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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第九部

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181/203

181.暁の攻撃(3)

引き続きヴェガ部隊と交戦するシエスタとユーランディアです。

『こちらは、ユーランディア少尉。アレーテ中尉、ボワテ大佐から出撃の許可が下りました。これから、中尉の支援へと向かいます。敵位置の詳細な情報を教えてください……こちらは、サテライト群のクラッキングによる通信妨害を受けています……』


 ユーランディアから、シエスタに向かってショート・メッセージが送られてきた。

 混戦の最中、サテライト群を介した通信は妨害されることも多いのである。

 そんなときには、ローカル・ネットを使ったショート・メッセージのほうが通りやすい。

 シエスタは、(やっとか!)と思った。

 即座に返信を返す。

『敵ビッグマンは、現在カッラーダ地区に展開している。市街地にも多くの被害が出ている。至急合流されたし』

『了解しました。機体をそちらに向けます……』

 それから、数秒である。

 シエスタの見上げる頭上に、クオンティティーの影が現れた。

 旋回半径数秒で、市街地の上空を飛行している。

 クオンティティーの飛行灯が瞬いた。

 シエスタは、(やった!)と思う。

 眼下では、レファイン=ヴァルデスとネラのヴェガが、悠然と歩いている。


『まずは、敵の無人機をクラッキングしろ。自爆攻撃をしかける。それでなくても、敵無人機の攻撃は激しい!』

『了解しました。数秒待ってください……』

 ユーランディアが、敵無人機群の戦術AIをハッキングして、位置を特定する。

 それから、戦術攻撃目標を味方であるはずのジェマナイのビッグマン──に入力。

 敵、オルリヌイ・ルーチは攻撃目標を、レファイン=ヴァルデスとネラのヴェガに定めた!


 しかし……攻撃はうまく行われない。

 オルリヌイ・ルーチの攻撃目標はふたたび、シエスタたちのイングレスαに。

 敵、ジェマナイも統合戦線のクラッキング攻撃に対する防備を備えてきたらしい。

 バックドアのさらにバックドアから、攻撃目標の是正が行われる。

 シエスタ機とフィオリヒト機にむかって放たれる、ミサイル。

 シエスタは、(あっ!)と息を飲んだ。

 翼の数十センチ先をかすめる、敵ジェマナイのAAM。

 そのまま、高層ビルに向かって突入していく。

 爆発する、商業ビル。

 シエスタは、「畜生!」と、コックピットのなかで叫んだ。


『ユーランディア少尉、失敗した。敵はクラッキング攻撃を受け付けていない!』

『こちらでも把握しています。今、さらなるバックドアを探っているところです』

『早くしてくれ。敵ビッグマンの進軍速度が速い。このままでは、タージ基地がやられる』

『分かっています。数秒ください』

 ユーランディアは、コンソールを高速で操作して、敵をクラッキングできるバックドアがないかどうかを探す。

 敵、ジェマナイの兵士にはネオス(子ルーチン)が多いとは言え、人間のパイロットもいるはずだ。

 それならば、つけいる隙もある!!!


 ユーランディアは眉根を寄せた。

 ネット上の欺瞞情報を排除し、空白領域で敵の行動を把握する。

 まっさらになったデータベースのなかで、敵の位置を特定し、その戦術コンソールをハッキングする。

 何機かのスホーイが、検索にひっかかった。

 自爆攻撃をしかるように、AIをクラッキング。

 しかし、それらのスホーイは敵ビッグマンには向かわず、上空で旋回行動を取った。

 そのまま、前進基地であるセラフィスへと帰投していく。

 クラッキングは失敗したのだ。

 いや、敵の数機を無力化できただけでもいい。

 ユーランディアは焦っていた。しかし、それ以上に真剣だった。

 これ以上、味方を危機にさらすことはできない……先ほどのボワテ大佐の叱責が、ユーランディアの心にも響いていたのだ。


 そんな攻防を続けているうちに……敵ビッグマンはタージ基地へと迫る。

 イラク陸軍の戦車隊がそれを迎え撃つ。

 しかし、そのうちの数両が敵ビッグマンによって撃破される。

 立ち上る爆炎。

 バグダッドの夜空が赤く染まる。


 シャダム・アルリク大佐は、「くそが! くそが!」と繰り返していた。

 このように激しいジェマナイの攻勢は、このところなかった。

(ライジングアースが帰ってくるというこの時に……いや、この時だからこそか!)

