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シルバーリング  作者: Yua
69/91

第69話。王国2「狐その尾を濡らす」あるある~なのです。

私はヴェギ王国、国王シャルルである!


と、威勢よく言ってはみたものの……はっきりと言うが、私はこの国の国王にふさわしいなどとは思ってはいない。私は決して優秀などではないし、それといって人々を纏め上げるようなカリスマ性も持ち合わせていない。私にとって国王という地位は身に余るものだったと、この地位に就いてから日々、身に染みて実感している……。


そんな平凡な一人の人間でしかない私が、国民の命を、生活を、そしてこの国の命運を背負うということは、想像以上に苦しいものなのだ……。本当に本当に苦しいものなのだ……。代わってくれる者がいるなら代わってほしいが……変わってもらうにも、今現在、王位継承資格を持つ者は、みんなその権利を破棄してしまっている……。私が死にでもしない限り、その権利は復活しないことだろう……。当たり前のことだが、国にとって国王という存在は、そう簡単にコロコロ変えられるようなものではないのだ……。


私以外の王位継承資格を持っていた者は、みな私よりも賢くて、優秀な者ばかりだ。だからきっと、みな分かっていたのだ……。国を背負うということが、国王になるということがどういったことかが……。分かっていなかったのは私だけだったというわけだ……。



馬鹿で愚かな私は、王族という地位に溺れて、周りの言葉にそそのかされて、そうして国王という地位に憧れてすくすくと軟弱に育った。国王という存在は、国民から沢山の尊敬を集めて、何でも好きなことができて、それに加えて女だって抱き放題……。そんな馬鹿みたいなことを本気で信じて、国王になることを夢見て育った。国王という地位に就くまでは、本気でそんな生活ができると思っていた。国王に選ばれた瞬間は、これからの遊楽で豪楽な生活に思いをはせて、本気で喜んだ。



だが、現実は、国王という地位は、そんな生易しいものなんかではなかった……。


私が国王になってからというもの、初めのうちはそれなりに楽しんで満喫していたように記憶している。だがそんな記憶も薄れてしまったほどに現在は、毎日毎日、国民の反感に怯え、そして国民の顔色を伺う日々だ……。それに加えて、大量の書類整理をさせられ、訳の分からない会議に赴き討論をして、街の視察に飛び回り、時には国を出て外国との手に汗握る外交協議する。その他にも挙げればキリがないほどの激務……。


美味しい食事を頂くどころか、そもそもゆっくりと食事をする時間すらない……。それもあってか、最近は体調を崩す日が増えた。そんな状態では、とても女を抱くような気力も出ない……。その前にまずそんな時間がない……。


と、まぁそれはおいておいて、なにはともあれ、まずはゆっくりと休みたいところなのだが……今の私というのは、日々緊張状態なストレス下な環境に身を投じてしまっているせいなのか、物音一つでびくついてしまうほどに過敏に過剰になってしまっていて、夜に落ち着いて眠るようなことさえもできない……。


以前までならば、有り余った我が身の疲れに乗じて、ぐっすりと熟睡していたような日々もあったのだが……今はとてもそうはいきそうにない……。そんな現在の、私が夜も眠れないほどの状態になってしまっているのにも、一応の起因はある。


以前、実際に私の寝室に、他国の暗殺者が忍び込んできたことがあったのだ……。その時は間一髪で、本当に間一髪のところで取り押さえられたのだが……その時の恐怖といったものは、あれから数か月が経った今でも、まったく薄れるような気配がない……。


次はどうなるのかは分からない……。あの時は運がよかった……。たまたま護衛がいた……ただそれだけだ……。そうでなかったのなら、あのとき私の護衛によって暗殺者を貫いていた刃物は、おそらくきっと、私の心臓を貫いていたことだろう……。私は命を狙われているのだと、実感した……。そう思うと、生きた心地がしない……。


それに実際のところ、暗殺によって命を失った先代は多い。暗殺されるなどということは、何も珍しいようなことではない。何を隠そう、私の父も暗殺によって命を落としている。そんな渦中にあっても、私なら大丈夫だ! と就任直後は、謎の自信に満ち溢れていたが……よくもまぁそんなことが思えたなと、今になっては本当に切に思う……。そして今の今までも、そういったことがなかったから、きっと大丈夫だろうと楽観視していたのだが……。


今では日々、暗殺に怯えている。本当に怯えている……。すれ違う人、そのすべてに恐怖を抱いてしまう……。国王とはいうが、所詮ただの平凡な人間でしかない私を殺めるなどということは、とてもとても簡単なことだ……。何も特別なものなど必要ない。果物ナイフ一丁で事足りる。すれ違い様にブスリで、はいおしまいだ。


そんな感じで、いずれ私も暗殺されてしまうのだろうか……。

そうならないで欲しいと心の底から思う……。


国民の為、国の為なら死ねる? 命を捧げる? 



馬鹿を言わないで欲しい! 私はそんな崇高な精神を持ち合わせてなどいない! 今だって本当はすぐにでも尻尾巻いて逃げ出したいんだ! 逃げ場所がないから逃げないだけなんだ!


もう分かっただろう! 私は国王などという器なんかではないのだ……。お願いだ、お願いだから、誰か代わってくれ…………。




 〇 私の独り言 〇


私も小さい頃は、大きくなったら毎日好きなことして、好きな仕事して、好きなもの食べて、好きな人と結婚して、幸せな家庭を築いて、楽しい人生を歩めるんだって疑ってなかったんだけどなぁー。


どうやらこの世界は、私が小さい頃に思っていたよりも、ずっとずっと過酷な世界だったみたいー。


けど……ここまでだとは、思ってなかったなぁ……。

愛のない愛を語る世界って、本当に生きにくい……。



みんなこの世界の「愛」という言葉に、文字に、踊らされすぎー。

まったくー、こんなに変わり果てた姿になっちゃって……伝言ゲームでもしたの?


地球人は「愛エネルギー」だとか「愛の力」とか「愛の技」とか、「愛」という言葉に、なにかと尾びれ背びれをつけたがるみたいだけど……


「愛」は「愛」だよ。はい、おしまい。

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