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第23鑑定 ルルとミルクの小さな大冒険

「パパを驚かせたいでしゅ!」

「はぁ? 何をバカなことを言ってるの?」

 ゼノが寝た後恒例の、魔道具会議の中でミルクが突拍子もないことをいい出した。

 ミラーが甲高く叫び、それをルミエが抑えている。

「ミラーちゃん。ゼノ様が起きてしまいますわ」

「いいよなルミエは! マスターにしっかり磨き上げられてさ! オレなんて最近全然手入れして貰ってないぜ!」

「嘘をつくな! 昨日磨いて貰っておったであろうが!」

 ノワールがガタガタ言う。

「それで? ボクのゼノを驚かせるってどういうこと?」

 シャルロットの目が怪しく光る。

「パパはいっつもみんなのお世話をしてくれてるでちゅ。そのお礼をしたいんでちゅ」

「そういうことか! キミよく分かってるじゃないか! ボクの次にゼノを愛しているね!」

 シャルロットが腕をブンブン振り回すと、その腕が取れた。

「あ。しまった……」

「ルルは何かゼノが喜ぶ物をあげるのがいいと思う!」

「我は強い物がいいと思うぞ!」

「何だよ強い物って」

 ミラーがノワールに突っ込む。

「ふん! 何が驚く物だよ。何が喜ぶ物だよ。くだらない」

 そう言いながらピクトは自分に割与えられた棚をガサゴソ探し始めた。

「あの人間はガラクタが好きだから……」

 などとブツブツ言っている。

「私たちは現実的な物を作りましょう」

 アイリスがルミエに声をかける。

「かっこいい物を作るぞ!」

 ルミエがミラーを無理やりに引っ張る。

 シャルロットは何やら自分の絵を描き出した。

「何か役立ちそうな物を探してみる?」

 ルルがミルクを誘った。


 ●


「ルルー待って欲しいでしゅー」

「ほら早くおいでよミルク!」

 ルルとミルクは草むらの中を歩き回っていた。

 

「ミルク! 逃げろ!」

 目の前の野良猫からルルがミルクを庇う。

 他の魔道具から比べても比較的小さく、殺傷能力がないこの2人にとっては、小動物でさえも危険になる。

「ダメでしゅルルたん!」

 ミルクがルルを引っ張る。

「何やってるんだよ!」

「ルルたんがいなくなったらパパは悲しむでちゅ」

「でもこのままじゃあの危険生命体から逃げられないよ!」

「ルルたんの力は使えないの?」

「姿を消すやつか!」

 まるで人間が、手を鳴らすようにルルが針をクルクル回した。

 ルルの力でルルとミルクは姿を消し、追ってくる猫から逃れることに成功した。

「大成功でしゅ!」

 ユラリと草むらからミルクの姿が浮かび上がる。

「見てよミルク! ゼノは絶対こういうの好きだよ!」

 草むらに落ちてる木の枝をルルが拾う。

「これはパパが涎を垂らして喜ぶでしゅ! あ! それならこれも喜びそうでちゅ」

 2人よりも背丈の高い雑草を見てミルクが飛び跳ねる。

「未知の植物だね……毒があるかもしれない。気を付けよう」

「アタチたちが毒に侵されたらパパが泣くでちゅ」

「まずは周りを確認してみよう。この植物以外にも敵が隠れてるかもしれない」

「ルルたん!」

 ミルクがヒソヒソ叫ぶ。

 指さす先には先ほどの猫がいた。

「まだ力を連続行使できない……あの危険生命体からは距離を取ろう」

 そう言うルルの先には洞窟(岩の隙間)があった。

「あの洞窟に身を潜めよう!」

 ルルがミルクの手を引く。

 ルルとミルクが岩の陰に隠れると、近くにいた猫はどこかへ行ってしまった。

「ふぅー。一安心でしゅ」

 ミルクが額の汗を拭いながら、ルルの方へと振り返る。

「……る……ルル……たん……」

 瞬間、ミルクは青ざめながら、ルルの後ろの方を指さす。

 全身から冷や汗が噴き出ている。

「何だよーミルクはー」

 にこにこしながらルルが後ろを振り向くと、ルルも青ざめた。

 大きな蛇がそこには居た。



 ●


「「ギャー!!」」

 大慌てで2人は洞窟から飛び出ると、待ってましたと言わんばかりに猫がそこには居た。

「絶体絶命でしゅ」

「ルルが囮になるからミルクは助けを呼んできて!」

「そんなこと絶対にさせないでしゅ!」

 ミルクがルルの前に立つ。

「何してるんだよ! 今度こそ本当に終わりだぞ?」

「一緒に打開するでしゅ! 一緒に帰らないとパパが悲しむでしゅ!」

「くっそーゼノのバカぁー! ルルはゼノが悲しむ顔なんか見たくないんだからな!」

「前には危険生命体。後ろには細長い危険生命体。どうするでしゅ?」

「危険生命体どうしで戦ったりしてくれないかな?」

 ルルが言った瞬間、猫の目がギラリと光った。

「ルルたん!」

 ドンとミルクがルルを突き飛ばす。

 バリン!

