短冊
着替えを終える前に、大地さんに電話をかけた。
「今夜のシフトについて相談があるんですけど」私は言った。「五時からじゃなくて、八時からにできませんか」
電話の向こうで一拍の間があり、それだけで答えは分かった。「五時から九時がうちの一番忙しい時間帯なんだよ、佐藤。ただでさえ人手が足りないのに」
「分かってます。個人的な事情なんですけど——今夜、妹をお祭りに連れていくことになっていて」
「今夜はみんなお祭りなんだよ。それが問題なんだ」彼はため息をつき、考えているのが伝わってきた。「こんな夜に三時間分の穴を空けるわけにはいかない」
「その分は、十二時まで働きます」私は言った。「必要なことは何でもします」
もう一度、今度は短い間があった。「……分かった。八時から十二時。後悔させるなよ」
「させません」
電話を切ったあと、まったく戦術的でも何でもないことを、うまく交渉できたという、不釣り合いなほどの満足感があった。
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階下では、陽菜がすでに準備の真っ最中だった。居間に立ち、母が帯を後ろから整えている。何度もこの作業をしてきた人間特有の、慣れた辛抱強さで。浴衣は深い青地に、私にはうまく説明できない、淡い花の柄が入っていた。
「動かないで」母が帯の一部を整えながら言う。
「動いてないよ」
「そわそわしてる」
「*息をしてる*だけだよ」
私は戸口に寄りかかって、それを眺めていた。ほかに自分を置くべき場所もなかったし、その家庭的な騒がしさには、どこか静かに心地よいものがあった。
数分後、外に車が停まった——低く、鋭角的な、明らかに買い物用ではない車だった。晶が降りてきて、慣れた様子で鍵を一度手の中で放り投げた。
「それ、ランサーエボか?」私は尋ねた。
「エボ3」彼はまるで天気の話でもするように言った。「兄貴の車。週末にアマチュアのタイムアタックに出してるんだ。今は出張中だから借りてきた」
「借り物の車に対して、それはかなりの信頼だな」
「俺のほうが、あいつ自身よりあいつを信頼してるくらいだよ、正直」彼は肩をすくめて運転席に戻り、私はそれ以上詮索しないことにした。
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晶が車を停めたあと、私たちは祭りの入口近くでほかの皆と合流した。通りはすでに提灯の明かりと、どこからか漂ってくる焼き物の匂いで満ちていた。次郎と比呂が先に到着していて、すでに何かで言い合っている。颯太はその後ろを、少し顔色が悪いながらも「大丈夫だ」と言い張りながらついてきていた。比呂はすでに今夜二回は「無理するな」と言い聞かせたらしい。
それから、涼を見た。
濃い紫の浴衣を着て、髪をまとめ、こちらを振り向く拍子に何本かのほつれ毛を耳にかけていた。その瞬間、およそ二秒間、私の頭はまともな思考を一つも生み出せなかった。
「似合ってる?」彼女は自分の姿を見下ろし、それから私を見て、答えを待った。
「それは——」私は言いかけて、完全に言葉を見失った。「似合ってる。よく似合ってるよ」
彼女は満足そうに微笑んだ。ちょうどそのとき、次郎が、私たちが少し皆から離れて立ち、それ以上何も言わずにいることに気づいた。
「はいはい、みんな、この恋人たちに space をあげようぜ」彼はグループの規模に対して不釣り合いなほど大きな声で言った。
私たちはほぼ同時に、同じ速さで顔を赤くした。私は下手なりに、話題を一番近くの屋台へと逸らそうとした。
少し後ろにいた佳奈恵は、いつもより静かになっていて、それに晶も気づいたようだった。
「今日、いつもより静かだな」彼は言った。
「大丈夫だよ」
「大丈夫そうに見えないけど」
「あなたも、人のことに首を突っ込まない分別があるようには見えないけど」
「お前ら二人、いいコンビ芸になりそうだな」次郎が嬉しそうに言う。
