第20鑑定 おふれと密告
一つ。各家庭にある全ての魔道具は国王の物とする
一つ。これより他国へ戦闘行為を行う
一つ。戦時中につき、他国への移動は禁止とする
一つ。戦時中につき、他国からの侵入を禁止とする
一つ。全ての国民は国のために戦くこととする
主だったルールがこれだ。
当然、王都の住人たちは混乱し、今すぐに引っ越そうとしたが王都からの出入口は既に兵士によって封鎖されていた。
「これはまずいことになったな……」
王都のニュースを聞いたアッシュが呟く。
目の前のルミエが淹れたお茶は冷めていた。
「新しいの淹れますね」
「何がまずいのですか?」
アイリスが目の前に座る。
「王都は完全に封鎖された。これから戦争に入るそうだ」
「そんなもの! 我が全て叩き切ってくれるわ!」
「ちょっとノワール! 勝手に動かないで!」
「貴様! 誇り高き魔剣に向かって無礼だぞ!」
「何でそれがまずいんですか?」
ノワールを手入れしながらゼノも聞く。
「世界中が戦争状態に入る。そうなれば世界中が経済的に危機になるしこの村にだって戦火は飛び火するぞ」
「はいできた」
アッシュの言葉にもゼノはどこ吹く風だ。
「貴様! オレの話しを聞いているのか!」
「わっ! アッシュさん! 聞いています聞いています!」
「だいたい貴様というやつはいつもいつも緊張感というものがない!」
アッシュが腰の剣を抜く。
「我に任せよ!」
ノワールが前に出るのをアイリスが制止した。
「問題ありません。アッシュさんの体温は上昇しておりません。言葉だけの警告だと判断します」
「なんだただの脅しか」
ふぅ。とノワールも息を吐く。
「ちょっとアイリス? ノワール?」
ゼノがアッシュの剣を手で何とか防いでいる。
「問題ありません。アッシュさんには、ツンデレという性質があるので」
「そうじゃなくて誰か止めてよー!」
●
「マスター。最近王都から宝が来なくなったね」
辺りを歩きながらミラーがぼやく。
「戦争中だからかな? 僕が王都に行くのもやめた方がいいってアッシュさん言ってたしなー」
「でもマスターのおかげで、みんなだいぶ修理されてきたよ!」
キーキー声でミラーが褒める。
「残りはどうしても王都に行く必要があるんだよねー。ルルを早く治してあげたいし……」
「別の街に行けばいいじゃないか」
アッシュが昼飯を食べながら何でもないように言う。
「別の街?」
ゼノがキョトンとして聞く。
「なんだ貴様。王都しか知らんのか。この世界にはたくさんの街や村がある。ここだってそうだろ?」
「ここは村ではなく荒れ果てた土地です」
アイリスが訂正した。
「そうなのか? 俺はてっきりゼノの村かと思っていたがな」
「マスターの村だって!」
ミラーがピョンピョン飛び跳ねる。
「アッシュさん! この近くにはどんな町とかがあるんですか?」
ゼノが顔を輝かせる。
それは、この村が自分の村と言われたからではなく、近くに王都以外の場所があるということに希望を見出したからだ。
「俺も詳しくは知らんが、王都と戦争をしているのがユリ帝国だ。王都の真隣に位置しているな」
アッシュが地面に大きな丸を2書く。
「ここが俺たちのいる場所だ」
2つの丸の間に小さく丸を書く。
「この2か国は戦争中だから危険だな。安全面で言えばここだな」
王都、ユリ帝国とは村を挟んで向かい側にやや小さめの丸を書く。
「ヒナゲシ神聖国だ。ただ、誰も人間がいないとの噂もあり、この国に行った者は1人も戻った者がいないらしい」
「そんなところにマスターを行かせられるわけないだろ!」
ミラーが甲高く叫ぶ。
「俺が知っている最後の国がここだ」
ヒナゲシ神聖国の更に後方、つまり王都から離れたところに大きな丸を書く。
「かなりでかいわね」
ピクトが目を見開く。
「バラ王国。多方から黒い噂が絶えない怪しい国だがとにかくでかい」
「やっぱりまずは王都に行ってみたいな」
何でもないという感じでゼノが言う。
まるで今までの説明を聞いていないかのようだ。
「貴様! 分かっているのか?」
「ローレル王国は僕が生まれて育った国だから」
「……こんなこと言いたくはないが……」
アッシュが言葉を濁す。
「あの国はくそだ」
「我もそう思うぞ!」
ノワールが壁際から叫ぶ。
「だいたい刃が欠けたくらいで我を捨てる貴族が住んでいる国なぞ!」
何やらごにょごにょ言っている。
「うん!」
ゼノが立ち上がった。
「それでも僕は王都にもう一度行きたい! 会いたい人もいるしね」
「それってまさかあの女じゃないだろうね!」
ミラーがキーキー言う。
ゼノはその言葉に返事はせず、にこりと微笑んだ。
「マスター!」
●
「報告します! 敵部隊壊滅! このまま前進してもよろしいですか?」
「構わぬ。進めるところまで進めい! 捉えた人民はみな奴隷にせよ! 必要な物資は全て略奪せよ! 世界にローレル王国の脅威を示すのだ!」
「国王……」
魔侍を動かそうとする国王に、付き人が声をかける。
「何やらユリ帝国の左翼で怪しい動きがあります」
「ふん。殺戮天使をぶつけてやれ。あれはもう使い物にならん。壊れたら壊れたでいい」
「承知しました。それともう1つ。何やら怪しい文章が送られてきました。こちらで読み上げてもよろしいでしょうか?」
「構わん」
「哺乳瓶は裏切り者。この一文だけです」
「下らぬな。我らを惑わす虚偽の報告だろう。今に見ていろ? この魔侍の威力を見せつけてやるぞ」
「素晴らしいです国王陛下」
【読者の皆様へ】
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