第44話。王国1「虎の尾を踏む」踏んじゃいましょう!
「魔王の脅威は去ったか……」
ヴェギ王国、王城の王室で、国王シャルルがそう呟く。
「報告ですと、そのようですね……いったい何があったのか……」
フェリック公爵が呟き返す。
建国以来、最大規模の魔物の群れが突然現れ、王国存続の危機かと騒がれたかと思えば、突然その姿を消したのだから、そう呟くのも無理はない。
「また、エルナ村……なのだろうな……」
「また……エルナ村ですか……。そうですね、丁度そのあたりの場所で魔物の進行が止まってますので、恐らくは……」
シャルルの呟きに、フェリックが答える。
「陛下はいつも、あの村を特別扱いしてますが、あの村に、一体何が有るって言うんです?」
騎士団長ヘンリーが国王シャルルに問いかける。
「わからぬ……」
「な! 分からないって……分からないのに、いつもあの村に、食糧や物資を提供しようとしてたんですか!?」
そう、国王シャルルは、事あることに、エルナ村に支援という名の、恩を売ろうとしていた。しかし、その尽くが断られていた。
断られ続けていたために、王国が損をした訳ではないので、大きな批難はなかったが、その行動を不思議に思い、不満や疑問を抱く者は少なくなかった。
シャルル「そういう事になるな……」
レンリー「なっ! 何をおっしゃっているんですか! 陛下はご自分で、何を言っているのか分かってるんですか!?」
フェリック「まあ、落ち着け、ヘンリーよ」
ヘンリー「落ち着けって……落ち着けるわけ無いでしょう! こんなの!」
シャルル「うむ、そなたの気持ちもよく分かるがな、西からの脅威が、今回に限らず、いつもあの村で食い止められるのは、紛れもない事実なのだ」
ヘンリー「でも、だからって……。とにかく、それなら尚更、そのエルナ村に調査の兵を送り込みましょう! そこで魔物の進行が止まっているということは、魔物と手を組んで匿っている可能性もあります!」
シャルル「ならん!」
ヘンリー「な!? なぜですか? この場合、調査兵を送るのが普通でしょ! 場合によっては、その村を焼き払う『バカを言うな!!!』
シャルルは声を荒げて、ヘンリーの言葉を遮る。
シャルル「仕方ないか……。よいか! これから話すことは全てが極秘だ……。忘れるなよ!」
そう一呼吸置いて、シャルルは続ける……
「あの村はな、我々ヴェギ王国が建国するよりも、遥か昔からあの場所に存在するのだ。そこに我ら先祖が、この場所に国を立てる許しをエルナ村から得たのだ。我々王国がエルナ村を統治しているのではない! エルナ村が我々王国が存在するのを許可しているのだ!」
「なっ……うそですよね……。でも……ならそれこそ……今から力ずくでその村を統治すればい『ならんと言っておるだろうが!!』
またもシャルルは、ヘンリーの言葉を遮る。
「そんな事できぬよ……違うのだ……違いすぎるのだ……
分かっているだけでも……
災害まりー、破壊王ゴルト、
魔導狂ウィズ、死神ネロ、のSランクパーティー、テンペスト!
狂乱姫キャロ、獣王リオウ、豪腕ボニー
豪脚ラビー、九尾ヨウコ、のSランクパーティー、ケモちゃんズ
この2組のパーティーメンバーは皆、エルナ村の出身者であり……
おそらく今は、あの村で暮らしている……」
ヘンリー「 冗談……でしょ…… 」
Sランクパーティーは現在、世界で3組しか存在しない。その実力は、魔王軍や伝説の勇者パーティーに匹敵すると言われている。その内の2組が1つの村に集まって住んでいると言うのだから、驚くのも無理はない。
「それだけではない……。あの村には、精霊王が住み着いておる……。他にも、とても口に出来ない者まで目撃されておる……」
「精霊王!? そんな馬鹿な! 流石にそれは有り得ない! 大体その話が本当なら、国中が大騒ぎになっているはずだ!」
「大騒ぎになるから極秘なのだ……。お主もくれぐれも……良いな……」
「い、一体なんなんですか! その村は!」
「分からぬ……我が正確に把握しておるのは、近くに霊脈が流れている、という事くらいだ」
「霊脈って……別にそこまで珍しいものでもないはずじゃ……」
「そうだ、だから分からぬのだ……。調べようにも、あの村は外部との交流を断っておる。下手に調べて、もしも反感を買えばどうなるかは、もう分かるだろう……」
「ええ……」
「あの村は外部との交流を断っている。なのに何故か人が集まる。それも飛び切り優秀な者が集まる。まるで磁石のようにな……。
そして人が良く育つ。まあその飛び切り優秀な者が、産み育てるのだから、これに関しては当然といえば当然なのだが……。まあなんせよだ……
エルナ村には、決して手を出してはならん!」
Fin