 ジェマナイも捨て身の攻勢をしかけてきているに違いない。

 市街地を悠然と進んでいく、9体のビッグマン。

 タージ基地ばかりでなく、バグダッド国際空港も苛烈な攻撃にさらされている。

(南の部隊は、ジェマナイの攻撃を防げているのだろうか……)

 アルリク大佐は、バグダッド国際空港に展開している部隊のことを慮る。

 そちらには、ガーズィー・バサンやナギーブ・ネシンの部隊が展開しているはずだった。

 このところ連絡は取っていなかったが、信頼に値する兵士たちである。


 ──


 シエスタ・アレーテは、敵ビッグマンにリードル・ワイヤを撃ち込む。

 これは、捨て身の攻撃でもある。

 敵本体にワイヤを巻き付けて、先端に装備されたクラッキング・キーウィからクラッキング攻撃をしかける。

 しかし、直近まで近づかなければ、十分な戦果は発揮できない。

 フィオリヒト少尉も、リードル・ワイヤを射出した。

 こちらは、ネラのヴェガへと向かっていく……

 しかし、ビッグマン本体へとからみつく直前で、ミサイルによって妨害されるクラッキング・キーウィ。

(直前で躱された!!!)

 シエスタは歯噛みした。

 敵ビッグマンは、今タージ基地の目と鼻の先である。

 ここで劣化ウラン弾でも撃ち込まれたら……


 戦慄するシエスタ。

 やはり、空軍戦力だけでは、敵ビッグマンの攻撃は防ぎきれないのか……

 なら、アルリク大佐はどうだ……?

 また、メーザー砲でヴェガを撃退してくれるか……????

 しかし、そんな都合の良い防備というものはなかった。

 徐々に、ヴェガ2体に押し切られていく、イラク陸軍の車両たち。

(くそっ! 今わたしたちが、ヴェガを防ぎきらなければ……)

 シエスタは操縦桿を握りながら、こめかみを抑えたそうにする。

 高速でコンソールを操作して、ユーランディアに通信。

『敵ビッグマンを直接クラッキングすることはできないか? 敵はタージ基地の目前まで迫っている』

『できるかもしれません。ですが、数秒ください。敵に欺瞞情報を送ります』

『何をするんだ?!』

『ライジングアースが到着した、という情報を送るんです。それで、ひるむかもしれません』

『そうか!? やってくれ!』

 シエスタは通信を切った。

 あとは、ユーランディア少尉に任せるしかない。


 と……レファイン=ヴァルデスのヴェガが上空に向かってミサイルを撃ち始めた。

 上空には──何もいない。

 ユーランディアのクラッキングが成功したのだ。

 架空の敵に向かって攻撃をする、レファイン=ヴァルデスのヴェガ。

 シエスタは唖然とした。

 そして、ユーランディアはほっとした。

 敵、ヴェガの足が止まる。

 レファイン=ヴァルデスの機体だけでなく、ネラの機体までもが、上空の虚空にむかってミサイルを放っている。

(よし、これでいける! 時間が稼げる!)

 とシエスタは思った。

 ……

 その瞬間にも、アマラ少尉のイングレスαは、シエスタたちに合流しようと急いでいた。


「おまたせしました、アレーテ中尉。これで3対2です!!!」

 突如として、そんな通信が入った。アマラ少尉である。

 サテライト群への妨害のあいまをぬって通信をしてきたのだった。

「おお、アマラ少尉!」

 シエスタはコックピット内で叫んだ。

 今、敵のヴェガとタージ基地は目と鼻の先である。

「貴官は、AAMで敵ビッグマンをけん制してくれ! わたしとフィオリヒト少尉は、再度敵ビッグマンにクラッキング・キーウィを撃ち込んでみる!!!」

アマラ少尉も合流しました。

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