世の中ヒドイ人だらけで大変ですよ? いいじゃん別に、依存症の一つ二つ抱えてたってさ。個性だよ、そう! 個性!


「その依存性だって、別に他の人を傷つけたいとか、傷つけたってことですらないんだしさ! ……まぁでも、止められなくて落ち込むってところまでは、まぁなんとなくわかるよ、うん、それはわかる。けどさ、でもさ、それだけのことでヨウコさんをヒドイ人扱いするのは流石にひどいと思う! 



……それに何よりだよ、僕はヨウコさんの小さくて可愛らしい尻尾達が本当に大好きなんだよ! たかだか依存性一つ程度のことで、僕の大好きなその尻尾達を勝手に否定しないでよ!」



全くだよ! そんな魅力的な尻尾たちを、これでもかってほど携えておきながらさ、自分には取り柄がないだなんて…………なに言ってんの!? 欲張りにも程があるんですけど!


「いや、尻尾って……こんなんただの尻尾やん……なんか無駄に多いし……」


「そのただの尻尾達が本当に大好きなの! お願いだから、これ以上、僕の大好きな尻尾達のこと、愚弄しないでよ!」


本当にさ、たかが尻尾とは何だよ! なんなの、意味わかんないんですけど! もふり倒してやる! 水で濡れてて、もふもふ半減だけど、十分だよ! 


もふもふ もふもふ もふもふ



「あはは、ちょっと黒くん! くすぐったい! ははは」


無視、無視~。 もふもふ もふもふ もふもふ



もうこうなれば強硬手段です! 無理やりにでも笑わせてやります! 笑っていれば、たぶんそのうちうまくいきます! もうどのみち僕にはそれくらいのことしかできません! だって、そんな辛気臭い話されても、僕がまじめに答えられるはずないじゃないですかー。無茶言わないでくださいよー。



あ、でもさっきの話で少しだけ気になったことがあります。

一旦手を止めてー。


「ねぇ、ヨウコさん、この話ってー、僕以外の人にも相談したりしてるの?」


はい、僕はこのヨウコさんの悩みというものを、今日初めて聞きました。僕は今の今まで、ヨウコさんは、好きで村の外へ出て行ってるんだと思っていました。まさか、そのことで悩んでいるなんて思ってもいませんでした。むしろ、楽しんでるんだと思っていました。村人達からあんまり相手してもらえなくなってきている、なんていうことも初耳です。


もしかしたらですけど、他の人たちも、僕と同じような感覚なのではないでしょうか? ヨウコさんがこんなにも悩んで思い詰めているなんて、思ってもいないのではないでしょうか?


「そんなん……相談なんて、できるわけないやん……」

「ん? 何で?」


「何でって……そんなん、無理やん……。こないなこと言うてもうたら、それこそ本当に、誰も相手してくれんようになるかもしれん……。だって、今もうすでに、私の相手してくれいう人、ほとんどおらんようなってんのに……。昨日なんて、誰も相手してくれんかった……」


「えっ、誰も? そうだったの!?」 


……これは流石に驚きです。てっきりこの後も、たくさんの村人さんたちが、ヨウコさんにアプローチするものばかりだと……。


そんな僕の、驚きの声に対して、ヨウコさんはうつむいて、「うん……」――と消え入りそうそうな声でうなずきます。普段の陽気さの、かけらも感じられないその姿からは、ヨウコさんのこの悩みの深刻さがうかがえます。



 でも確かに、そういえばここの村人達って、外の人とか、外の人と交わったような人とは、あんまり交わろうとはしないような気がします。まぁでも、その気持ちはなんとなく分かります。……なんていうかですね、魔力が汚れてる? って感じなんですかね? 僕は魔力にとても鈍感なので、ほとんど分からないんですけど、わかる人にはハッキリと分かるそうです。


 ちなみにですが、魔力の鈍感さでいえば、僕はこの村ではぶっちぎりみたいです。そんな鈍感な僕とは違い、分かる系な人たちの話を軽~くまとめるとですね……


人が交わるっていうのは、そのまんまの意味で交わるってことみたいです。自分の魔力と相手の魔力が交わるみたいです。混ざり合うみたいです。なので、もし交わる相手の魔力が汚れていたのなら、当然、その汚れが自分の魔力と交わり、中和して、汚れます。


