第11鑑定 発見
「また作り直さないとだね」
セラが去った後の廃屋を見てゼノがみんなに言う。
アイリス・ミラー・ノワール・ルミエ・シャルロットがゼノのことをジト目で見る。
「何?」
一歩。ゼノは後ずさりした。
「質問。なぜ敵対している魔道具に優しくしているのですか?」
更にアイリスが一歩詰め寄る。
「え? 敵対?」
「分からないの? この屋根! 見てごらんよ!」
ミラーも詰め寄る。
「あぁうん。セラが壊したやつだね」
「それはまさしく敵対行為なのではないですか?」
ルミエだ。
「我がやったならば咎めるであろうが!」
ノワールがルミエと共に前に出る。
「そ。そうかなぁ? そんなことはないと思うけど?」
「ボクだけを見てくれるんじゃなかったの?」
シャルロットはゼノに抱き着く。
「何であんたはそうなんだよ!」
キーキー言いながらミラーがシャルロットを引きはがす。
「ボクの恋路の邪魔をするなら呪うよ?」
シャルロットの目がギラつく。
「あーもう! オレこの家族嫌い!」
「そんなこと言わないの」
ピョンピョン跳ねてるミラーをゼノが優しく抱きしめる。
その瞬間、ミラーが真っ赤になる。
「魔力の上昇を検知」
「しょ……しょうがないなぁ。屋根の修理を手伝ってあげるよ」
ふんっと鼻を鳴らしながらミラーが廃屋から出る。
「全くあやつはしょうもない奴だな」
ノワールがミラーを追いかける。
「何だかんだあの2人って仲いいよね」
にこりとゼノがルミエとアイリスに向かって微笑みかける。
「全くお父様は」
プイッとアイリスが背中を見せる。
「こういうのをたらしと呼ぶのですよ」
「ボクはゼノがたらしでも大好きだよ? もちろんゼノもボクのことが大好きだよね?」
「当たり前じゃないかシャルロット! 大好きだよ」
ゼノがシャルロットをぎゅーっと抱きしめた。
「うわぁー! ボクもう今すぐ死んでもいいよ。ゼノ! ボクと一緒に死なないかい?」
「何言ってるのさ。僕もシャルロットもちゃんと生きるんだよ」
「キシシ。ゼノのために生きるからゼノもボクのために生きてよね」
「そんなの当たり前だろ?」
ゼノの言葉を聞いたシャルロットは興奮して、首がもげてしまった。
「わー! シャルロット?」
「今のはお父様が悪いです」
「ゼノ様の悪い癖ですね」
「あーあー。オレ知らなーい」
「我を放っておくからこうなるんだ!」
●
「貴女も名前を付けられるのでしょうか……」
暗闇の中でセラが呟く。
「嬉しそう? この私がですか?」
「……そうですね……貴女が言っていた通りでしたよ。人間も捨てたものではない……少々興味がある人間に出会いました」
セラが言うと灯かりが灯った。
「またお呼び出しですか……」
セラがやれやれと首を振った。
「殺戮天使よ。出るのだ」
兵士の言い方はいつもと違っていた。
「……」
セラは無言でその部屋を後にした。
「殺戮天使よ。今日はお前に紹介したい者がおる」
「?」
どうもいつもと国王の様子が違った。
国王が入れ。と言うと、1人の人間の女が広間に入ってきた。
「この者は?」
殺戮天使が問うと国王が答えた。
「新しいギルド長だ。お前は初対面だったろう?」
「興味ありません」
「そうか。それで、任務の方はどうなのだ?」
「どう……とは?」
「連れてこいと命じた人間をまだ連れてこないのか?」
「まだあの御方の力を推し量れておりませんので」
「そうか……ならば推し量りに行くがいい」
「言われなくてもそのつもりです」
一礼をするとセラは広間の窓から飛び立った。
その姿を見て国王とその付き人がほくそ笑んだ。
●
『なぁーんかきな臭いですね……』
そうは思いつつもセラはゼノの元へと向かった。
「ごきげんよう。鑑定士様」
いつも通りお辞儀をする。
「やぁセラ。今日はどうしたんだい?」
「……」
そう問われてセラは戸惑う。
セラにはゼノに会いに行く理由がなかった。
「大変失礼いたしました。私には鑑定士様に会う理由がありませんでした」
「ちょうどよかった。今からみんなでお茶にしようとしてたところなんだ。かけてよ」
ゼノがイスの1つを指す。
「まぁーたマスターが敵と馴れ馴れしくしてるよ」
「言っておくけど、ゼノはボクのだからね?」
「おや? 呪具が愛着を持てる相手がいるのですか?」
「そういう言い方はよくないよセラ」
「失言を取り消しますわ」
ゼノに窘められてセラがペコリと頭を下げる。
「それで。鑑定士様は相も変わらずこのガラクタたちと生活をしているのですね」
「ガラクタじゃないよ」
にこりとゼノが微笑む。
「アイリスはたまに口うるさいし効率効率言うし融通が利かないけど、何でもそつなくこなしてくれるんだ」
そう言ってゼノがアイリスを見る。
「ミラーは一番うるさくてトラブルメーカーだけど、どんな小さな違いも見つけてくれる」
今度はミラーを見る。
「ノワールは堅物で不器用でぶっきらぼうだけど、素直でどんなめんどくさいこともやってくれる」
ノワールが赤くなる。
「ルミエなんて凄いよ? 料理は上手くないけど家事を率先してこなしてくれるんだ。みんなのお母さんになってくれてるんだ。たまに間違った知識与えるけど」
ルミエは、まぁ。とランプの先からぽっぽ煙を出した。
「シャルロットはねぇ。いっつも全身怪我だらけですぐにあちこちの部位が取れちゃうし、愛情表現が狂ってるけど、料理がとっても美味しいんだよ」
ゼノー。とシャルロットがゼノに抱き着いた。
「鑑定士様は魔道具の心が理解できるのですか?」
セラの目は真剣だった。
「できないよ」
あっさりとゼノが答える。
「だから理解しようとするんだ。声を聞こうとするんだ」
「なるほど……」
その言葉を聞いて、セラは目を伏せる。
「心が理解出来たり、声が聞こえたりするのはその過程というわけですか」
「よかったら君の声も聞かせてくれる?」
「私は――」
ここでセラは言葉を区切った。
急に空を見上げ左右に首を振る。
「? セラ?」
ゼノの言葉がまるで聞こえないかのようだ。
他の魔道具たちも空を見上げるが何も見えない。
「一瞬ですが……」
セラが冷や汗をかいている。
「何者かに見られているような気がしました……何やらよからぬことが起こりそうなので、私はこれでお暇させていただきます」
セラが大きな翼を広げて飛び立った。
セラが王都に戻ると、国王が上機嫌で待っていた。
今までにこんなことは無い。
あの新しいギルド長までいる。
「素晴らしいぞ殺戮天使!」
その言葉と共に衛兵がセラを捉えた。
「貴様のおかげでようやくあの魔道具を動かせる者の居場所を知ることができた」
国王がそう言うとギルド長がニヤリと笑った。
瞬間、セラは気づいた。
自分が監視されていたことに。
とうとうゼノの居場所がバレてしまったのだ……
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