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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第九部

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179/203

179.暁の攻撃(1)

レファイン=ヴァルデスの攻撃。

 レファイン=ヴァルデス三将は焦っていた。

 リュシアス様の帰還を待つまでもなく、この攻撃である。

 それに先立って、アジンバル公国からの出向部隊、タルタロス部隊が撃破された。

 アマレス、シズマ=ローク、マーシャ・ツヴァルの3人である。

 彼らは、命令無視、というか先走りをして、統合軍の攻撃にさらされた。

 彼らの機体は、今バグダッド東の砂漠で回収を待っている。

 セラフィスの人員も限られているのに……と、レファイン=ヴァルデスは思う。

(くそっ! ジェマナイはどうしてこうなんだ!)


 今、ジェマナイには9体しか稼働できるビッグマンがいない。

 自分とネラのヴェガ2体。

 ヴェガⅡが4体。ヴァレリテ、カリュクス、オルガ、およびピエタの機体だ。

 それから、ノルニール、リントヴルム、サロメ。これらは、アーシャ・ロウラン、コバルトレオ、ニクス=EAの機体である。

 今、この部隊で一番先頭に立つ士官は自分である。

 攻撃の連携は、自分が取らなくてはならない。

 いまだ、リュシアス一将からの連絡はない。

 これは、想定外だった。

 ジェマナイ陸軍の支援を受けられるとは言え、その戦力は限られている。

 アジンバル公国から出向しているグリペンネオの部隊もいる。

 しかし、もしもライジングアースが出てきたとしたら……

 例のユーマナイズで味方の戦力が一気に削られてしまわないとも限らない。

 自分に課せられた使命は、深刻であり重要だった。


 レファイン=ヴァルデスは、一歩を踏み出した。

 これから、全面攻撃である!


 ──


 シエスタは、眠ったばかりのところをまたたたき起こされた。

 今、ジェマナイのビッグマン部隊がバグダッドに向かっている。

 暁の全面攻撃である。

「ちぇっ! なんだってんだ!!!」

 シエスタは、ベッドから起き上がって、そんな言葉を吐き捨てる。

 枕もとの通信機で、フィオリヒト少尉、アマラ少尉に連絡を取った。

 彼らもすでに起きている。

 出撃だ! 迎撃戦である。

 ライジングアースとプライムローズは、まだバグダッドに到着していない。


 ──


 バグダッド市街は、ジェマナイのビッグマン部隊による砲火にさらされた。

 すでに、バグダッドは市街地の20%が壊滅されている。

 今回の攻撃地点は……どこだ?

 敵は、バグダッド国際空港とタージ基地を重点的に攻撃してきているように思える。

 しかし、市街地の繁華街も目標になっているようだ。

 敵の目的はやはり、市街地の破壊なのか?

