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第27鑑定 ローレル王国の動き

「ローレル王国、ヒナゲシ神聖国とバラ王国に宣戦布告か……」

 アッシュがニュースペーパーを読みながらお茶を飲む。

「む。やはり俺が淹れ方がうまいんじゃないか?」

「そんなことありませんわ。私家事には自信がありますので」

 ルミエがムッとする。

「そうだよアッシュさん。それに最近のルミエのお茶は美味しくなってきてるよ?」

「貴様らはこれからどうするつもりだ?」

 アッシュが訊ねる。

「アッシュさんが持ってきてくれた部品でルルがほとんど完成したんだ! ルルの記憶もだいぶ戻って来ててさ。今度は僕も一緒に連れていってくれないかな?」

「スズラン共和国か。いい国だったぞ」

 アッシュがスッと立ち上がる。

「アッシュさん?」

 ゼノがキョトンとしていると、アッシュがゼノの腕を掴んで無理やり立たせた。

「行くならばすぐに行くぞ。俺もちょうど必要な物があったところだ」

「私もお供します」

 カラカラとタイヤを鳴らしながらアイリスが近づくのをアッシュが止める。

「今回は貴様らは留守番だ」

「えー! 何でだよぉー!」

 ミラーがピョンピョン飛び跳ねる。

「ボクはゼノとずっと一緒にいないといけない病気なんだけど?」

 シャルロットはゼノに抱き着く。

「スズラン共和国は人間だけの国だ。能力もなければ魔道具もないし異種族もいない。そんなところに魔道具の貴様らが行ったら混乱してしまうだろ?」

 アッシュがシャルロットを引きはがす。

「ごめんね? みんないい子にしててね?」

 そう言って、ゼノとアッシュはスズラン共和国へと出かけて行った。


 ●


「報告します!」

 王との謁見の間で1人の兵士が跪く。

「広場にて魔道具所有の若い男が発見されるも、取り逃がしました。殺戮天使がその手伝いをしたとの連絡も」

「ほぅ? その男の居場所は?」

「あのゴミ溜めです」

「あぁ。この力の持ち主か。我が軍の強さを見せてやれ! 殺戮天使が主を裏切ったか」

 国王がニヤリとほくそ笑む。

「電撃鞭を用意しろ! 拷問魔道具と拷問部屋を開けよ!」

 国王の声が城中に鳴り響く。

 報告をした兵士は、精鋭を率いてゼノの家へ襲撃をする準備に取り掛かった。


「殺戮天使を呼べ」

 付き人に低い声で国王が言う。

 目の前には拷問魔道具の数々が並べられている。

 更には国王の手には電撃鞭の魔道具が握られている。

「ごきげんよう。国王様。何かご用でしょうか? あぁ。また戦争に駆り出されるのですね? それよりもその物騒な物はしまった方がよろしいですよ? 益々滑稽に見えますし、ご自身の無能っぷりをアピールしているようです」

