第124話 王都にはこのようなものがあるのですか!
「あい! たべる」
すりつぶしたお肉をノエルの前に出してみると、美味しそうに食べています。
どうやらミルク以外も食べられるようです。
「喋ったのじゃ! 可愛い声なのじゃ!」
その姿をみたシャロンさんが、喜んでいます。そうですよね。成長が早いですよね。
そしてクロードさんと言えば、既に二時間ほど自分でお肉を焼いて食べるというのを繰り返しています。
魔女の島の夜が明けてきました。
ということは、王都は夕刻になっていると思います。
「シャロンさん。また朝になってしまいましたが、怒られませんか?」
恐らく周りの人達に心配されているとおもうのです。朝帰りというのはいただけないかと。
「大丈夫なのじゃ!」
それは根拠が何もないような気がします。
「でも、最近父上が口うるさいので帰るのじゃ! また遊びにくるのじゃ!」
そう言ってシャロンさんは、飛竜に乗って帰っていきました。
これは、シャロンさんのお父様に会ったときに怒られそうですわ。でも、私が来て欲しいと……いいえ、シャロンさんには助けられていますので、ご挨拶する機会があれば、謝罪をいたしましょう。
そして、未だに手が止まらないクロードさんに近づきます。
「クロードさん。もうこちらで夜が明けます。本を探すのは明日にしましょう」
日が暮れれば普通のお店は閉店してしまいます。もし開いている本屋があっても、そこは普通の本屋ではないでしょう。
「いや、もう食べ終わる」
そう言ってクロードさんは手に持っているお肉の塊を口の中に突っ込んでいます。あの、別にあと三日あるのです。
急がなくていいと思います。
「シルヴィアとのデートなんだからな」
ですから、別にデートにこだわらなくてもいいと思います。
はぁ、夜が明るいです。
外に出ると空には星が浮かんでおり、今日は月が見えません。ですが、この王都には暗い夜も明るく照らす魔道灯が、あちらこちらに設置されているのです。
私の目から見ると、全体的にもやっていますがね。
「受付の人がこの辺りだと言っていたのだが……」
クロードさんがキョロキョロして目的のお店を探しています。
夜遅くまでやっている本屋を、宿泊施設の受付の方に聞いてみたのです。
すると思っていたより大通りにお店があるというので、内心ホッとしてここまで来たのです。
しかし、教えられた場所には本屋らしきお店がありません。
「シルヴィア! 屋台がある!」
え? まだ食べる気なのですか?
下町の大通りなので、人通りが多く、夕食の時間なのもあり、屋台や店に人が出入りしています。
それに目が行ってしまったのでしょう。
「クロードさん。本はいいのですか?」
「デートだからどちらでもいいが、シルヴィアは何が食べたい? まだ何も食べていないだろう?」
何が食べたいのかと質問されましたが、クロードさんの大量のお肉の前に胸がいっぱいになってしまったのです。
しかし、甘いものなら食べられるかもしれません。
そう! 今まで町にあまりよらなかったので、私には甘い物が足りないのです。
「あ……甘い物が食べたいです」
「そうか。それじゃ、あそこはどうだ?」
そう言ってクロードさんに手を引かれました。外套のフードがずり落ちないように支えながら、足を進めます。
フードの中にはノエルが寝ていますからね。
「アイスクリームの屋台がある」
「え? あのアイスクリームって屋台があるものなのですか!」
クロードさんに連れてこられたところは、一台の屋台でした。その屋台にはいくつかの金属の蓋のようなものがみられるだけで、あのアイスクリームがあるようにみえません。
「どれがいいんだい?」
私が怪しんでいると屋台の男性がどれがいいのかと聞いてきました。
私は意味がわからず首をかしげます。
「シルヴィア。バニラとチョコレートとレレリエのシャーベットもあるな。それから……」
「シャーベットってなにですか! あとチョコレートのアイスクリームってあるのですか!」
私は驚きのあまりクロードさんに詰め寄ります。
シャーベットって聞いたことがありませんけど、アイスクリームと同じようなものなのですか? それも高級果実のレレリエですよ!
「店主。全種類くれ」
「あいよ」
クロードさんが笑いながら注文しましたが、私はたくさんは食べられません。
「クロードさん。私は全部は食べられません」
「でも食べたいのだろう?」
「うっ……食べたいです」
エルン亭でアイスクリームを出してくれましたが、一種類しかありませんでした。それがここでは五種類もあるのです。
もちろん興味はあります。どのような味なのかと。
「あそこに、テーブルがあるからゆっくり食べていくといい」
屋台の店主は近くのテーブルを指して言ってくれました。どうやら屋台のものを食べる場所がところどころにあるようです。
そして、私の反応から初めて王都に来たおのぼりさんだと、わざわざ食べる場所を教えてくれたようでした。
私の手には食べられるというカップに入れられた白いアイスと茶色のアイスがあります。
このアイスクリームが入っているカップまで食べられるなんて、王都は凄すぎますわ。