 バグダッド市民は戦慄した。

 空襲警報が鳴り響く。

 夜空に、火線が瞬く。

 次々に破壊されていくビル。

 爆散する商店街の窓ガラス。

 バグダッドは、数日ぶりに苛烈な戦禍にさらされていた。


 バグダッド市街の高層ビルに設置されたアル=ナスル砲は、ビッグマンに向けてミサイルを放った。

 エニグマムスタング2の部隊も、対空砲火を放っている。

 しかし、敵ビッグマンの姿は見えない。

 長距離からの砲撃を放っているのだ。

 敵……ジェマナイは、ここ数週間慎重な攻撃をしかけてきている。

 イラク陸軍の猛烈な攻勢に、慎重を期しているのだ。

 敵の姿が見えないなかで、ミサイルの火線だけが飛び交う。


 ──


 レファイン=ヴァルデスは、今ネラとともにイラク軍のタージ基地へと向かっていた。

 ヴォルガ二将が攻撃の拠点としていた、敵基地である。

 ここには、イラク空軍および統合軍の空軍が終結している。

 最初に叩くならば、ここだ。

 しかし……

 レファイン=ヴァルデスは焦った。

 敵イラク陸軍の大部隊がここには終結している。

 その対空砲火はすさまじかった。

 上空で何機ものスホーイが爆散する。

 レファイン=ヴァルデスのヴェガは、地上からミサイルを叩き込むが、それも空中で撃墜されてしまう。

 敵AIの性能も優れているのであろう……

 上空にはイングレスαが舞っている。

 これでは、地上と空中から挟撃されないとも限らない。

 レファイン=ヴァルデスは、ネラに通信する。

『敵部隊の抵抗は激しい。ここは無理をせずに、対空装備だけを破壊することにつとめよ。イングレスαの破壊は後だ……』

『了解です』

 レファイン=ヴァルデスの指示は的確だった。

 味方のスホーイ、あるいはアジンバルのグリペンネオの支援を待つのが正しい。

 双方ともに総力戦だな……と、レファイン=ヴァルデスは思った。


 ──


 イングレスαの機上で、シエスタはふたたび舌打ちをしていた。

(くそっ! 敵の砲火が激しい……今日このタイミングでバグダッドに攻撃をしかけることを、ジェマナイは図っていたのか……?!)

 敵のビッグマンはバグダッド市街を悠然と進んでいく。

 単騎であれば、まだ良い。

 しかし、上空にはスホーイとアジンバル公国のグリペンネオも展開している。

 地上だけに気を取られていたら、上空の敵にやられるだろう。

 シエスタは、注意力を全開にした。

 NooSからの情報入力も参照する。

 それによると、味方1に対して敵の数は1.4という報告だった。

 バグダッドの上空から、敵空軍戦力を追いやるだけで、精一杯だろう。

 シエスタは、STSMを活用して、敵ミサイル群を撃ち落としていく。

 しかし、本命のビッグマンや敵戦闘機を攻撃するのには、一手遅れている……


(ライジングアース、いつ来てくれるんだ!?)

 と、シエスタは再び思う。

 ライジングアースのコパイロットは、今斎賀ではない。

 しかし、その戦力は貴重だ。

 ジェマナイが全面攻勢をかけてきているのであれば、ライジングアースが存在しないことは、かなりの不利になる。

 それに、クオンティティーのユーランディアは謹慎を強いられている。

 こんなときに……ボワテ大佐は何を考えているんだ、とシエスタは憤る。

 今その瞬間にも、シエスタ機の側面を敵のAAMがかすめた。

 すんでのところで躱す、シエスタ。

 そのミサイルは、バグダッド市街のビルに向かっていって、その中層階に命中した。

 がらがらと崩れ落ちるビル……くそ、また廃墟が一つ増えたか!!!


 シエスタは、タージ基地に通信する。

『ボワテ大佐、今すぐQR‐Xを出撃させてください! 謹慎なんて言っている場合ではありません!』

 その通りだった。

 このまま行けば……バグダッド市街の大部分が破壊される。

 これほど大掛かりなビッグマンによる攻撃は、このところなかったのだ。

 タルタロスの破壊だけでは、不十分だった。

 手遅れになる前に、ユーランディアの援護を請わなくてはならない。

『了解した。すぐにユーランディア少尉を出撃させる。それまで、なんとか持ちこたえよ』

 言われなくても分かっている──と、シエスタは思った。

 敵はやる気をだしている。……ここで粉砕しなければ、統合戦線にとって決定的に不利な状況が訪れるだろう。


 ──


 レファイン=ヴァルデスは、(うまくいっている!)と思った。

 夜の部隊を朝方の攻撃に回した成果が出ている。

 ビッグマンとスホーイ、グリペンネオとの連携も取れている。

(今、ジェマナイは統合軍とイラク軍を押している……これで、敵拠点に決定的な打撃が与えられるだろう……)

 リュシアス様が帰っていなくても……と、思うと同時に、一将は無事だったのだろうか、という懸念も胸に萌す。

 リュシアス一将からセラフィスへの通信はいまだに届いていない。

 ライジングアースを無事足止めできたのか、あるいは、万が一のこととは言え、撃墜されたのか……

 しかし、一将が敗れ去ったとしても、ジェマナイはジェマナイである。

 作戦は予定通りに遂行しなくてはならない。

ある意味ジェマナイの二正面作戦ですね。バグダッドが襲われます。

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