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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第九部

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169/203

169.ライジングアースVSブラックスワーンダー(1)

久しぶりのロボ戦です。

 ライジングアースは、今エチオピアの上空にいた。

 エチオピア、と言っても今は独立国ではない。

 統合戦線アフリカ機構における一州である。

 ボワテ大佐ら、統合戦線の面々は、ライジングアースがサウジアラビアの上空を通過する許可を取り付けていた。

 サウジアラビアは、未だに独立国家である。


 この時代、独立国家の数は多くはない。

 多くの国々が、ジェマナイや統合戦線アフリカ機構の連邦となっている。

 その独立国の意向は、ジェマナイや統合戦線の意志に左右されるのだった。

 サウジアラビアは、今のところ統合戦線にたいして便宜を図っている。

 すなわち、統合戦線の衛星国の1つであるのであった。


 ライジングアースは、飛行形態でプライムローズとともにバグダッドへ向かっている。

 パイロットは、ミューナイト少尉。コパイロットは、セラフィア少佐である。

 そんな彼女たちが、こんな会話を交わす。

「オーケー。サウジアラビアの上空に到達した。異常はないか、ミューナイト少尉」

「異常はない。あなたの計算通り。この軌道を通って良かった。敵は今のところ見当たらない……」

「見当たらない、か。サテライト群はすでにクラッキングされているのだろう? そのデータはあてにならない」

「そうね。でも。サテライト群も大量のデータの処理には反応してくる。もし敵の大部隊が来ているのだとしたら……」

「それはないな」

 セラフィアは断言する。

「もしそうなら、サテライト群が反応している。それに、今アルスレーテをビッグマンの大部隊が襲ったところで、意味がない」

「意味がない?」

 ミューナイトは首を傾げた。

「そうだ。意味がない。アルスレーテはたしかにジェマナイにとって、敵国の首都だ。しかし、首都を落とせば戦争の終結とはならない。敵は、さらに分散して抵抗を続けるだろう。今、ジェマナイは敵人民の破壊を望んではいない。味方についても同様だ」

 それは、微妙な言葉だった。

 ミューナイトは訝った。

 ジェマナイは、アルスレーテの破壊を望んではいない?

 だとしたら、その戦いの目的はなんだろう?

 やはり、統合戦線の市民に威圧を与えることか?

 それであれば、その衛星国であるイラクを攻撃するということにも、納得がいく。

 自分たちは、今どんな攻撃への、どんな対処をしようとしているのだろうか?

 ミューナイトはそのAI脳で高速に演算する。


 しかし、そこで出てきた答えは意外なものだった。

 敵──ジェマナイは、ライジングアースとの戦いだけを望んでいる。

 ミューナイトははっとした。

 自分が、そこに関わる重要なファクターであったからである。

 そこに──人間は介在していない。ミューナイト……彼女と、セラフィア、同じくネオスである彼女との戦い。

 その挙動に、ジェマナイが注目している?

 だとしたら、ジェマナイは彼女たちを見逃すのではないだろうか? そんな予感さえした。


 ──


「セラフィア少佐。わたしたちは、今サウジアラビアの上空にいる。ここで、敵が出てくるとしたら、それは誰だと思う?」

 ミューナイトは、上官や部下といった区別を抜きにして、セラフィアに尋ねた。

 セラフィアは、今ライジングアースのコパイロットである。

 ライジングアースの横には、プライムローズが並走している。

 そのパイロットは、ダレンザグ中尉である。

 彼は、自分たちにたいして強力な味方になる。

 しかし、戦争とは所詮、多勢に無勢である。

 敵の大部隊が出てきたら、なすすべはない。ユーマナイズでも使わない限り。

 今、ダレンザグ中尉はミューナイトたちとは距離をおいて、1マイル圏内を飛行している。

 それも、敵の集中攻撃を防ぐためである。

 敵は何が出てくる? ビッグマン? それはたしかだ。それにスホーイか? オルリヌイ・ルーチか?

