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シルバーリング  作者: Yua
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第70話。王国3「人事を尽くして天命を待つ」なるようになるのです! からの~「万策尽きる」オーマイガー!

「エルナ村に不穏な動きあり、か……」――シャルル


残念ながら、叶うことはないだろう願いに思いを馳せていた国王シャルルは、現在、また新たな問題に直面しているようだ。


「はい、エルナ村付近を通行した複数の商人たちが、ある日突然、エルナ村付近に道が現れたと証言してまして……。そんな馬鹿な……とは思いつつも、とても無視できるような案件ではなかったですから、実際に私も調査部隊と共に現地に赴いてみたところですね…………本当に見覚えのない道がありまして……」――フェリック


フェリック侯爵の報告を耳に収めた国王シャルルは、人目もはばからずに、肩を落とし、背中を丸め、目に見えて消沈している。そしてうつむきながら、なにやら物思いにふけっているようだ。その姿からは覇気といったようなものはまるで感じられない。まるで帰る場所もなく彷徨っている浮浪人のようなたたずまいだ。

 当然、これは国王として決して見せてはいけない態度であり、それを本人も自覚してはいるが、今の彼は、もはや他人に意識を向けるほどの余裕がないまでに、心身が疲弊してしまっている。早くちゃんと休まないとマズイですねー。



(勘弁して欲しい……。あの村は、あの村だけはダメなのだ……。我が国が手に負えるようなモノではない……。本当にどうしようもないのだ……。何でもないことを願うしかない……。


 けどそれにしても、道か……いったい何の目的で…………まさか! エルナ村が我が国の商業に手を出そうというのか!? 


 うむ、もしそうだとするのなら……かの村に最大限の便宜を図るしかあるまい……。バカ貴族どもの反発が怖いところだが、何とか押し切るしかないな……。


 ――いや待て! それとも、まさか……これは軍事的な活動ではあるまいな!? もしそうであるなら……そして、その標的が我が国であるのなら…………その時は……終わりだな……)



こうして国王シャルルは、また答えのない長い長~い悩みに悩まされ、しだいに、さらに増して、その心を病んでいくのであったー。彼が安眠を手にする日はいったい、いつのことになるのやらー。




「あの……そして、もう一つ付け加えて報告するが……」――フェリック


しばらくの間、うなだれて固まったままの国王シャルルに、恐る恐るといった感じで、フェリックが続報を告げるために問いかける。


「――っ! 何だ! まだあるのか!?」――シャルル


(もう本当に勘弁して欲しい……)



「はい、それがどうやら道が出現しただけではなく、他にも何やら大掛かりなことがなされている模様で……」



「……大掛かりなこととは、具体的にどのようなものなのだ……」


「申し訳ございません、そこまでは……。ただ、引き続きその近辺を調査していた者の報告ですと、ここ数日、エルナ村の方角から不自然な音や振動を、何度も確認しているそうです。商人からも同じような報告が多発しています。ですので、おそらくあの村では現在、何かがなされているものだと思います……」


フェリックの続報を聞いても、シャルルは微動だにしない。どうやら、もうすでに消沈しきっているこの状態で、これ以上の消沈を見せるのは流石に難しいようだ。



(不自然な音や振動……そして道…………それはやはり、軍事的なものではないのだろうか…………。

 もし今回の件の発端がエルナ村ではなくて、どこか隣国だったのなら、一番にそれを疑い、早急に糾弾しているところだ……。

 マズイことになった……。そういえば以前にヘンリーが、エルナ村が地下に魔族どもを匿ってるのではないかと、疑いを問うてきたこともあったなぁ……。その時はそんなことあるわけがないと思っていたが、今回の件で少しだけ、ホントにほんの少しだけだが、それが現実味を帯びてしまったな……。

 それにそういえば、少し前にエルナ村からやって来たサマエルという者も、確か魔族だったな……。まさか、スパイだった……などということは……)




「どうするおつもりですか! 国王!」――ヘンリー


ここまで必死に沈黙を貫いてきた騎士団長ヘンリーが、流石の流石に辛抱たまらずといった形相で声を上げる。

 見た通り、彼はとても短気だ。そのことを本人も気にしている。そして、以前からその短気な性格を、周囲からも、何度も何度も咎められていた。なので彼はその弱点を克服しようと、ここ最近は会話にむやみに口を挟むようなことはしないように努めていた。

 そんな感じで、この日はここまでなんとか口を塞いでいたようだが、どうやらここにきて我慢の限界が来たようである。


そして、そんなヘンリーの質疑に対するシャルルの応答は……


「現状維持だ……」

「――っ!」


(結局、それ以外には我が国が生き残る道がない……。我々では、あの村にはどうやったって敵いはしないのだ……。我々に出来る事といったら、今回のエルナ村の動きが軍事的でないことを祈るか、もしそうだったなら、どうか我々には牙を向けないで下さいと、必死で命乞いをするかだ……)



「あの村に、偵察隊の派遣くらいはしたほうが良いと思いますが……」


ヘンリーは今回の、というよりは今回も、国王の対応にはどうやら不満があるらしく、またいつものように反論を返した。ただ今回は、以前までの彼からでは想像もできないくらいに、その物腰は低い。



「ならん! 現状維持だ!」


(ヘンリーがどれだけ食い下がってこようとも、これだけは譲れない! 今、エルナ村を刺激することはどう考えたって愚策だ。自分から死にに行くようなものだ……。我々にはどうにも出来ないのだから、黙って見過ごすしかない……)



