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隠しギミック

「疲れたぁ……。ゲームで遊んでるはずなのに、授業よりも頭を使った気がする……」


 レイによる、一時間近くに及んだネチケット講座。その教育を受けたヒカリンは、テーブルにぐったりと突っ伏していた。


 教育の中でも特にヒカリンを困惑させたのは、「リアルの顔が見えないからと、ゲームの中では性格が悪寄りに変わるプレイヤーが多い」という事実だ。

 以前遭遇したPK集団のケースを含め、現実で溜まったストレスを発散するためか、ここぞとばかりに悪役を演じる人間はごまんといるらしい。悪役とまではいかなくとも、わざと愛想を悪くしたり、当たりを強くしたりするプレイヤーは珍しくないのだと、レイは真剣な顔で語っていた。


「なるほどぉ。もしかして、レイのツンツンした態度もそういう設定なの?」


「……ッ! アタシは元からこういう性格よ!」


 その話の最中。ヒカリンが純粋な疑問からまたもレイの逆鱗に触れてしまい、頭にごつんとチョップを食らったり。


「わざわざ別の人になってプレイするって、そっちの方がストレスたまらないかな? みんなで仲良くした方が楽しいと思うけど……」


「アンタが相当なお花畑なのはよく分かったわ……」


 最初から菱川ひしかわ陽奈ひなのありのままでゲームを楽しんでいるヒカリンには、別人格を作る感覚がさっぱり理解できず。見事な天然っぷりを披露しては、レイを深く呆れさせたり。


 ……とまあ、細かなハプニングは色々あったものの。

 最後にはレイの気迫に押され、「オンラインとはそういう世界なんだ」と、ヒカリンは無理やり納得させられたのだった。



 ***



 オンラインに対する理解を深めたところで、ヒカリンは本題である隠しダンジョンの場所へ、案内されていた。場所はいつもの平原地帯。かなり遠いらしく、二人は駆け足気味で進む。


 そうして到着したのは、見上げるほど巨大な大木の前だった。レイ曰く、この木は始まりの街と第二の街の中間地点を示すランドマークと言われているらしい。


(でっかい木だぁ……)


 壮大な雰囲気を漂わせる木に感動しつつも、ヒカリンの右腕はピクピクと疼き始める。

 剛腕で殴り倒したい破壊衝動に駆られているのだ。初日のゴーレム以来、デカくて硬い殴り甲斐のあるものと出会えていないのだから。溜まっていた欲求が、大木を見て刺激されてしまった。


 そんなヒカリンの不穏な様子に気づかず、レイは解説を始める。


「ランドマークは本来、破壊不能オブジェクトよ。要するに、どんな攻撃を受けても絶対に壊れない設定になってるわ」


 お試しと言わんばかりに、レイが大木の幹に氷柱つららを放つが、幹は傷一つつかなかった。目印の役割があるため、壊れては困るからだ。


「でも、そこが盲点なの。これが隠しダンジョンの入り口よ」


 そう言って、レイは杖を大木の幹へ向けた。大木のてっぺんとかではなく、幹へと。


「……えーっと、この木はランドマークって種類の壊れない木なんだよね? 幹の中に魔法陣があるとしたら、レイの言ってるお話とズレちゃってるよ?」


「察しが悪いわねー。この木はランドマークじゃないってことよ。単にみんながそう思ってるだけ。始まりの街から第二の街に向かう最初の道のりだから、わかりやすくしてあると思った先入観を利用したってわけ」


 レイが再度、杖を大木の幹に向ける。

 先ほどと明確に違い、魔法を放つまで少しの間があった。魔力を杖に集中させて、強力な魔法を放つつもりなのだろう。


「【アイスインパクト】ッ!」


 展開させた魔法陣から、大質量の氷の塊が幹に激突する。

 すると、絶対に壊れないはずの幹の表面にわずかな傷が入り、そこから青白い魔法陣の光が漏れ出した。


「見ての通りよ。この木は一定以上の高火力を与えないと、傷がつかないギミックが備えられてるの。その高火力は初心者には絶対出せない値だし、オマケに一分以内に次の攻撃を当てないと自然修復されるギミックにもなってるわ」


 そう言われて傷ついた部分を観察していると、ふとした拍子に傷は消え去ってしまった。

 コレは万が一誰かが見つけたとしても、入ることすら相当な苦労がかかりそうだ。


「どうかしら? かなり手の込んだ仕掛けになってるでしょ。ネットの掲示板を漁っても、どこにもなかった情報よ。間違いなく隠しダンジョンの入り口で、誰にも発見されてないわ! 攻略すれば【ユニーク装備】が手に入ること間違いなしよ!」


 レイの瞳が、普段のツンツンした態度からは想像もつかないほどキラキラと輝き始めた。どうやら、レイはよほどユニーク装備が欲しいらしい。


 すでに身に着けているものがほぼユニーク装備になりかけているヒカリンには、その価値がいまいちピンときておらず、レイの興奮ぶりに若干違和感を覚えるが……。

 それよりも、ヒカリンには一つ疑問があった


「魔法ってMPを消費するよね? あんなすっごい技、何回も連続で撃てるの?」


「ふん、アタシのチートスキルがあれば簡単よ!スキル【こおり女王じょうおう】。氷属性の魔法なら、MP消費ゼロで放てるの。……代償はナイショだけどね」


 自慢のスキルを披露し、得意げに胸を張るレイ。

 そして自然修復される前に魔法を再度放とうとしたレイの前に、ヒカリンがひょいっと進み出た。


「私、ちょっと試してみたいことがあるんだけど、いいかな?」


 ヒカリンは木の前で立ち止まり、右手の剛腕をギュッと構える。


「やってもいいけど、どうせ無駄よ。アタシの最大火力でも表面が少し削れるだけなのよ? STR特化のチートを授かったならまだしも、AGIもあるアンタには無理に決まって……」


 レイが呆れたように言いかけた、その瞬間。

 ヒカリンが放った右ストレートが幹にめり込み、たった一撃で大木を横倒しにしてみせた。


「…………え」


 予想だにしなかった光景に、思わず呆気に取られるレイ。

 そんなレイを他所よそにへし折れた大木の断面には、隠されていた魔法陣がむき出しになっていた。


私ごとですが、ツンツンしてる子に僅かなデレが入った瞬間が好きです

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