距離
佐藤くん
顔を上げる。木村先生が、すでに一度名前を呼んだ人間特有の忍耐強さでこちらを見ていた。
「核の温度と核融合率の関係。答えは?」
答えはすぐそこにあった——いつだってすぐそこにある——ただ、それにたどり着くのに丸一秒よけいにかかった。この教室で、そんなことは今まで一度もなかった。
「四乗です」私は言った。「おおよそ。この質量帯の恒星では」
「正解」彼は何事もなかったように黒板に向き直った。その一瞬の間に、他の誰も気づいていないようだった。
私は気づいていた。
木村先生が背を向けた瞬間、比呂が身を寄せてきた。「大丈夫か? 一瞬、心ここにあらずって感じだったぞ」
「大丈夫だ」
「今のは、カードを読み上げてるみたいな『大丈夫』だったな」
それに対する返事はなかったので、何も言わなかった。
---
授業のあと、駐輪場のところに涼と哲也がいて、何かに笑っていた。私は立ち止まらなかった。まともに見もしなかった。だが、門から体育館へ向かうまでの間に、その笑い声を、決めた覚えもないのに四回も頭の中で再生していることに気づいた。
---
それが実際に表れたのは、練習でだった。
パスを半瞬遅れて受け取った。ひどいというほどではない——ただ、来るのが*見えていた*のに、それがほとんど終わってから動き出したという、そういう遅さだった。
「佐藤」コーチが、怒るでもなく、ただ指摘した。「集中しろ」
後半、また同じことをした——今度はもっと悪く、本来なら奪えたはずのボールが目の前を通り過ぎていった。私は扉のほうを見ていたからだ。理由も分からず、誰か特定の人物がそこから入ってくるのを、半ば予期しながら。
給水所で次郎が追いついてきた。「お前、今、颯太に決められたぞ。*颯太*だぞ」
「気づいてる」
「本当に気づいてたか?」
晶は、コートを出て、二人で汗を拭き、体育館が空いていく間、何も言わなかった。
「今週ずっと様子がおかしい」彼は言った。疑問形ではなかった。
「疲れてるだけだ」
「疲れてるんじゃない。お前が疲れてるときは、もっと違う感じになる」彼はこちらを見た。「お前は普段、コート上で数学の問題を解いてるみたいにプレーする。今日は、その問題自体を忘れたみたいにプレーしてた」
「やけに具体的だな」
「よく見てるからな。小さいチームだし」彼は淡々と、責めるでもなく言った。「それで、何なんだ」
*何でもない*と言おうとして、口から出たのは「分からない」だった。
晶は一瞬、その答えに、私が何を言おうと驚かなかったであろうほど驚いた顔をした。「へえ」とだけ言い、それ以上は聞いてこなかった。それがかえって、何か言われるより気まずかった。
---
体育館の出口近くで、佳奈恵が腕を組んで待っていた。何かを演出している様子はなかった。
「ひどい顔してる」ほとんど親しみを込めてそう言った。
「ありがとう」
「何か気になることでも?」
「分からない」私はまた言った。それが、自分に残された唯一の正直な返事のように思えてきていた。
彼女は少しの間、私を見つめた。「あなたにしては、それ、本当の答えって感じね。いつもは何にでも理論を持ってるのに」
「これには、ない」
「面白いわね」彼女はそう言い、それ以上何も言わずに立ち去った。それが同情だったのか、それとも診断だったのか、私が判断する前に。
---
その夜、ピザ・ハウスでは、必要以上に自分を働かせた——すでにきれいなカウンターを拭き、片付ける必要のない箱を積み直した。
大地さんはそれを二分ほど見てから、ようやく口を開いた。
「昇給でも頼みたいのか、それとも何か悩んでるのか、どっちかだな」
「考えるより、働くほうが楽なので」私はそう言い、口から出てから、それがどれほど奇妙な言い回しだったかに気づいた。
彼は片眉を上げたが、それ以上は触れず、代わりにモップを渡してきた。ありがたく受け取った。
---
送信機は、その後しばらくの間、うまくいっていた——山で調整したアンテナがようやくきちんと動作し、読み取り値はここ数週間で一番きれいだった。十分間ほど、他のことを何一つ考えずに済んだ。
そこで電話が鳴った。グループチャットに届いたキャンパスでの写真——いつもの顔ぶれの中、フレームの端に、涼が哲也の何かの言葉に身を寄せて、二人とも笑っている。
意図した以上の速さで、私は電話を裏返した。
作業を続けようとした。同じ数字の列を三回読んだが、一つも頭に入らなかった。
道具を置き、ただそこに座った。
*馬鹿げてる、*と思う。*私は宇宙空間を飛んだことがある。人が死ぬのを見たことがある。これはただの写真だ。*
その考えは、まったく助けにならなかった。
---
晶に電話をかけた。完全に決めたわけではない——気づけば、自分の意思より先に指がその連絡先を選んでいた。
二コール目で彼は出た。「珍しいな、お前から電話なんて」
「仮定の質問がある」
「いいぞ」
「もし誰かが、大学でも、試合でも、バイト先でも、これといった外的な原因もなく集中できなくなっているとしたら、お前ならそれを何だと考える?」
電話の向こうで間があった。どう返すか考えているのが分かるくらいの長さだった。
「それは」ようやく彼は言った。「お前の友達の話か、それともお前自身の話か」
「仮定の話だ」
「湊」
「……俺の話だ」
「そうか」もう一度、短い間があった。「その『仮定の人物』には、誰か気にかけてる相手がいるのか」
「……多分」
「特定の誰か?」
すぐには答えなかった。それ自体が、もうひとつの答えになっているのだと、私は理解し始めていた。
「いる」ようやくそう言った。
「なら、何に気を取られてるのか、お前はもう分かってるはずだ」
「それは答えになってない」
「向き合ってみれば、そこまで嫌な答えでもないと分かるさ」彼が電話の向こうで笑っているのが伝わってきた。それは、彼が名前をはっきり口にするよりも、なぜか腹立たしかった。「今夜は寝ろ。明日話そう」
私が「今すぐ説明してくれ」と言う前に、彼は電話を切った。あとに残されたのは、ようやく動くようになった送信機と、暗くなった画面と、その形はもう分かっているのに、まだ名前をつけられずにいる一つの問いだけだった。




