第68話。魔王軍13「短きものを端切る」損切~なのです。
続きー。少しだけー。
俺は魔王アバン! いずれこの世界を統べる男だ!
それにしてもだ……
「くっそおお! 一体何がどうなっているんだ!? 何なんだ! 何が起きているんだ!」
本当に一体何が起きてるんだ! カビエルとパズーどころか、先刻送り出したサマエルまで帰ってこんとは!
どうなっている?
まさか三人が殺られたとでも……?
――いや、ありえん!
あ奴らは俺が直々に手を加えてやった上位魔族だぞ! たかだか人間風情などに遅れを取るはずがない!
なら一体何をしてるというんだ…………。
。。。
「やぁ、やぁ、アバン君。どうだい、あの後上手くやっとるかい? 最近、収支が悪くなってる気がするんだが、私の気のせいかい?」
俺が答えの出ない考え事にふけっていると、突然、頭の中からそのような声が聞こえてくる。老年じみてはいるが、どこか覇気のある声色だ。
これは…………邪神様だ!
邪神様は俺に力をくださるお方だ! 邪神様がくださる世界エネルギーというものを使用すれば、俺は限定的ではあるが下級魔族どもを上位魔族にまでする能力が扱えるようになる! これまでにも、その能力で、俺を含めて5人もの上級魔族を誕生させた!
そんな俺も凄いだろうが、そんな俺にそのような力を与えてくださる邪心様は、まさに、我々魔王軍飛躍の影の立役者というわけだ!
「邪神様! どうやら人間風情もなかなかしぶといようです……。ですので、どうかなにとぞ、より一層のお力を!」
そうだ、まずはともあれ、お力を頂かなければ!
シルヴィア、カビエル、パズー、そしてサマエルがいない魔王領には、今や上位魔族はオルネウスただ一人だけだ……。
それに……ヴェギを攻めるために、パズーとカビエルにありったけの増援を送ってやったから、あいつらが帰ってくるまでは今の魔王軍には殆ど戦力が残っていない状態だ……。
前回にいただいた世界エネルギーも、もう使い切ってしまっていて手元にない。だから、なんとしても邪神様から、お力を頂かなばならない!
「うむ、そうか、上手くいっとらんのか……。さて、どうするか……」
そうおっしゃって、俺の為にお考えなさる邪神様……。
次こそは! 次こそは、ご期待にお答えせねば!
そう俺が決意を固めた頃、邪神様のお考えも、まとまったようだ。
「さて、アバン君。悪いが、私はそろそろこの世界を離れようと思う」
――っ!?
え……? 今何と? 何を? 何をおっしゃっているんだ? 邪神様がこの世界を離れる? 俺たちのことはどうするつもりなんだ? もしそんなことになれば、俺達は一体どうなるというんだ!?
「冗談……ですよね?」
「いや、悪いが冗談ではないな。私は本気でこの世界を去ろうと思うよ」
邪神様はどこか少しだけ愉快そうに、そうおっしゃる……。
はぁああ! ふざっけんなよ!!!
「何故なのですか! どういうことですか、邪神様!」
「あー、いや、最近はだね、投資に対しての利益が余り無くなってきたんでね、このあたりが抜けどきかと思っただけだよ。
まぁでも、この世界では君のお陰で随分と稼がせてもらったよ。アバン君! 感謝するよ!
とまぁ、そういうわけだ、あとのことは君たちだけで頑張りたまえ、アバン君」
え? いや、何を……何を言ってるんだ……。つまり、邪神様は本当に俺たちを見捨てようとしているのか? どうなっている! 一体どうなっているんだ!?
「ま、待ってください! 次こそ、次こそはご期待に添えてみせますから! 何とぞお力を!!」
そうだ! 次は上手くやる! 東がダメだったなら、まずは南だ! やれる! 俺ならやれる!