「黙ってて、次郎」二人は同時に、まったく同じ苛立ちを込めてそう言い、それが比呂をさらに笑わせた。
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そのあとの時間は、この五人以上が集まるといつもそうなる、あの緩くて騒がしい混沌の中に溶けていった。次郎は金魚すくいに挑戦して見事に失敗し、自分の腕ではなくポイのせいにした。比呂は射的で一発目から勝ってしまい、それが次郎の個人的な誇りを傷つけた。私たちは誰もが必要以上に食べた——焼き鳥、薄い生地に包まれた甘いもの、颯太が買って数分もしないうちに自分のシャツにこぼしたかき氷。
陽菜は、ただこの輪に加われたことが嬉しいらしく、ゲームからゲームへと駆け回るその元気さに、私たちのほうが疲れて見えるくらいだった。
どちらからともなく、涼と私は少しずつ皆から離れていった——遠くまでではなく、ただ周りの騒がしさが和らぐ程度に。
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やがて祭りの静かな一角にたどり着いた。何本もの長い竹が、提灯の連なりの下に飾られている。何百枚もの色とりどりの短冊がそこから垂れ下がり、夕方の風が通るたびに、わずかに揺れていた。
涼が足を止めた。「短冊だ」
私はその紙を見た。「知ってる」
彼女は横目でこちらを見た。「そうでしょうね」
「七夕については読んだことがある」
「読んだことと、やったことは違うよ」
近くのボランティアが、私たちに空の短冊と小さな筆を渡してくれた。私は自分の分を受け取った。思っていたより薄い紙だった。
涼はすぐに書き始めた。私は目の前の、まだ何も書かれていない紙を見つめた。
「何を書いてるんだ?」私は尋ねた。
彼女は手でそれを隠した。「それは反則」
「個人的な願い事だろう」
「なら、なんで聞いたの?」
「気になったから」
彼女は笑った。「それは十分な理由にはならないよ」
私はもう一度、自分の紙に目を落とした。
一瞬、答えは明白に思えた。*家に帰りたい。*それは世界で一番単純なことだった。この身体で目を覚まして以来、私がしてきたことのほとんどすべての目的だった。送信機。ラジオ。計算。届くことのない信号のことばかり考えて過ごした夜々。
それを書けばいいはずだった。
手が動かなかった。
代わりに、別の考えが浮かんだ。*もし送信機が本当に動いたら、どうなるのだろう。*
その問いは、以前とは違う響きを持っていた。半年前なら、こんなことを問う必要すらなかったはずだ。すぐに行っていただろう。迷いもなく。
今は、その言葉を書き記すことさえできずにいた。
「湊?」
顔を上げる。涼がこちらを見ていた。
「大丈夫?」
「大丈夫」
彼女はもう少しの間、私を見つめた。「さっきから、ずっとその紙を見つめてる」
「考えてたんだ」
「願い事のこと?」
「うん」
彼女は優しく微笑んだ。「教えてくれなくてもいいよ」
私はもう一度、まだ白紙のままの短冊に目を戻した。なぜか、それがかえって難しくした。
「涼は、何を願うか決めてるのか?」私は尋ねた。
彼女は首を振った。「まだ」
「もう書いてたじゃないか」
「気が変わったの」
「どうして」
彼女は竹のほうへ目をやった。「時々、本当に何を望んでいるのか、それを口にすべき場所に立ってみるまで分からないことがあるから」
私は答えなかった。その一言は、思っていたより長く胸に残った。
周りでは、人々が次々と願い事を枝に結びつけていた。丁寧な字で書かれたもの。子供っぽい絵で埋め尽くされたもの。数秒で書けてしまうほど短いもの。
私はようやく、自分の短冊を裏返した。その裏に、三つの言葉を書いた。
*知りたい。*
それが正確に何を意味するのか、自分でもよく分からなかった。おそらく、それでいいのだろう。
私はその短冊を、涼のものの隣に結びつけた。彼女は何を書いたのか尋ねなかった。私も、彼女が何を書いたのか尋ねなかった。
今回だけは、どちらも答えを必要としていないようだった。




