第30鑑定 燃える帰る場所
「ゼノくん! ここを右に曲がるみたい」
ルルが嬉しそうに言う。
「流石ルルだね」
ゼノがニコニコして言うと、ルルがいつもの決まり台詞を言う。
「ゼノくんはルルが居ないと何にも出来ないんだからー」
「反論。お父様は私たちが居なくても何でもできます」
「あらあら。アイリスちゃんは嫉妬してるのね」
ルミエが口元を抑えながら微笑む。
「しっとなどしていません。訂正を求めます」
「アイリスっていっつもムキになるよなー」
ミラーがのんびりと言うと、アイリスがミラーを掴む。
「私がいつムキになりましたか?」
今、この賑やかなゼノの家族は、ルルの探し人をみんなで見つけようということで、まだアッシュも行ったことがない街を目指していた。
「本当に大丈夫なのか?」
アッシュが不安になるのも無理はない。
今、ゼノの家は誰もいない不在状態なのだから。
「別に取られる物もありませんし」
のほほんとゼノはルルの指す針を見ながら答える。
「ボクはゼノとの愛の巣が盗まれないか心配だよぉ」
シャルロットが大げさに泣く真似をして、ゼノの懐に潜り込もうとする。
「あんたはルミエの中にでも入ってろっての!」
ミラーが無理やりシャルロットをルミエの中に押し込んだ。
「ちょっと。私は便利な箱ではありませんよ!」
ルミエがミラーに怒る。
「貴様ら! もっと静かに歩けんのか!」
アッシュが更に大きな声で怒るとアイリスが言い返した。
「反論。おじ様の声も大きいです」
「誰がおじ様か!」
アッシュが唾をまき散らす。
●
――ダリア共和国。
スズラン共和国とは違った独自の文化を持つ国だ。
「土と岩で家を作っているのか……」
アッシュが驚く。
無理もない。
国の半分は高温で乾燥した土地。そして半分は氷で覆われた大地。
常識では考えられない国なのに広大で反映している。
「遠目には氷の城も見えるよ!」
ミラーが驚く。
「バカな!」
驚いてアッシュがミラーを覗き込む。
このメンバーの中で一番アッシュが驚いて興奮していた。
「砂漠の中に氷の大地だと?」
何やらブツブツ言っている。
「ルルが探している人はどこ?」
ゼノはアッシュが何やら呟いているのを無視して聞く。
「こっちだよ」
「行きますよ!」
アッシュがフラフラ氷の大地へ向かいそうなのを、ゼノが無理やりに引っ張る。
「貴様! 氷でできた城を見たくないのか!」
「そんなことよりもルルの探している人の方が大事でしょ」
「なんだと! 氷で城ができるなんて物理的におかしいと思わないのか!」
「思いません」
ピシャリとゼノが答える。
●
「進めぇー!」
軍隊が整列をしてゼノたちの家へと進軍していた。
それをはるか上空でセラは見ている。
ローレル王国はバラ王国とヒナゲシ神聖国をついに落とせなかった。
腹いせにと言わんばかりに、ローレル王国の軍隊がゼノの家へと進軍をした。
「貴様の目の前で大事な人を殺してくれるわ!」
国王がセラに放った言葉だ。
セラは国王からの命令で見ていることしかできない。
国王はまだミルクが裏切者という言葉を信じてはいなかった。
しかし軍隊の中には、もしかしたら。と思う者もいて、その軍の士気は高くなかった。
「魔道具が反撃してくるかもしれないんだろ?」
「バラ王国への進軍だってそうだ。絶対に勝てるって聞いてたから俺たちは攻めたんだ」
「敵の中には魔導人形もいるらしい」
「魔導人形! そんなのが反撃でもしてきたら勝てるわけがない!」
「安心しろ。殺戮天使が盾になるよう命令が出されている」
「本当か? 殺戮天使が犠牲になるならいいか!」
「殺戮天使がいるなら魔導人形が相手でも安心じゃね?」
こうして国王軍は半分恐れ半分意気揚々とゼノの家に到着した。
誰もいない家に火を放ち、そのまま軍隊は帰って行った。
その様子をセラは黙って見ていることしかできなかった。
ゼノが毎日作業をしていた机、ノワールがかけられていた壁、みんなが囲んでいたテーブルが炎に包まれる。
アイリスとセラが喧嘩をして破壊した屋根は結局はりぼてのままだった。
ノワールが突き刺さった穴も、シャルロットの中身が散乱していた床も、ミラーが飛び跳ねたベッドも……
セラの思い出が何もかも消えていく――
「僕はセラも家族だと思ってるんだけどなー」
セラの耳の奥でゼノの言葉が何度も蘇る。
炎は無慈悲に全てを灰にした――
「あぁ鑑定士様……何も出来ない堕天使をお許しください……」
セラの目から一粒の雫が零れ落ちた。
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