「はぁ……。分かりました。まぁこれのことは、もういいです……」


国王シャルルの、あるのかないのかも分からない気迫に押されたのか、それともヘンリーが丸くなったのかはわからないが、今回の件では、彼は驚くほどにあっさりと引き下がった。



「今回のことはまぁいいです……。ですが以前にサマエルという男をこの国に受け入れたこと、これには流石に納得できません! 魔族ですよ! どういうおつもりなんですか!?」


一世紀、いや半世紀ほど前までのヴェギ王国であったのなら、魔族を受け入れるなんてことは、とくに何でもないような案件ではあったのだが、近年の魔王の胎動、躍進、そして蹂躙によるものが原因だろうか、現在、魔族はこの国……だけにはとどまらずに、世界中で嫌われてしまっている……どころか迫害されている。


そのような世界事情もあるため、今日は珍しく、ここまで大人しめだったヘンリーが、またいつものように声をあらげて、このような疑問を抱き投げつけるのは特に何もおかしいようなことではない。



「仕方あるまい……。あの村からやって来た客人だ……。それにちゃんと監視は付けてある……」


その監視ちゃんとサマエルが、毎日イチャイチャしていることを、この時の国王はまだ知らない。


「ですが、魔族を……」


「私だって思うところはある……。だが……あの破壊王ゴルトに直々に頼まれてしまっては……迂闊な対応は出来んだろ……。

 それに! お前だってあの破壊王ゴルトを前にして、震え上がって、奴の意見に一言も声を発しなかったではないか!」


「――っ! そ、それは……」


「あの渦中で何とか平静を装い、奴と意見を交わし合えた我に、震えががって縮こまっていただけのような奴に、指図される筋合いはない!」


「――っ! ……申し訳ございませんでした……」


どうやら本日の会談で、ヘンリーが弱腰で丸くなったように思えたのは、おそらくその一件が尾を引いているからなのだろう。以前までなら、たとえ国王であっても、とても強い主張を見せて、何かと意見に噛みついていた彼だったが、この日は借りてきた猫のようにおとなしい。


「――っ! ……申し訳ございませんでした……」


彼はそう素直に謝罪の声を発した。これが彼の、本日の最後の言葉だった。



(とうとう私は我を忘れて、ヘンリーを一方的に怒鳴りつけてしまった……。何て酷い王様なのだろうか……。だがそのおかげで、大きな懸念だったヘンリーを丸め込むことは出来た……。後は今回の件が何でもないことであることを願うだけだ……)




「陛下、それともう一つ……」――フェリック

「何だ…………まだ何かあるのか……」――シャルル


(もう私の限界も、近いぞ……本当に……)



「はい、それがどうも……最近、雨の降る日が少なくなってきているようで……そのせいか、今年は例年よりも作物の収穫量が各地で減少しています。これは早急に対策を立てるべきかと……。

 

……あの、差し出がましいとは思いますが、その……大丈夫ですか……」


国王のあまりの覇気のなさに、その落ち込みように、思わずそう問いかけてしまったフェリックであった。



「なぁ、フェリックよ……」

「はい、なんでしょうか?」


「もう我、国王辞めていい?」



 。。。


その後、私の願いは聞き入れてもらえず、これから我が国に来るだろう食糧難の問題に関して会議を続けた。その結果、とりあえずは他国から、食糧を例年よりも多く買い付けることで話は纏まった。


だが……どうやら雨不足で食糧危機に陥ろうとしているのは、我が国だけではなかったようだ……。食料を買い付けるどころか、むしろ……いろんな国々から食糧支援を頼み込まれてしまう側に回ってしまった……。


その結果、当然のように食料は不足し、我が国は各地で食糧難に陥った……。そして、この食糧難も、当然のように我が国だけが陥ったわけではなく、盗賊まがいに我が国の畑から作物を奪い出す国々が現れ出したり、国中で食物の奪い合いから反乱、紛争、そして戦争が起きそうになったり……そして、さらにも増して本格的に雨が降らなくなってきて……もう、どうにもこうにもで頭を抱えることすら出来なくなってしまうまでの事態に陥ってしまうなどとは、まだこの時の私には想像もできなかった……。




そして、そんな頭を抱えていない現在……今ではもう、全てが手遅れだ……。もう既に各地でチラホラと餓死者が出始めていると聞く……。国内の反乱に、他国の侵略を防ぐのも、そろそろ限界に近い……。


このまま行けば、おそらく近いうちにこの国は滅ぶだろう……。そして私もおそらく死ぬであろう……。それくらいに危機的な状況だ……。この現状を打破するための、助けも、あても、策も、笑ってしまうほどに、そして笑えなくなってしまうほどに……まったくない…………。



そんな渦中ではあるが、私は一つだけ強く決意したことがある。


もし、何かの奇跡でも起こって、私がこの食糧危機を乗り越え、生き延びたのなら………………。


「私は! 国王なんて! 絶対に辞めてやる!」 



望み薄だがな……。

本当に、どうすればいいんだ……。


あぁ……死にたくないなぁ……。




 〇 私の独り言 〇


地球人って、つらい時ほど本性が出ますよね。逆につらくない時は必死で本性を隠そうとしますよね。その塩梅が難しいの?


つらい時に、他人を思いやり笑える人間。つらくない時に、自分を隠さずにすべてをさらけ出せる人間。そろそろ増えてきてもいい頃だと思うんだけどなぁー。

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