この村にはいませんが、相手を選ばずに不特定多数の人と交わったような人なんかだと、魔力がぐちゃぐちゃの絵の具状態であることも珍しくないみたいで、中には魂までぐちゃぐちゃに汚染されてしまっているような人もいるみたいです。


なので、ここの村人たちは一見、僕なんかから見れば、誰とでも性行為をしていて、とても性にみだらな人達のように見えますが、実はめちゃくちゃ相手を選んでるんだそうです。魔力が汚れてしまっているような人なんかとは、相手をするのはもちろんですが、手を繋ぐことですらためらってしまうみたいです。



「ほんと、最初の頃は何とも思ってなかった……。よく分かってなかった……。なんかみんな、最近あんまり相手してくれんなったような気が……まあでも、外行ったら幾らでも相手おるしええか。


……くらいの感覚やった……」


まぁそういうのって、分からない人には本当に分からないからね。分からないまま放っておいたことが、気づいた時には深刻な状況になってましたってこと、あるあるだよねー。 



「あの時は特に気にせんかった……。けど、今やったら分かる……。わかんねん……。私がここの人達を汚してるって感覚が…………わかんねん……。


……あのな、ここの人達とヤった後ってな、とうにな、サッパリすんねん。そんでな、すっごい気持ちよう寝れんねん。


……これな、外の人達と真逆やねん……。


流石に分かる……。馬鹿な私でも流石に気づく……。私が外の人に汚されてるいうこと……。そして、そんな私がここの人達を汚してしまってるいうこと…………。


……そうやってな、ここの優しい人たちをな、汚してしまってるいうことがな、とうに、本当にな、つらいねん…………」



ヨウコさんは苦しそうに、そう言葉を吐き出します。



ヨウコさんの話からすると、おそらく、今ヨウコさんの相手をしている人達というのは、僕と同じように魔力に鈍感な人か、もしくはヨウコさんが汚れているのに気がづいて、その汚れを背負ってあげている人か、だと思います。


「とうに申し訳ないと思うし、黙ってるんは卑怯やと思うし、アカンとは思うんやけど……でも、それでも、もしそないなこと言ってしまって、ここん人達の誰からも相手されんようになってしもうたらって考えたら…………もしそうなったら、私は……わたしは本当に、終わる……。私はこの村から出て行かなあかんようなる……。それは、それだけは、いやや……」


ヨウコさんはそう何かに悲痛に訴えます。

葛藤していて、悩みに悩んでるといった感じです。



それなら……


「ならそれこそ、ちゃんと皆に言って相談してよ! ヨウコさんはここの村人なんだよ! 村人の問題は、村人みんなの問題なんだよ! ヨウコさんだけで悩むなんて、ずるいよ! 反則だよ!」


そうだよ! たぶんみんな、この問題をよく知らないと思うし、知っていてもきっと大した問題だと思ってないと思う。


ヨウコさんって、いつも陽気で明るくて悩みなんてなさそうな人だから、みんな勘違いしてると思う。僕も勘違いしてた。


ヨウコさんが村人達から、あまり相手にされなくなってきてるってことだって、きっとみんなよく知らないと思う。ただ何となく汚れているヨウコさんを見て、何となく今日は遠慮しとこう、ヨウコさんの相手は他にもいっぱいいるし……ってな感じになってるだけだと思う……わかんないけど。


まぁとにもかくにも、相談して確認してみないと、何も分からない。


「でも……それで、もし本当に誰も相手してくれんくなったら……」

「ならその時は僕が相手する」



「――っ! ……黒くんがって、そらありがたい、けど……ええんか……? さっきまでの話、聞いてたやろ……」


「もう! いいから早く皆に相談してよ! そもそもこんなの、僕に手に負えるような話なんかじゃないんだよ! 


それと、ヨウコさんの相手をしてもいいのかってことだけど、そんなの……いいよ! ぜんぜんいいよ! むしろお願いしたいくらいだよ!


……え、だって、それってようするにだよ、ヨウコさんとセックスがしたいですかってことでしょ? え、なにいってんの? そんなのさ、したいよ! したいに決まってるじゃん! 


