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第22鑑定 アッシュ旅立つ

「あの女……」

 ピクトが呟く。

「ん?」

 ゼノがピクトの向かいに座る。

 いそいそとルミエはお茶を運んで一緒に座った。

「あんたのために必要な物を集めていた……」

「うん。そうだね。ほんとありがたいよ」

 にこりとゼノが微笑むとピクトが怒った。

「あんたはなんでそんな風なんだよ!」

 ふん! とテーブルに乗ったお茶をガブリと飲む。

「これがゼノ様ですから」

 ゆっくりとルミエがお茶を飲むのがピクトは気に入らないようだ。

「あんたらはそれでいいのかよ!」

「他のみんながどう思っているかは分かりませんが」

 そう言ってルミエは、外で楽しそうに野菜を採っているシャルロットとミルクを見る。

 それから何やら鼻歌を歌ってベッドで横になっているルルを見た。

「ゼノ様がこんな風だから、みんなこうしていられるのだと思いますわ」

「それではお父様。行ってきます」

 カラカラとタイヤを回しながらアイリスが言う。

「難しく考えたってマスターは変わらないぜ!」

 ピョンとゼノの膝に飛び乗り、ミラーがゼノの頬辺りにキスのようなことをした。

「あの女がしたことだってオレたちからしたら理解できないけどさ」

 ピョンとゼノの膝から飛び降りる。

「あれが人間なんだってさ」

「困っている者がいたら手を差し伸べる。実に美しいではないか!」

 ノワールが刀身をブンブン振り回す。

「アッシュさんによろしくね」

「……アイリスたちが行くのも同じ理由?」

 アイリス・ミラー・ノワールの背中を見送りながらピクトがゼノに言う。

「理解できない?」

「魔道具は道具だ。人間が必要とした時に人間の命令に従うだけだ。殺せと言われれば殺すし、裏切れと言われれば裏切る。感情や心なんて不要だし理解する必要もない」

「でもピクトちゃんは今、その感情が気になっているのね?」

「き……気になってるとかじゃない! ただ疑問に思っただけだ!」

 ガブリとお茶を飲み干すと、ルルの隣に行ってしまった。

「あらあら。照れちゃって」

「そういえばルル」

 鼻歌を歌うルルに声をかけながら、ゼノは何気なくルミエを手に取る。

「ゼノ様?」

 ルミエが恥ずかしそうにしながらゼノを見上げる。

「最近その歌よく口ずさんでるけど、思い出の歌かなんかなの?」

 ルルに問いかけながら、ゼノはルミエを磨き始めた。

「ちょっとゼノ様。みんなが見てる前では恥ずかしいですわ」

 ルミエが頬を染める。

「? 君はランプなんだからちゃんと磨いてあげないと。それにほらここ。前には無かった傷。いっつもシャルロットと一緒に家事を全部任せちゃってるから、そのお礼」

「あんな小さな傷にも気づくのかい」

 ピクトが驚く。

「それがゼノの凄いところなんだよ! この歌はねー。なんだか最近頭の中に流れてくるんだ。どんな歌なのかは思い出せないんだけどね」

「じゃあその歌を思い出したら、ルルの探し物も見つかるかもしれないね!」

「ちょっとちょっと! 何の話しよ!あたしにも分かるように説明しなさいよ!」

「ルルはね。今も僕じゃない持ち主がいるんだ。それでその持ち主が何か探し物をしていたらしいんだけど、途中でルルが怪我しちゃって何を探していたのか忘れちゃったんだって」

「怪我って故障の間違いだろ?」

「怪我だよ? それでね、ルルを治してあげていくと少しずつ記憶が戻っていってるみたいなんだよ! きっと完治したらちゃんとした探し物も思い出せるはずなんだ」

「それって……いや。なんでもない」

「鼻歌も記憶が蘇ってる証拠だと思うんだよねー」

「パパはアタチたちのお医者様でちゅ」

「あ。お帰りミルクー。シャルロットー」

「ゼェーノォー!」

 シャルロットが駆け寄る。

「ゼノと離れていた36分40秒。喋れなかった42分21秒。すっごく寂しかったよぉー!」

 そのままシャルロットは渾身の力でゼノを抱きしめ、腕がもげた。

「あー! シャルロットー!」


 ●


「で。何の用だ?」

 アッシュがむすっとする。

「だぁーかぁーらぁー! このままだとマスターはどんどん危ない橋を渡りそうなの!」

 分かる? おじさん! とミラーがアッシュをどつく。

「だれがおじさんか! だがしかし。確かにゼノは少々危険を顧みないところがあるな」

「以前からお父様はあんな感じでしたが、最近は特にその傾向が強いと解析します」

「我は正直言って、あの者を失いたくない」

「全く貴様らは」

 どん! とアッシュがテーブルに足を置く。

「とことん魔道具らしからぬ魔道具だな」

「へっへー。不気味でしょ? おじさん!」

「ふん。もう慣れたわ」

 ポカリ。とミラーを小突く。

 それからアッシュは再び口を開いた。

「ゼノは恐らくまた王都に行くぞ」

「やはりですか」

「何でだよ!」

「バカな!」

 アイリス・ミラー・ノワールがそれぞれ違った反応を示した。

「今修理している魔道具が完璧に直るまで王都に通い続けるだろうな。それにエリスのこともある」

「あの女め!」

 ミラーがキーキー声で叫ぶ。

「王都にしかルルを治せる材料は無いのでしょうか?」

「俺が知っている国はこの前教えた通りだが、それ以外の国はたくさんある。そこに行けば治せるアイテムを手に入れることは可能だと思うが?」

「おじ様」

「おじさん!」

「おじうえ!」

 アイリス・ミラー・ノワールがアッシュに迫る。

「な……何だ貴様ら」

「オレたちおじさんの力になったよな?」

「たくさん助けました」

「恩を返すのは当然のことだ」

「貴様らが勝手にやってることだろが!」



 アッシュが喚き散らすが、数日後にアッシュは自分でも知らない国へと旅立った。

【読者の皆様へ】

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