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空気少女のトラブルダイアリー  作者: しろまる
第2話:「決闘だ」? 私音痴なんですけど。
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 "決闘"………普通に生活している上ではまず縁が無いその言葉に、そこにいたほぼ全員が唖然とする。

 曲もとっくに終わりを迎えていて、部屋には一部のクラスメートによるざわめきだけが聞こえる。


「え、決闘って……えっ? 」


「決闘ってあれだろ? よく映画とかで見る、ピストル持った2人が反対側に歩いてって、10歩目で同時に撃つやつ……」


「あの2人の間に何かあったのか? 」


「つーかジュース溢れそうだったんですけど。皆の服とかスマホとか濡れたらどうするつもりだったん? 」


 永井は、それらに耳を傾ける気配も無く、私をじっと見つめたまま、差していた指を眼鏡のブリッジに 持っていった。


 いや大袈裟すぎない? 私ただ勧誘を断っただけなんだけど。

 そんな一方的に「決闘を申し込む」とか申し込まれても、私受けないよ? 都合を押し付けられる筋合いはないはずだ。さっさと願い下げしていただけないだろうか。


「……付き合ってらんない」


 呆れて言いながら立ち上がった、その時、


「あれっ? 誰も歌わないの……? だったら詩音もっかい歌っていい? 」


 気まずい空間を破ったのは、詩音の一言だった。

 でかした詩音! そのまま皆の気を引いて、この最悪な雰囲気を何とかしてくれ! ……そう思ったのも束の間


「オイ芳村、邪魔すんなって! 何か知らんけど面白い事始まりそうだから見てよーぜ! 」


 マイクを取ろうとした彼女は、隣に座る男子に腕を掴まれ、あっという間に席に引き戻された。

 詩音も詩音で、無抵抗で席へと戻されていく。


 ちょっと余計な事しないで! 何で急にワクワクし始めてんだよ!


 私の淡い期待は、一瞬で掻き消された。


 てか決闘つったって、何で勝負すんの?

 カラオケだから普通に点数勝負とか? それだったら恐らく私瞬殺されると思うんですが。

 ただでさえ音痴なのに、相手は何でもそつなくこなせる永井。きっと歌も上手いんだろう。知らんけど。


 そんな事を考えていたら、永井がフラッとよろけた後、一息置いて口を開いた。


「お前の事だから、歌の点数で勝負するなどと安直な事は考えていないだろうが……」


 あれ、違ったみたいだ。


「まぁ一応簡単なルール説明をしておこう」


 机に手をつきながら言うと、永井はわざわざマイクを口に当てた。普通に伝えればいいのに。


「ルールはズバリ‼︎ ここにいる愚民共の心にどれだけ響かせられるか……パフォーマンス勝負と行こうじゃないかッ‼︎! 」


 そのまま、女声で歌っていた男子からマイクを強奪し、そのルールとやらを声高に叫んだ。

 ハウリングが凄くてよく聞き取れなかったが、要は歌うなり踊るなり好きにしろと、そういう事か。

 ますますくだらない。参加するメリットがまるで無い。

 というか、そもそもここに来たのだって、冬架から誘われて仕方なく来ただけだし。


「……もしお前が勝ったら、僕は今後一切お前に干渉しない」


 マイクを私の方に向けて、普段の低い声で言い放たれる。

 そうしてくれると助かるんだけど、何と言われようとも決闘はしませんからね?

 私がマイクを見つめて黙っていると、


「だが負けた場合……次期生徒会に加入する事を約束してもらおうッ‼︎! 」


 再びマイクを口元に持っていき、よく響く高々と した声で叫ぶ。

 そしてハウリングが凄い。もっと高品質のマイクは無かったのか。

 クラスメートからの視線が、私に集められる。


「ねー、やっぱ詩音うたーーームグッ」


「オイ待て待て、今いいとこだから」


 気まずい雰囲気に耐えきれなくなったか、ただ何も考えてないか分からないが、詩音が歌う意思を見せるも、近くの男子たちに手や口を塞がれ、あえなく撃沈した。


「先手必勝だ、僕から行かせてもらおう」


 そう言うと同時に、リモコンを操作して曲を入れる永井。

 私の是非が尊重されるーーーそもそも発言さえさせて貰える事なく、世界一どうでもいい決闘が、ここに開幕してしまった。


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