 ミューナイトは、いつになく緊張するのを感じた。


 ──


 前進基地セラフィスを、ブラックスワーンダーは数機のスホーイとともに発進した。

 援護は、リュシアス自身が望んだ。

 ビッグマンの援護は要らない、とリュシアスは先の作戦会議にて宣言した。

 しかし、数機のスホーイをつけてほしい、と。

 もちろん、リュシアスはジェマナイの戦争における最上位の幹部である。

 彼女が言うことは、即座に裁可される。

 が、彼女は皆の同意を望んだ。


 ビッグマンの部隊は、バグダッドの攻略にむける(そちらも逼迫していたのだ)。

 そして、自らは単騎スホーイとともにライジングアースの撃破に向かう。

 それが、リュシアスの作戦だった。

 いささか傲慢に見えないかと思えないこともない。

 しかし──リュシアスの慧眼をレファイン=ヴァルデスは信じた。

 彼女は──ライジングアースという兵器が恐ろしい武器だということを知っている。大量破壊兵器である。

 ライジングアースは、子ルーチンたちの心を侵食する。

 そして、戦局を一気に変えてしまわないとも限らない。

(一将には、なにか作戦があるのだろう……)


 その通りだった。

 ブラックスワーンダーは、ユーマナイズを無効化する反転場量子フィールドを装備している。

 レファイン=ヴァルデスは、そのことは事前の説明で聞いていた。

 だとすれば、不確かな自分たちが出撃して敵の味方となるよりは、敵に敵として対峙するブラックスワーンダーに任せたほうが良い。

 今、ジェマナイは粒子気化爆弾などで、敵を威嚇できる状況にはないのである。

 局地戦の積み重ね、それでしか勝利を得ることはできない。

 だとしたら、ブラックスワーンダーにはなんとしても勝ってもらわなくてはいけない。

 すべてのビッグマンに反転場量子フィールドが装備されるのは、バグダッド戦線が落ち着いてから。

 まさに、時間との戦いなのである。

 そんな冷静な判断も……レファイン=ヴァルデスには可能だった。

 だからこそ、リュシアス一将に任せる。

 ジェマナイの演算結果に、すべての運命をゆだねる。

 この戦いは、見事ジェマナイが勝利してこそ、意味を持つ戦いなのだった。すくなくとも、彼レファイン=ヴァルデスには。


 ──


 視界に、輝点が光った。ブラックスワーンダーだ。

 その機体のデータは、南極戦線でライジングアースの中枢コンピュータに蓄積されていた。

(来ます、少佐!)

 ミューナイトが、思念通信でセラフィアに伝える。

(分かっている。ブラックスワーンダーだ。たぶん、リュシアス一将だろう。わたしたちを、無事にバグダッドへは到達させないつもりだ!)

(どうするの?)

(もちろん、討つ。今ここで決着をつける)

(あなたって、結構血の気が多かったのね?)

(わたしは生まれて以来、ずっと軍人として生きてきた。意外だったか?)

(意外じゃない。でも、頼もしいとは思ったの。敵の、ブラックスワーンダーを撃破しましょう?)

(敵の……か。わたしにとっては、かつての味方だ)


 ミューナイトは、そこで言うべき言葉にとまどった。

 セラフィアが、未だにジェマナイへの忠誠を有しているのでは、と迷ったのである。

 しかし、セラフィアにそんな迷いはなかった。

 今、彼女は世界の行く末だけを気にしている。

 ジェマナイという一つの生物的な器官の末端がどう思考しようと、その決断にたいしてセラフィアは関係がなかった。

 この世界の理想を実現させるだけである。


 ブラックスワーンダーから、ライジングアースにたいして、数発のミサイルが発射されてきた。

 こんな攻撃であれば、ロケットパンチや腰部ミサイルで防げる。

 しかし、セラフィアは沈黙していた。

 ミューナイトがいらだって言う、「少佐、指示を!」

「ただ、躱せ! ブラックスワーンダーとの戦闘は持久戦になる!」

 その時のセラフィアの決然とした表情を、パイロット席にいるミューナイトは見ることはできなかった。

ここからしばらくビッグマンと統合軍の戦いが続きます。

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