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シルバーリング  作者: Yua
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第67話「憂いあれば喜びあり」こっちの方が好きなのです

そうしてしばらくの間を海の中で、岩を積み上げたり、水草を植えたり、水質を安定させたりと、わいわいがやがやしながら海の中でミリアさんのお手伝いを楽しんんで過ごした僕は、その後、陸に上がってビーチチェアのような物にもたれかかって、オレンジジュースを片手にリラックスタイムを満喫中です。


海上がりに冷たい風が当たらない、全体的には暗めな地下世界でありながら、このほどよく太陽に照らされる感じが、なんとも…………最高……です……。


そして、セフィルちゃんに分けてもらったオレンジを絞って作った、このジュースが、少なくない疲労感を帯びている今の僕の身体に、染み渡ります……。


 ごく……。 ごく……。 ごく……。




村人M「ここんところ、流れ作らへん? こう、ぶわっああぁぁって感じで! そぉおりゃー!」


「ぶわああぁ~」「流されるー」

「ふん、この程度…………あぅ……」「ずっとは~つかれる~」




海に不慣れな僕と違って、地に足つけないことが通常なミリヤさんと水精霊たちは、まだまだ余裕綽々といった感じで泳ぎまわっています。うーん、というより、遊んでる?


水を得た人魚って、一体いつとまるんだろう? ってな感じです。




村人V「黒さん、ごきげんよう」

黒助「ごきげんよう、ヴィオラさん」


優雅にくつろぐ僕に優雅な挨拶をしてきたのは、この素晴らしく最高な場所を誰よりも真っ先に住処にすると主張した、ヴァンパイアのヴィオラさんです。


優雅な衣装に、優雅なたたずまい。まさにお嬢様です。そんな彼女がこの薄暗い中に積み上げられた岩の隙間から、物静かに姿を見せました。


なんだか幻想的です……。




ちなみにですが、一応この世界では、ヴァンパイアという種族は存在しないことになっています。なぜかというと、その昔……といってもヴァンパイアのような長寿種の視点からするとほんの少し前のことのようですが……、なんでも、ヴァンパイアの血を飲めば寿命が延びるという噂が世界各地に流布されたようで、それを求めた各国の王や貴族によるヴァンパイア討伐という名目のヴァンパイア狩りが横行したそうです。


初めはそのことを疑問に思い、むしろ、嫌悪すら抱いていたような国民たちも、国王や権力者を中心に作り上げられて拡散された、都合のいいヴァンパイア像に流されていくうちに、気づけば、ヴァンパイア=悪=討伐、の図式が出来上がり積極的にヴァンパイアを狩るようになっていったそうです……。



まぁ、あとのことは想像に難くない結果になったようです。そして、その最後に討伐したとされる者は、ヴァンパイアからの世界危機を救った英雄として、今でも扱われているそうです。村長から聞きました。




ヴィオラさんはそんな大変な時期を乗り越えた、ヴァンパイアの生き残りです。本当に本当につらい日々だったそうです……。今でもそのことについてはあまり話そうとはしません。


僕が彼女から聞いたのは、彼女が命からがらでこのあたりで彷徨っていたところを、この村の住人に拾われた、ということくらいです。


そのトラウマを引きずってるためなのか、それとも単純に好みなのかはわからないけど、暗くて狭い場所がとっても大好きな人です。


暗くて狭い場所は落ち着くそうです。

とってもわかります。




そんな引きこもり体質なヴィオラさんですが、ただいま身籠ってます。妊娠中です。妊婦さんです。




村人E「お、黒助、お疲れさん」


お相手はエリックさんです。ヴィオラさんと同じように岩の隙間から現れました。僕がよく魔法を教えてもらってる、いかにもエルフって感じの人です。2人は長寿種同士で、気が合う部分も多かったんだと思います思います。


そしてさっき言っていた、ヴィオラさんを拾った人です。




まあなんにせよ、このヴァンパイアとエルフの夫婦は、とんでもないほどの美男美女夫婦です。この2人からはいったいどんな美形の子が生まれてくるのか、凄く興味があります。じーーー。



村人E「ん? どうした? そんなにヴィオのお腹を見つめて」

黒助「いやー、どんな子が生まれてくるのかなって」


村人E「そうだね、それは私も気になってるし、楽しみだよ」



村人V「私は、まだ少しだけ怖いわ……。この子がもしヴァンパイアで生まれてきてしまったら……いつの日か私と同じ思いをさせてしまうんじゃないかって……」


そううつむきながらに、ヴィオラさんは答えます。とてもとても暗い表情です。ヴィオラさんの心の傷は、僕が思っているよりもまだまだ深いみたいです。



村人E「ふふ……」


そんなヴィオラさんを前にしてエリックさんは、ただ微笑んでいるだけです。何か言葉をかけてあげようという気は……全くないようです……。そんなヴィオラさんの心の傷すら愛おしい……といった感じ……なのかな?


ただ優しく微笑んで、優しく頭を撫でています。



黒助「何かいいなぁこういうの」

村人E「ん?」


黒助「いやー、だって普通だったら何か言葉をかけたくなっちゃいそうじゃん」


大丈夫、私も一緒に居るから。

私が君と君の子供を守るから。

とかそういうよくあるやつ。



村人E「うん、こういうのは私の手には負えないからね。そんなのは私の言葉なんかよりも、時間の流れに任せてしまったほうが確実だよ。私が言えることといえば……


    ヴィオラ……『愛してるよ』……。   ってことくらい」



村人V「エリック!! 私も……愛しています……」




僕が何かを言うよりも早くに返事を返したヴィオラさんは、今、とても幸せそうな顔をしています。少しだけ涙目です。もちろん、うれし涙です。


そして、辛い思いをしたからこそわかる幸せ……。そんな幸せをかみしめるように、味わうように、二人は抱き合っています。さっきまでの憂鬱なんかに構っている暇は、もうなくなってしまったようです。



 時間の流れに任せるか……。簡単そうで難しいんだよね……。だってさ、そういう時ってさ、ついつい何かしちゃいたくなるから……。じっとしてるのって意外と難しい……。


こういったことが簡単に言えて実行できてしまうのは、長寿種ならではだからなのかな? まぁなんにせよ、素敵な答えだと思います。


長寿種どうし、お似合いさんですね。




それにしてもまったくー、そんなに抱き合って、見つめ合っちゃってー。


あーあー、キスまでしちゃってー、それも濃厚なやつー。 

もう僕のことなんて眼中にない感じですか?



この後、あの家で致す感じですかー?


――って! もうここで致しちゃう感じですか……。


てか妊娠中だけど大丈夫なの? 


……なんてとても聞ける雰囲気じゃないですー。


まあとりあえず僕は空気を読んで、空気のように去ります。



「お幸せに~」




 ○私の独り言○


誰かを思って言う「愛してる」ほど強力な言葉は、他にないと私は思うなの。


この言葉でなびかない相手には、自分が他のどんな言葉を言っても、その人にはなびかないと思うの。


地球人は、気安い言葉を言う人やそれを進める人はいっぱいいるけど、一番強力な言葉を言う人や進める人は、意外に少ないと思うなの。


あなたはちゃんと言ってるなの?

人に対して言うのはもちろんだけど……



「愛してる」を言える対象は、人だけではないのですよ。

いったん休憩~。

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