第9鑑定 接近
「見てくださいゼノ様。野菜の花が咲いておりますよ」
ルミエがにこやかに言う。
「ほんとだ。こんなに早く育つなんて凄いなぁ」
「こっちには実がなってるよ!」
ミラーが甲高く言う。
「お父様。これはもう食べられるのですか?」
更に別の野菜を見て、アイリスが言う。
「凄いよルミエ! こんなに早く上手に育てることができるなんて!」
「私は言われたことをしただけです」
ペコリとルミエがお辞儀をする。
「ボクが料理してあげるよ」
そう言ってシャルロットは収穫したばかりの野菜を持って、急ごしらえのキッチンへ向かった。
「シャルロット。あんたの料理ってホント見た目は気持ち悪いよね。気味が悪いあんたが作ってるからそんな見た目になるの?」
不気味な色の野菜炒めを見てミラーがからかう。
「そんなこと言わないの。これ本当に美味しいよ」
ゼノがパクパク食べる様子を見て、シャルロットは涙をこぼした。
「毎日作ってあげるからね? ボクが作ったの以外絶対に食べないでね?」
「それはちょっと無理かなぁ」
ははは。と苦笑いしながらゼノは、シャルロットの手料理を完食した。
●
「殺戮天使よ」
「なんですか?」
「いつまで待たせるのだ?」
「何をですか?」
「古代の遺産を扱える者を見つけられると申したであろう」
「はい」
ペコリとわざとらしいお辞儀を、殺戮天使はした。
「それで?」
「は?」
頭を下げたまま、目だけを上にあげる。
まるで国王を睨んでいるかのように。
「まだ見つからんのか?」
「いいえ?」
「どういうことだ貴様!」
付き人が噛みつくが、殺戮天使はまるで聞こえないかのような素振りだ。
「どういうことじゃ?」
「既に見つけておりますが?」
頭を上げてニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「なぜ連れてこない!」
付き人が喚き散らす。
「はてさて。無能はよく喋る。私は見つけろと言われただけですが?」
この言い方に国王は頭を抱えた。
「それならば」
ここで国王は一息つく。
「その者を連れてくるのじゃ」
殺戮天使は何も返事をせずに飛び立った。
「国王様。あの魔道具はやはり言うことをききませぬぞ」
「所有権を保持しておっても言うことを聞かせるのは至難の業じゃな」
やれやれ。と国王が首を横に振った。
●
「みんなが寝れるベッドを作ろう」
運んできた木を並べながらゼノが言う。
「私は寝ません」
「魔導人形って寝ないの?」
ゼノが驚く。
「スイッチを切れば電源は切れますが」
「ボクのことはぎゅーってして寝てほしいな!」
シャルロットがゼノに抱きつく。
「ちょっと切りにくいよ」
「我に任せろ!」
「だからノワール! 君は木を切らないの!」
ノワールの柄を持ってゼノがノワールを制止させる。
「貴様! また我の大事な部分を!」
「体温の上昇を検知」
「勝手に検知するでない!」
「ノワールってば照れちゃって」
ミラーがケタケタ笑ってからかう。
「こういうのを恥ずかしがりって言うのよ? 人間の男性が好きな行為がこれよ」
「だからマスターはいっつもノワールにちょっかい出すのか!」
「ほう? 我のことを好いていると?」
「ちょっとみんな? ルミエも間違った知識をみんなに与えないの」
「今のゼノ様のことをツンデレと言いますわ」
「お父様はツンデレと認識しました」
「もういいからベッド作るの手伝って!」
「このノコギリとやら。扱いにくいぞ」
ノワールが苦戦しているのを見て、ゼノがノコギリを取った。
「ちょっと刃が欠けてるみたいだ。修理するから待ってて」
そう言うとゼノはのこぎりを修理し始めた。
「マスターのお約束が始まった」
ミラーがやれやれ。と首を横に振る。
「これがお父様です。何でも修理してしまう」
「そして名前まで付けちゃうんだよねー」
アイリスの言葉を引き取ってシャルロットが言う。
その手にはゼノが修理したトンカチが握られていた。
「このトンカチとかいう道具ははっぴーって名前だっけ?」
「はい! ノワール。のこぎりののこさんは頑固だから注意して扱ってね」
「む。凄いぞ! 先ほどとは切れ味が違う!」
ゼノに渡されたのこぎりを、魔剣のノワールが嬉々として扱っていた。
「マスターが治した道具って、性能が段違いに上がるよね」
「ゼノ様が愛情をかけて修理してくださっているからですよ」
にこりとルミエが笑いかける。
「それはまた、素晴らしい力をお持ちですね」
廃屋の外から声がした。
「巨大なパワーを検知!」
急いでゼノが家の外に出た。
「ごきげんよう。鑑定士様」
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