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第14鑑定 心の傷

「ギ……ギルド長!」

「元な」

「ど、ど、どうしてここに?」

「ふん。何やら怪しげな殺戮天使に言われてな」

「セラだ! セラは元気だった?」

 急にゼノが饒舌になり、アッシュは後ずさりする。

「貴様。普通に喋れるのか」

「あ……と……」

「ゼノは究極の対人恐怖症だから」

 ゼノとアッシュの間にエリスが割って入る。

「今までは私がゼノの通訳をしてたんだけどなぁー」

 エリスが羨ましそうにアイリスを見る。

「どうやら私の役目はもうないみたいね」

「ところで殺戮天使はなぜあなたに会ったのですか?」

「魔導人形……知らん! 何だか追われているようだったが?」

「あんたって前にマスターを見捨てたんだろ?」

「魔鏡……見捨てたのは……確かにそうだな……」

「そ……そう」

「えぇい! もごもごと!」

「貴様! 我が魔剣の錆となりたいか!」

「魔剣……いや……オレは悪い意味ではなく」

「お父様はそうだったっけ? と言っています」

「お父様? そうだったっけ? 忘れているのか貴様!」

「ゼノ様は過去自分にあったことをいちいち覚えておりません」

 ルミエがお茶を運んでくる。

「魔導ランプ……いや……それよりも自分がされた仕打ちを覚えていないだと?」

「ゼノっていっつもそうだよね。自分のことはどうでもいいというかさ」

「ま……魔法人形……オレを呪うなよ?」

「ボクはねぇー。心に決めた人がいるから」

 べたぁーっとシャルロットがゼノに抱き着く。

「あんたはまた!」

 ミラーがシャルロットを引きはがす。

「こんなにも魔道具が……」

「ここにはあの殺戮天使も足げなく通っていましたよ」

「オレは……こんな才能を無能と言っていたのか……」



 ●


「……で。その殺戮天使さんがギルド長をここに案内したってわけですか」

「まぁな。案内というよりは指標に近かったがな」

 エリスの言葉にアッシュが頷く。

「セラちゃんはなんで案内をしたのでしょう?」

 ルミエがお茶のおかわりを持ってくる。

「オレに必要だからとか言っていたな」

 そう言ってアッシュがゼノを見る。

「ぼ……僕は……や、や、役に……」

「お父様は役には立たないと言っています」

「誰がマスターは役立たずだって?」

 アイリスの通訳にミラーがピョンピョン飛び跳ねて怒る。

「さて……と」

 エリスが伸びをした。

「ゼノの様子も見れたし、ちょっと来て」

 ミラーを呼んで2人きりになる。


「あなたの変身能力はみんなに黙っておくわね? ゼノはたぶん、今のところ平気だと思う。少なくともみんながゼノの近くにいればゼノは今まで通りよ」

「でも殺戮天使の話しになったら」

「うん……取り乱しちゃう。だからその話題はなるべくしない方がいいわ」

 エリスがミラーの言葉を遮って言う。

 更に続ける。

「覚えておいて。人間は傷を2つ持つの」

「2つ?」

「1つは体にできる傷。もう1つは心にできる傷」

「こころのきず?」

「体の傷は簡単に治せるけど、心の傷は簡単には治せないの」

「どうしてこころが怪我するの?」

「悲しかったり辛かったりすると心が傷付くわ」

「どうやったら治せるの?」

「優しくされると少しずつ治っていくの」

「もしも優しくされなかったら?」

「一応、時間が経つことでも少しは治っていくわ。でもね」

  ここでエリスは一度言葉を区切った。

「その前に心が壊れちゃう場合が多いの」

「こころも壊れるの?」

「壊れるわ……それもとても簡単に」

「オレたちは……たぶん一度壊れてる……捨てられて拾われて……少しここが痛くなったから」

 ここ。と言って割れた箇所をさする。

「そうね……ゼノに拾われたことであなたには心が宿ったのね。だから捨てられた時の記憶が蘇って心に傷ができた……」

「心なんてなければいいのに……」

「それは違うわ」

「え?」

「心があるから笑えるし好きにもなれるのよ」

 にこりと笑ってエリスは王都へと帰って行った。



 ●


「これでよし……と」

 ゼノが壊れた魔導コンパスの修理を一通り終わらせた。

「ありがとうゼノ!」

 ルルが陽気に喋り出した。

「ルルに名前をくれてとっても嬉しいよ!」

「な! 魔道具がまだあったのか!」

 その様子を見てアッシュが驚く。

「セラはいっつもゼノのことを話してくれてたよ!」

 口を修復して貰ったルルは、やっと喋ると言わんばかりにマシンガントークを続けた。

「セラは国王に監禁されてて、ルルもその部屋で一緒だったんだ。暫く戻らないって言ったのは、国王によってゼノが危険な目に遭うのを避けたかったんじゃないかな?」

「それでも僕はセラを助けたいよ」

「じゃあルルが今のセラの居場所を指し示してあげるよ!」

 その言葉を聞いたアッシュが鼻を鳴らす。

「魔導コンパスは、持ち主の欲するものの場所を指し続ける魔道具だ」

「ルルはまだ壊れてるからゼノがルルのことを直してくれればセラの場所をいつでも教えらえるようになると思うよ!」

 ピョン! とゼノの肩に飛び乗る。

「任せて! 治すのは得意だから」

「ふん! 非効率的だな」

 アッシュがまた鼻を鳴らす。

「何でそう思うのですか?」

 アイリスが問う。

「魔道具を修理する手間を考えたら新しい魔道具を手に入れた方が効率的だ」

「私も何度もお父様へそう言いましたがお父様は聞き入れてくれません」

「さぁ! 仕事の時間だ」

 ノワールがアッシュにのこぎりを持たせる。

「ん?」

「家の修理を手伝え」

「バカな! 家を手作りすると言うのか! どれだけ非効率的なことか分かっているのか!」

「我はそんなこと気にせん!」

「やだなー。あんたはみんなで協力した方が速いって知らないの?」

「適材適所って言葉を知らんのか!」

 バカにしてくるミラーにアッシュが吐き捨てる。

「不可解なことですが、非効率的だと思っていたことが効率的なことに繋がることがあるのです」

 アイリスが木の板をアッシュに渡そうとする。

「オレは絶対に手伝わんぞ!」

 そう言ってアッシュは家を飛び出してしまった。



 ●


「報告します! 軍隊がぜ……全滅しました……このままではあの男を連れてくるどころか、他国から攻め込まれたらおしまいです……」

「報告! 隣の国が軍をあげてこちらに向かってきています!」

「そっちには殺戮天使を向かわせろ! あの男を早急に連れて来る必要がある。殺戮天使は逆らえないようにワシが直々に命令を出す」

 国王が唾をまき散らしながら怒鳴る。

 全てがいい方に転がらず、最近の国王はイライラしがちであった。

「あの男には敵対行為をするな。召集を試みるのだ。上から目線は避けよ」

 それだけ言うと国王は、殺戮天使! と叫びながら監禁部屋へと向かった。

 残された伝令の男が国王の付き人を困惑した目で見る。

「殺戮天使が出れば他国の軍勢など問題はない。我々は太古の遺産を起動できる男を懐柔するぞ」

 こうして国王軍ではなく、迎賓団がゼノの元へと向かった。

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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