表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/36

第24鑑定 王都の変化

「みんなありがとう!」

 ゼノがにこりと微笑む。

 ルルとミルクがゼノに渡した物は木の枝だった。

 シャルロットは自分の似顔絵を、ミラーとノワールは鉄球のようなものがついた独創的な武器を、アイリスとルミエは食器や家具の欠片をゼノに渡していた。

「あたしからもほら」

 照れながらピクトが渡した物は、枯れ葉だった。

「どれも遜色ないくらいいい物だね」

「はぁ? あたしのが一番役に立つに決まってるだろ!」

 ピクトが怒って飛び跳ねると、アイリスが噛みついた。

「反論。枯れ葉のどこが役立つのか教えていただきたいです」

「なぁーによ! あんたらの割れた食器のどこが役に立つの? あたしのは燃やしたり布団の代わりになったりするのよ? それに人間はガラクタが好きなの!」

「ボクはゼノが一番愛しているボクの絵だから一番役に立つよ?」

 シャルロットがゼノに抱きついてみんなに舌を出す。

「キー! この女! 王都にいるあの女と同じくらいムカつくよ!」

 ミラーがキンキン叫ぶ。

「どうだい? ミラー。ボクはこーんなにゼノの近くにいられるんだよー?」

「フンだ! オレはマスターにキスをしたもん!」

「なんだって!」

 一瞬でシャルロットの体の周りにどす黒いオーラが漂う。

「詳しく説明せい!」

 ノワールがミラーに切っ先を突きつける。

「ゼノ様には困ったものです」

 言い方は穏やかだが、ルミエがお茶をドンと音を立てて置いた。

「パパはみんなのパパのはずでしゅ」

「ゼノはルルがいないとダメなはずなのに……」

「ふん! 人間と魔鏡が接吻したってどうだっていいっての!」

 ガタガタ揺れながらピクトがお茶を飲むが、全て零していた。

「訂正。あれはミラーの口がお父様の頬にぶつかっただけです」

 アイリスの言葉を聞いて、他の魔道具たちが安堵の息を吐く。

「じゃあ僕は今から王都に行ってくるね」

 我関せずのゼノが突拍子もないことを言う。

「え?」

 全魔道具が一斉にゼノを止めた。


 ●


「全くパパは!」

 ゼノのカバンの中でミルクが文句を言う。

「強情すぎるんだよ」

 ルルも同じカバンで頷く。

 ゼノの理屈はこうだ。

 ルルを治す部品はみんなから貰った物だけでは足りない。だから王都に行く。

 全員が全力で止めたが、ゼノはどこ吹く風だ。

「パパ。絶対に離れないでほしいでしゅ!」

「何言ってるんだよミルク。僕はいつだってみんなから離れたことないだろ?」

 ゼノがケタケタ笑うのを見ながら、ルルがため息交じりに

「いっつもすぐにどっかにフラフラ行っちゃうのは誰だよ」



 結局ゼノは、全員の反対を押し切って王都へと足を運んだ。

 理由は、

「だって。みんながせっかく僕のために色んな物をくれたんだもん! 僕も張り切ってルルを治すよ! そのためにはもう一度王都に行かなきゃ」

 だ。

「前に来た時からあまり時間は経ってないのに、もっと陰湿な感じになってるね」

「そうなんでちゅか?」

「うん。とにかく今回はエリスに見つかったらダメだから。本気で怒られちゃう」

「ルルがエリスの居場所を指せればいいのに……ごめんね? ゼノ」

「何言ってるんだよ! ルルは悪くないだろ?」

 ゼノはいそいそと道具屋を探すが、どこへ行っても戦争関係のお店しか並んでいなかった。

「うーん。武器屋かぁー。ちょっと覗いてみるか」



 店の入り口の鐘がチリンチリンと鳴った。

「らっしゃい」

 陰気な声が店の奥からする。

 棚を見やると、刺身とかすり身という文字がところどころにある。

 以前は魚屋だったのだろう。

「武器屋って言っても、武器だけじゃなくて武器の部品も売ってるんだね」

 ヒソヒソとゼノがルルとミルクの言う。

「ゼノ! 見てあれ!」