「いやー、とは言うもののだね、ここ最近にいたっては投資した分が、損益にまでなって来てるし、かといって、これ以上の将来性もさほど見込めなさそうだしね………………。うむ、やはりここが切りどきだ。こういうことは止め時が肝心なのでな。
そういうことだからアバン君! また縁があれば会おうではないか! さらばだ!」
そう言い残して、邪神さまの声はあっけなく、消えた……。
「うそ……だろ……」
俺の声も、掻き消えそうだ……。
意味が分からない……。本当に何がどうなっているんだ……。邪神様は、俺をこの世界の支配者に導いてくれるのではなかったのか? 俺は騙されていたのか?
どうする……。これから、どうする……。どうすればいいんだ……。
だが待て! 冷静に考えろ!
今の俺は果たして、そこまで悲観的な状態だろうか?
確かに邪神様は居なくなってしまったが、だからといって、敵になったわけではない。それに、この世界の北と西は依然として俺の領土だ。そして、南や東の国々といったところが、ここに攻めてくる気配もない。
人間どもの強さが変わったわけでも、我々が弱体化したわけでもない。人間は変わらず貧弱で、我々魔族は変わらず強靭だ。
どうやら東には、なにやら不確定要素があるみたいだが、それが攻めてくる気配といったものはない。
つまりだ、我々は暫くの間は安泰だというわけだ。依然として、この世界では我々魔王軍が優勢だというわけだ。
なんだ! 我々魔王軍は、ただ邪神様がいなくなっただけで、現状はまったく悲観するようなものではないではないか!
だが、まぁなんにせよ、現状の魔王軍では戦力が致命的に不足しているのは、まぎれもない事実だ……。このままでは、いずれまずいことになる……。
我々がしばらくは安泰な、今のうちに、どうにかして戦力を増やさなければ……。
だがどうする……魔族を増やすにしても、そう簡単に増えるようなものではないぞ……。それに、今の数少ない戦力しかない状態で、領内の魔族の女から反感を買うような策は流石にとれない……。いくら非力な女どもといえども、今のこの現状で、反乱でも起こされてしまったら、たまったものではない……。
かといって、魔族の性奴隷どもを孕ますだけでは、全く数が足りん…………ん? いや待てよ……別に産ませるだけなら、魔族に拘らなくてもいいのではないか? 誇り高い魔族の血に、積極的に人間の血で汚させるのを許可するのは、かなり気が引けるが…………。
だが、今はそうも言ってられん……。
よし、決まりだ! 人間の捕虜どもに、魔族を産ませるぞ。
そうと決まれば、さっそく、まずはオルネルスを呼ぼう! 招集だ!
。。。
「オルネウス!」
「はっ! 魔王様、なんなりとご命令を!」
「お前の軍を使って、生け捕りにしてある人間のメスどもに、一人でも多くの魔族を産ませろ! もし人間が産まれたなら殺せ!」
「御意!」
詳しくは把握していないが、人間のメスはそれなりの数がいたはずだ。
いくら性処理用だからといって人間と交わるなど、どうかしてると思い、俺は何度も処分しようと考えたが、軍の指揮が上がるのならばと思って、今の今まで黙認して来たが……まさかこんなところで役に立つとはな!
まだまだ俺にツキはある! ここからだ! ここから再出発だ!
俺は必ずこの世界の支配者になる!
〇 私の独り言 〇
この物質世界の頂点には誰がいますか?
この物質世界を牛耳っているのは誰ですか?
誰を想像しましたか?
では逆に、この物質世界の底には誰がいますか?
この物質世界の地獄には誰が佇んでいますか?
誰を想像しましたか?
あなたは上へ上っているつもりが、実は下へ降りているかもしれませんよ? 逆に、あなたは下へ落ちていると思っていても、実は上っているかもしれませんよ?
あなたはこの世界の上へ上りますか? それとも降りますか?
あなたはこの作られ閉ざされた幻想の物質世界から、元の現実世界へと続く道はどこにあると思いますか?
私は真ん中だと思う~。
そういえば、3月4日って、なんかあったっけ?