ヨウコさんとセックス三昧なんでしょ? 最高すぎない!? いいの? 本当にいいの? ぜひお願いします!」


「――――――」



ヨウコさんは僕の欲望の勢いに、あっけにとられてしまったのか、固まっています。本当に固まってます。


え? そんなに驚くようなことだったかな?


「まぁ、とにかくだよ、もし本当に誰もヨウコさんの相手をしないってなっても、僕でいいんなら、いっくらでも相手するし、村を出て行くっていうんなら、僕もついていく! セックスだろうがなんだろうが相手するからさ、ていうか早く相手したいからさ、早いとこヨウコさんのその悩み、みんなにぶちまけて、さらけ出してきてよ!」


「――っ! ――な、く、黒くん……!?」




とまぁ、なんだかんだ言いましたが、僕は本当にヨウコさんとセックスができるとは思ってないです。あ、いや、お願いすればできるのかな? まぁでもその必要はすぐになくなるんじゃないかなぁって思ってます。


だってさー、みんながヨウコさんを見捨てるなんてこと、あるわけないじゃん!

 そんなこと、ちょっと考えれば分かることなのに…………。ほんと、つらい時っていうのは、そんなことも分からなくなってしまうくらいに、周りのことが見えなくなってしまうんだねー。



けどまぁ、それでもし万が一にも、本当にヨウコさんが見捨てられたというのなら、僕は本当にヨウコさんとまじめに向き合って、セックスだろうがなんだろうが、するつもりです。


……控えめに言って、最高だと思います。



「……そ、そうか……そうなんか…………。黒くん、ありがとう……。とうに、ありがとうな…………。うん、わかった! 相談してみる! みんなに言ってみるな! ……やから、それでもしあかんかったら……そんときは、黒くん、お願いな……」


「うん! 楽しみ!」


そう僕が勢いよく願望を返すと、ヨウコさんは軽い笑顔を見せた後、意を決したようにして湯を上がり、そして浴場を後にしました。




 。。。


そしてその日の夕方……。


ヨウコさんは村の人達を集めて今の自分の状況、そして胸の内を、包み隠さずさらけ出しました。夕方になってしまったのは、ヨウコさんの決心が揺らいでしまって、ずっと迷いに迷って立ち往生してしまってたからです。みかねた僕が再度の説得を試みて、何とかといった形です。



そして、このヨウコさんのカミングアウトに対して、村人さん達の反応はというと……


「最近近づきにくいなと思って、何となく距離を置いていてしまっていたけど、まさかそんなことになっていたなんて……」


「この前、なんかつい断ってしまったけど、まさかそのことでヨウコさんがこんなにも思いつめてたなんて……」


「俺もだ……ヨウさんには俺以外にも相手する人が沢山いるし、俺はいいかなって思ってた……。断ってるのって俺くらいだと思ってた……」


「あぁ……まさか皆に断られてたなんて、知らなかった……」


「村を出るのも、元気だなって感じで思ってた……。本当にごめん……俺、ヨウさんのこと、何にも見れてなかった……」


「ヨウさん、この前は断ってごめん……俺で良かったらまたいつでも相手させてもらうよ!」「俺もだ、いつでも誘ってくれ!」



村人Y「……ぅ……みんな……ありがとう……」



まあこんな感じです。

大体予想どうりです。




村人G「ヨウコ……ごめんな……。まさかそこまで思いつめていたとは……」


どうやら師匠もヨウコさんの悩みについては、よく知らなかったようです。うん、あんまりそういうの興味とかなさそう……。


「もしかすると今まで俺は、ヨウコの明るさに、甘えすぎていたのかもしれないな……。思い返せば、ヨウコからは、いつも貰うばかりで……俺からは何も返せなんだ……」


村人Y「そ、そんなこと! ……あるかも……」


うん、あると僕も思う。

まぁそれが師匠だし……。


「あぁ、本当にすまない……。そうだな、これからは、何もかもが今直ぐに……とは出来ないが、俺もヨウコに少しでも返していけるように、しようと思う……


 ヨウコ、大好きだ」




 。。。


その後、泣き崩れてしまったヨウコさんを、師匠が優しく、やさしく抱きしめて、さらに泣き崩れてしまったヨウコさんを、師匠がいわゆるお姫様抱っこというものをして帰っていきました。見守っていた村人さん達も、まるで自分のことかのように嬉しそうに見送っていました。


もしかするとこの後、ヨウコさんの念願、叶っちゃうかもですねー!