 ルルが指さす先には槍が置いてあった。

「おー! あれを分解すればルルの部品になりそうだー」

 思わずゼノが大声を出す。

 客は少ないとはいえ、周囲の視線を一気に集めることとなった。

「えぇーと……あ、あ、あ、あの槍く、く、ください」

 誤魔化すように、上ずった声で店員に声をかける。

「兄ちゃん金はあんのかい?」

 店主がジロジロとゼノを見る。

「は、は、は、はい」

 そう言ってゼノが財布を出そうとした瞬間――

「そこまでだ! 売国奴め!」

 衛兵がゼノを取り囲む。

 何が何だか分からないまま、ゼノは衛兵に捉えられて王都の広場まで連行された。


 ●


「皆の者ちゅぅもぉーく!」

 広場に衛兵の声が鳴り響く。

 そこには、縄で縛られたゼノが立っていた。

「この者は若いにも関わらず戦争へ行かず、武器屋で兵器を買おうとしていた! 他国のスパイの可能性もある! 今後この様な者が出ないためにも、この者を今この場で処刑する!」

「いいぞー! やれやれぇー!」

「見せしめにやっちまえ!」

「裏切り者に死を!」

 そこら中からゼノに向かってゴミが投げつけられた。

「勿体ない。まだ使えるのに」

 相変わらずのゼノに、カバンの中のルルとピクトは頭を抱えた。

 ゼノはそのまま磔にされ、見世物にされた。


 一方その頃、アイリス達が居る家では、他国へ出かけていたアッシュが帰ってきていた。

「お帰りおじさん!」

 ミラーが飛びつく。

「お帰りなさいませ」

 ルミエがいそいそとお茶を用意する。

「これは土産だ」

 くたびれた様子でアッシュが魔道具たちに布袋を渡す。

「これは?」

 シャルロットが訊ねる。

「貴様らそれぞれに見合ったメンテナンス道具だ。貴様らはあいつに頼りっきりだからな。たまには自分でメンテナンスをしてみろ」

 ふう。と息を吐きながらお茶を飲む。

「む。この味だ」

 ルミエが淹れるお茶は決して旨くはない。

「疲れてるの?」

 ピクトが聞くと、アッシュが頷いた。

「大変だったぞ。俺が元ローレル王国の者だというだけで、スパイなんじゃないかと疑われたりな」

 アッシュがやれやれと首を左右に振る。

「そんなに大変な思いをしてまで何で?」

「貴様らが言ったことだろう!」

 ピクトの言葉を遮ってアッシュが怒鳴る。

「助かりましたおじ様」

 ペコリ。とアイリスが頭を下げる。

「ふん。まぁなんだ。いつもの礼だ。気にするな」

 アッシュがポリポリと頬を掻くと、ピクトが変なの。全然分かんないや。とぼやいた。

「ピクトちゃん。これがツンデレというやつですよ」

 ルミエがにこりと微笑む。

「アホか。そんなわけなかろうが。ところで奴はどこにいる?」

 お茶をガブリと飲んでからアッシュがキョロキョロと辺りを見渡す。

「人間なら王都へ行ったよ。バカだよねー」

 やれやれ。とピクトが首を振ってお茶を飲もうとすると、アッシュがテーブルを強く叩いた。

「わ! 何するんだよ隣の人間!」

 ピクトが怒るが、アッシュの顔は青ざめていた。

 その手はワナワナと震えている。

「どうしたおじうえ」

 ノワールの声色が変わる。

 普段稽古をつけてくれているアッシュは、こんな表情はしない。

「王都へ行っただと?……」

「こんなのいつものことだろ? おじさん」

 ミラーが落ち着けよ。となだめるのをアッシュは払いのける。

「バカな……今王都がどんな状況か分かっておらんのかあの者は……」

「それは以前と違うということですか?」

 アイリスが目の前に座る。

「全く違う。死ぬぞあいつ……」

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、画面下の【⭐】での評価やブックマークで応援していただけると、毎日の執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