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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第九部

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171/203

171.ライジングアースVSブラックスワーンダー(3)

引き続き、ライジングアースとブラックスワーンダーとの戦闘です。

(少尉、僚機のプライムローズに、上空1万フィートほどまで退避してくれるように伝えてくれないか?)

 セラフィアが高速の思念通信で伝える。

(どうするの?)

 と、ミューナイト。

(やはり、ユーマナイズを使う。ブラックスワーンダーをなんとしても無力化したい。味方になるかは分からないが……)

(分かったわ。ダレンザグ中尉に通信する!)


 それまでの敵を味方につける、というこの武器──ユーマナイズ。

 その恐ろしさを、ライジングアースのコックピットではセラフィアが、ブラックスワーンダーのコックピットではリュシアスが改めて再確認していた。

 しかし、ブラックスワーンダーのリュシアスには余裕がある。

 南極戦線で、ライジングアースの戦闘データはとってある。

 そのうえでの、反転場量子フィールドの搭載である。

 ブラックスワーンダー単騎であれば、ユーマナイズの影響は防げる、と踏んでいたのである。

 しかし、そのことをライジングアースのミューナイトとセラフィアは知らない。

 今、戦況がどんな局面に向かったとしても、実はその中心はブラックスワーンダーのリュシアスの手にあったのである。

 仮面の下で、静かな微笑をリュシアスは浮かべた。


 ミューナイト少尉の通信によって、ダレンザグの駆るプライムローズは上空へと退避していく。

 それを、数機のスホーイが追った。

(この状況なら、リュシアス様をユーマナイズすることができる!)

 と、セラフィアは思った。

 それが、リュシアスを味方につけることになるのか、あるいは自死に追い込むことになるのか、セラフィアには分からなかった。

 しかし、この状況でそんなことは考えておくべきことではない。

(自分は、ジェマナイの作り出したこの「ライジングアース」というシステムの機能に従う)

 という思いが、セラフィアの胸にはあった。

(リュシアス様は、リュシアス様だ。しかし、この状況では自分すらジェマナイの駒なのだ……)

 そう考えて、自分を納得させた。


(ええい、ままよ!)と、セラフィアは思った。

 高度1500フィート、2000フィート、2500フィートへと上昇していくプライムローズ。

 その間には、やはり敵と味方との間でミサイルが飛び交っていた。

 ダレンザグ中尉からは、『了解しました』というショート・メッセージだけが入った。

 完全に連携は取れていたのである。

 今、ライジングアースの目の前には、ブラックスワーンダーだけが空中に屹立している。

(リュシアス一将、勝負です!)

 と、セラフィアは心のなかで叫んだ。

 ライジングアースの、胸部のW型のユニットが発光を始める。

 ユーマナイズの起動兆候だ。

 ライジングアースのすべてのエネルギーが、胸部のユニットに注ぎこまれていく。

(ミューナイト少尉、やれ!)

 セラフィアの思念通信が叫んだ。

 ミューナイトは耳を抑える。


 瞬間──

 ライジングアースの胸部ユニットが発光した。

 まばゆい光と、音響があふれ出す。

 その波に包まれていく、ブラックスワーンダー。

 しかし、何かが違った。

 ブラックスワーンダーを中心点として、球形に生まれた波。

 それが、ライジングアースのユーマナイズを飲み込んでいく。

(あっ)と、セラフィアは思った。

(リュシアス様は、ユーマナイズへの対抗策を編み出していたのだ!)

 しかし、その反応はすでに遅かった。

 光の渦のなかから、斬り込んでくるブラックスワーンダー。

 ライジングアースのハイ・フリークエンシー・ソードが震えた。

 両者は今、ふたたび斬り合っている。


 ブラックスワーンダーのコックピットのなかで、リュシアスはにやりとした微笑を浮かべていた。

 ……が、その詳細は仮面の下に隠れていて分からない。

 しかし、「たしかにこれが勝利だ」という手ごたえが、リュシアスにはあった。

 反転場量子フィールドが、ライジングアースのユーマナイズを無力化したのである。

(これさえ防げていれば!)

 と、リュシアスは思う。

 しかし、その認識も甘かった。


 ハイ・フリークエンシー・ソードで、ブラックスワーンダーに斬りつけるライジングアース。

 光と光、量子と量子とが、ふたたびさく裂した。

(リュシアス様、あなたはわたしの前に立ちはだかるのですか???)

 セラフィアは思う。

(甘いな、セラフィア。わたしはいつだってお前の半歩先を行っている)

 リュシアスも、無言のなかで思考する。

 ミューナイトは、

(ユーマナイズが効かなかった??!)

 と、愕然としていた。


 実は、セラフィアにとっては予想外ではなかった。

 南極戦線でライジングアースに対峙したその時から、ジェマナイの側ではユーマナイズに対する対抗策を用意していた。

 要は、ユーマナイズにしても物理攻撃である。量子場を操作することで、相手の心理を書き換える洗脳兵器だ。

 その物理を無効化してしまえば良い。

 音と光の波をゼロにすること、それが課題だった。

 ブラックスワーンダーは、それを成し遂げたのだ。


 ブラックスワーンダーの攻撃は容赦なかった。

 近距離からスパイラル・カッターを射出。

 それが、ライジングアースの肩先に命中する。

 制動を失って、不器用にうごめくライジングアースの両手。

 しかし、破壊するまでには至っていない。

 ライジングアースは、ブラックスワーンダーから距離を取ったあと、ロケット・パンチを射出。

 それが、スパイラル・カッターと交錯する。

 飛び散る、火花。

 腰部ミサイルを発射するが、ブラックスワーンダーの量子なぎなたによってぶった切られてしまう。

 ブラックスワーンダーは、まさに強敵だ。


(リュシアス様、引いてください! あなたが引くことで、平和が訪れる!)

(平和だと?! 偽りの平和になんの意味があるのか!?)

 と、まるでテレパシーで会話するように、お互いの思考を交錯させる2人。

 ミューナイトは、パイロットではあったが、そこでは脇役だった。


 上空では、プライムローズとスホーイの空中戦が繰り広げられている。

 何十発ものミサイルを撃ち込んでくる、ジェマナイのSu‐77。

 しかし、それはプライムローズには当たらない。

 すべてが、ダレンザグ中尉の放ったミサイルによって撃墜される。

 低空では低空の、高空では高空の、戦いが繰り広げられていた。

 セラフィアには、再びユーマナイズを作動させる、という余裕がない。


「ふっ、やはり効かなかったな。ライジングアース! 反転場量子フィールドはユーマナイズを無効化できる!」

 ブラックスワーンダーのコックピット内で、リュシアスがつぶやいた。

 これをすべてのビッグマンに搭載できれば、ユーマナイズは恐れるに足りない。

 しかし、第2世代や第3世代のビッグマンに、この装備が搭載できるだろうか……?

 エネルギー出力の問題は?

 リュシアスもまた、高速で思考を巡らせる。

 しかし、今のところは、このブラックスワーンダーでライジングアースの攻撃を防げる!

「落とすぞ! ライジングアース!」

 リュシアスは再びつぶやく。


 量子なぎなたを再度かまえて、ブラックスワーンダーはライジングアースへと斬り込んでいった。

 再びさく裂する、光!!

 サウジアラビアの上空が、雷雨に包まれたようだった。

今更ですが、ブラックスワーンダーは、経済学用語の「ブラックスワン」の洒落です。

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