 ペコリとセラがお辞儀をする。

 以前よりもやつれているようにも見えるが、どこか目に光があるようにも見えた。

「あれだけ戦地に送り込んだというのに、全く消耗していないとはさすが殺戮天使だな。魔道具としては最高峰よ」

「……」

 何も言わずにセラはお辞儀をする。

「さて。殺戮天使よ。貴様はまたもやあのゴミ男を助けたようだな」

「ゴミ男?」

「忘れたか? この履歴鑑定の力の持ち主のガラクタ好きの男を」

 そう言って国王がトレースした履歴鑑定の力を見せる。

「鑑定士様のことは私自身が推し量ると言ったはずですが?」

「持ち主を裏切るなんて愚かな魔道具だ」

 国王が不気味な笑い方をすると、周囲を取り囲む兵士たちもセラのことを嘲るように笑った。

「なるほど?」

 セラの声は驚く程冷たかった。

「私に拷問なんて効きませんが?」

「そうだな。殺戮天使はあらゆる魔法も魔道具も無効化する。だが、持ち主の命令には逆らえないそうだろ?」

 ニヤリと国王が笑うとセラは黙って頷いた。

「さてと。殺戮天使よ。貴様はどうやったら痛む?」

「私の保護魔法は私自身でも解けません。故に国王様の部下の力をお使いになっても無駄でございます」

「まぁ貴様が痛まなくても儂らは満足する」

 ニヤリと国王が笑い、鞭でセラを打つ。

 痛々しい音が鳴り響く。

「ふん。貴様の汚らしい羽が広間に落ちたではないか。土下座しながら拾え」

 言われた通りにセラが、自分の羽を拾う。

 その後、数日間にわたってセラは国王と兵士によって拷問の数々を受けた。


 ●


 ――スズラン共和国。

「さぁ! 安いよ!」

「そこの兄ちゃん!」

「あいよ! これおまけね」


「凄い活気ですね」

 ゼノがキョロキョロ辺りを見渡しながら言う。

「ローレル王国とは違った活気があるだろ?」

「あれは何ですか?」

 上空に引かれている黒い線をゼノが指さす。

 線は所々に立っている、灰色の柱で繋がれており、そのまま各家や店へと繋がっていた。

「あれは、でんきと呼ばれる物を送るためのシステムらしいぞ」

「でんき?」

 聞きなれない言葉にゼノが聞き返す。

「不思議だろ?」

 そんな2人のやり取りを店主が聞いて、笑う。

「あんたら外国の人かい? 電気ってのはこの国独自のシステムさ! 発電所がこの大通りの先にあるから見てみるといいさ! 電気を発電してる場所を見れるぜ」

 はいよ。と店主が紙袋を渡してくる。

「この袋も独特だね」

 ゼノがアッシュに言うと、店主がまたまた笑いながら言う。

「他の国だと皮の袋とか布の袋なんだって?」

 袋の中身はネジや金属片だ。

「オレからしたらこんなの買う方が不思議だけどな。金属なんてこの国じゃあ滅多に使わんぞ?」

 その店を後にしたゼノとアッシュは、店主が言っていた発電所へと行ってみることにした。


「凄い音ですね」

 巨大な歯車が回転している姿を見ながらゼノが言う。

 いつもよりも大きな声を出さないと聞こえない。

「これが回ることででんきとやらがうまれるのか……」

 世の中には知らないことが多いな。とアッシュが呟いている。

「そういえばアッシュさんは、お茶の葉っぱを買ったんですね」

「あぁ。ルミエよりも茶を淹れるのが上手い自信があるからな。これでいつか勝負でもしようかと思ってな」

「なんだかアッシュさんてどんどん負けず嫌いになってません?」

 巨大な歯車を背に2人は、自分たちの村へと帰って行った。


 ●


 ゼノとアッシュが発電所に心を奪われている頃、村にはローレル王国から大勢の軍隊が押し寄せていた。

「進めぇー! 反逆者にして侵略者をせん滅するのだぁー!」

 兵隊長が叫び、行進している。

「来た来た。人間どもが」

 ミラーが自分に映しながら言う。

「高火力モード」

 アイリスの目が光る。

「さて。ひと暴れするかな」

 ノワールがブンブン刀身を振る。

「この家を壊されたら困るので、先の方でやっつけてくれますか?」

 ルミエがお願いすると、アイリス・ノワール・ミラーが家から出ていった。

 数分後には戻ってきた。

「たわいもない」

 ノワールだ。

「瞬殺だったよ!」

 ミラーが興奮ぎみで言う。

「お父様に怒られそうです」

 アイリスは飛び出た目玉を頑張って戻そうとしていた。

「見て! あいつらまだこんなに軍隊いたよ!」

 ミラーが映し出す。

「今のが本隊だったわけじゃなかったようですね」

 ルミエが歯噛みする。

「何度こようと我が退けてくれよう!」

「どうしたの?」

 ルミエが刀身を振るとゼノが帰って来た。

 ミラーはパッ。と映していたのを消す。

「わっ! ちょっとルミエ! 危ないよ。アイリス! 何でまた目玉が飛び出てるの? タイヤも昨日より1センチすり減ってるじゃん!」

「誤差の範囲です」

「全然誤差じゃないよ!」

「寂しかったよー! ゼノォー!」

 シャルロットが抱きつく。

「なんであんたはいっつもそうなんだよ!」

 ミラーが怒る。

 その様子を見てアッシュがやれやれと首を振った。

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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