あー、もちろんですが、僕の出番なんてないです。ヨウコさんとのセックスはお預けです……はい、本当によかったです。でもやっぱり、ちょっとだけ残念ですねー。


……ん? ちょっとだけ? いーや! めちゃくちゃ残念です! したかったです! すっごくしたかったです! ヨウコさんとセックス、ホントにしたかった!


まぁでも、もしかしたら僕は、ヨウコさんとはずっとお預けなくらいなのがベストなのかもですねー。僕の出番なんてなくても、満たされてるくらいがいいんだと、本当に思います。まぁそれはこれからの師匠次第ということでー。


まぁ僕は最終手段っていうやつですね!

なんかかっこいいです!


いつかは出番があるんでしょうか? ないといいですねー。けど、あってほしい気もします! だって、ヨウコさんとセックス、したいもん! あの可愛い尻尾たちをモフモフしながら、ヨウコさんとセックスしたい!


……やっぱり、今からお願いしようかな……。あー、でも今はダメですよねー。

ヨウコさん、ギンさん、お幸せに~~~。




……けど、なんなていうんでしょうか……。何だかもやもやするんですよねー。うーん、なんていうかですけどー、僕が求めているものって……なに? 


肉体的な気持ちよさなのでしょうか? 

ヨウコさんとセックスをすれば、僕の欲求は満たされるのでしょうか?


まぁー、そりゃー気持ちいとは思いますけど、 


なんか違う……。 



僕は誰かと体でつながりたいのでしょうか? 

それとも心でつながりたいのでしょうか?


違う……。どっちも違う……。

違います、そんなんじゃないです……。




もっと素直になりましょう。

もっとさらけ出しましょう。


僕が求めているもの……


あー、そういえば、僕ってなんで自殺しようと思ったんでしたっけ……。


……僕はあの世界の、何も好きにはなれなかった……。

なにも愛せなかった……。僕は……



僕は誰かを、愛したかった……。

僕は誰かを、【愛したい】……。




……fin。




 ○ 私の独り言 ○


睡眠や食のことに多種多様な悩みがあるように、「性」についても多種多様な悩みがあるはずなのに、ほとんど表には出ませんよねー。何故かタブー扱いです。


くだらないダイエットのビジネスなんかよりも、よっぽど大事な事だと思います。もっと「性」をオープンにするべきだと私は思います。


あなたはどう思いますか?



でもだからって、欲望の対象として「性」を見てしまうと、すごく汚いイメージになってしまうから、もしオープンにしていくなら、そのあたりの加減は難しそうだなーって思います。今この世界では「性」を汚く見て扱っている人が、まだまだほんっとうに多いから。


まぁとりあえず、「性」を汚く見て扱っているような店や、サイト、ビデオ、なんかは、早いとこ掃除されないかなぁって思っています。


まぁでも、それも時間の問題かなって思います。だって、「性」を汚く扱って、ビジネスをしようとする人や、お金を貰おうとする人なんかが、これからの世界で生きていけるとはとても思えないからー。


「性」は汚いモノなんかではないのです。

汚く扱っていいモノなんかではないのです。



まぁとにかくです、地球人には、「性」を汚く見て扱うモノや人には関わらない、見ないことを強くお勧めします。ていうかそういうのって、もうそろそろ時代遅れになってるんじゃないですか? わかんないですけどー。私って情報には本当に疎いのでー。情弱ー。


まぁでも、そうすれば、少なくともオナニーなんて無駄なことはしなくなります。すぐに止めれるはずです。


そしてきっと気づくはずです。この世界の「性」が誰かによって、いかに自分勝手に作られていて、無駄に浪費されていて、搾取されているのかが……。


別に、肉体的な快楽を馬鹿にするわけではないですが、ですが限りはあります。


限りあるものばかりに、いつまでもその綺麗な目を奪われていては、いけないと思います。

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