 瞬間、ルルに狙いを定めて飛びかかった猫は狙いを外し、ミルクに飛びかかる形となった。

 ミルクはゼノに治してもらった場所にひびを入れてしまった。

「せっかくパパに治して貰ったのに……」

 メラメラとミルクが闘志を燃やす。

「ミルク!」

 ミルクの様子が変わったのを見てルルが叫ぶ。

 ルルの意識が逸れた一瞬を蛇は見逃さなかった。

 蛇はそのままルルに噛みついた。

「アタチが赤ちゃんでいられるのはパパがいるからでちゅ! 許さないでちゅ!」

 ミルクの体からあふれ出た闘気は一瞬にしてミルクに変わった。

 白い液体が辺りを満たし始める。

「アタチの力の真骨頂は、敵の力を奪うことでちゅ!」

 ミルクが怒る。

 ミルクが溢れさせたミルクに触れた猫が脱力する。

「ルルたん! 飲むでちゅ!」

 ミルクが猫から奪った猫の力をルルに分け与える。

「凄いよミルク! 力が漲ってくる!」

 ルルは威嚇だけで、自分に噛みついた蛇を引き剥がす。

 そのまま素早い動きで蛇を翻弄した。

 一方の力を奪われた猫は、ヨタヨタと逃げて行った。

「やったぁ! やっつけたぜ!」

 ルルがガッツポーズをする。

 ミルクが見ると、蛇がそそくさと逃げる姿だった。

「やったでちゅ! アタチたちは最強でちゅ!」

「ちょっとしかゼノのために手に入れることが出来なかったけど、ルルたち絶対にレベルアップできたよね!」

 イエーイ。とルルとミルクはハイタッチをした。


 ●



「どうしたのルル! ミルク!」

 泥だらけで噛み傷のあるルルと、ひびだらけのミルクをゼノが心配そうに持ち上げる。

「あちこち怪我してるじゃないか!」

 2人が喋るのを遮ってすぐに治療に入る。

「パパ! アタチたちの話しも聞いてほしいでしゅ!」

 ミルクがポカリ。とゼノの頭を叩く。

「そうだよゼノ! とっても大変だったんだからぁー!」

 ポカポカポカと。ルルもゼノのことを叩く。

「わっ! 分かった分かった。何があったの?」

 せっせとルルとミルクの汚れを落としながらゼノが聞く。

「えっとねーえっとねー。こーんなにおっきなモンスターが現れてぇー」

 ルルが針をぐるぐる回す。

 その弾みで針が飛んだ。

「こーんな長いモンスターもいてね!」

 ミルクが興奮してピョンピョン飛び跳ねる。

 おかげで、ゼノが治したひびがまた復活した。

「分かった分かった。2人ともありがとね? でも何で?」

「ゼノにこれをあげたかったんだよー」

「パパの喜ぶ顔が見たかったでちゅ」

 2人でたくさんの木の枝をゼノに見せる。

「うわぁー。ありがとねー。きっと何かに役立つよ」

 にこりとゼノが微笑む。

「でもお願いだから、もう危ないことはしないって約束してくれる? 2人がいなくなったら僕、絶対に立ち直れないと思うんだ」

 そっと。2人の頭に手を置く。

「絶対に。居なくならないって約束してくれよ?」

 その手には力が込められていて、震えていた。


 ●


 ――魔導コンパス。貴女はきっと錬金術師様に名前をいただいているのでしょうね……

「出ろ。殺戮天使」

 感情のない声がする。

 また、戦いに繰り出されるのですね……

 錬金術師様……私はもう汚れてしまいました。

 錬金術師様のところへ戻れないのは、錬金術師様の居場所をあの人間に教えることとなってしまったからだけではなく、私が汚れてしまったから……

 いや……私は知っている……

 錬金術師様はそんなこと気にせず、私のことを受け入れてくれることを……

 私は臆病ですね……

 だからでしょうか……

 戦いに身を置いている時間だけは、なぜか気持ちが軽くなるのは。

 きっと現実逃避をして気持ちを軽くしているだけなのでしょうね――

「私は弱いですね」

「魔侍に比べたら弱いが、それでも貴様は強いから安心しろ!」

 錬金術師様とお別れしてから、この羽根も重くなりました。

 治して頂いた箇所は快調なのに不思議ですね……

「せん滅してこい」

 国王様は愚王ですね。

 それでも私は――

 眼下が灰色で埋め尽くされる――

 私の世界は色が無くなり、白黒の世界が広がる……

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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