表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/23

質問攻め

「はあーっ! すっごく気持ちよかったーっ!」


 へし折った大木を前に、ヒカリンは右手に残る破壊の感触を噛み締めて身悶えしていた。初日以来ずっと求めて続けていた「デカくて硬いものを殴る」欲求がようやく満たされ、大満足である。

 そんなヒカリンの肩を背後にいたレイが、ツンツンと二度と突っついた。


「……ちょっと。今のは何?」


「何って、ドカーンと殴っただけだよ? 入り口を出すために壊さなきゃいけなかったんだよね?」


 ヒカリンがキョトンとした表情で振り返ると、レイは必死な表情で。


「そうじゃなくて! どうして攻撃スキルも使わずに、あんなバカみたいな火力が出せるのかって聞いてんのよ!」


「それはねー…………あっ。ダメだ」


「……は?」


 ヒカリンは何かを思い出したように、急に口元を両手で覆い隠した。


「レイ。オンラインのお話で言ってたよね? むやみに自分のステータスを人に教えちゃいけないって! だから教えられないや。ごめんね!」


 学んだ知識をさっそく活かせたことに満足し、自慢げにウインクを決めるヒカリン。

 直後、レイのこめかみにピキリと太い青筋が走った。


「……あれは、信用できるパーティメンバーの場合は例外なの。いいから見せなさい。アタシを信用してるなら見せられるでしょ」


「えぇぇー……。でも、今のレイのすっごい圧を見てると、ちょっぴり信用ならないかも……」


 素直すぎる本音をうっかり口にした瞬間。

 ヒカリンの両頬がレイの両手によって、むにーっと横に引っ張られた。


「わ、わはった! わはったはらひっぱはいへー!」


 両頬を限界まで伸ばされたまま、涙目でギブアップを宣言し。

 ヒカリンは渋々、自身のステータス画面を展開した。


―――――――――――――――――――――――――

名前:ヒカリン レベル:14 職業:ファイター

HP:1/1 【10-9】

MP:1/1 【10-9】

STR 445(筋力) 【10+435】

AGI 1(速度) 【9+35-41】

VIT 112(防御) 【12+100】

INT 1(知力) 【10-9】

LUC 1(幸運) 【20-19】

パッシブスキル:【破壊者デストロイヤー】【不退転ふたいてん】【努力家どりょくか】【軽量化けいりょうか】【空脚くうきゃく】【けがれてくちからだ

アクティブスキル:【加熱ブースト

スキルポイント:6

所持金 : 584G

装備:【剛腕ごうわん・アガートラーム】【機動きどうかなめ】【機動きどう足掛あしがかり】【神秘しんぴのケープ】。

所持アイテム:なし

―――――――――――――――――――――――――


「なっ……!?」


 ヒカリンのステータス画面を見た瞬間、レイの口から素っ頓狂な声が漏れた。

 何に驚いたのかは定かではない。なんたって、突っ込むべき点が多すぎるのだから。


「なによこの極端すぎるステータス……。STRとVIT以外が全部『1』固定になってるのは、チート武器のマイナス補正で縛られてるって予想がつくけど……」


「おぉーっ! 大正解だよ! レイってばすっごいね!」


 【剛腕・アガートラーム】の代償を一瞬で見抜くレイのゲーマー力。ヒカリンはそれに感激し、パチパチと拍手を送る。


 しかし、レイの表情は全く晴れない。

 理解し難い事実が、彼女の脳内をパニックに陥らせていたからだ。


「……ならどうしてAGIが1のくせに、アタシと並んで歩けてるのよ! デュエルの時だって、ハエみたいに空中で動き回ってたじゃない!」


 レイが凄い剣幕で詰め寄ってくる。

 ハエ扱いされた事にツッコミたかったが、また頬を引っ張られるのはごめんなので、ヒカリンは反論しないで素直に白状することにした。


「それは【軽量化】のスキルのおかげだよ。AGIの規定値に補正がかかるから、数字だと1にみえても速くなれるんだって」


「そんなふざけたスキル、どこで手に入れたのよ! というか、アンタのスキル欄どうなってんの!? 見たことも聞いたこともないスキルしか並んでないんだけど!」


「そりゃあ、ほとんどが【ユニーク装備】のスキルだもん。世界に一つしかない装備のスキルなんだから、みんなが持ってないのは当たり前じゃないかな?」


 ヒカリンは当然のように、悪びれもせずケロッと答えた。


「ほ、ほとんどがユニーク装備……?」


 レイは顔を引き攣らせ、改めてヒカリンの装備欄を凝視する。


「ちょっと待って。アンタの装備欄、本当に全部見たことない名前なんだけど……」


 震える指でステータス画面をなぞる。そして、最後の一枠でピタリと動きを止めた。


「……あっ、【神秘のケープ】だけは知ってるわ。始まりの街で売られてる、無駄に高くて使えない産廃ユニーク装備でしょ。…………って、なんで初心者のアンタが、あんな大金を貯められてんの!?」


「ええーっと……レイ? いっぺんに疑問を投げられすぎても、全部は答えられないよぉ……」


 怒涛の質問攻めにヒカリンがたじろぐ。

 そんなヒカリンの肩を、レイはガシッと強く掴んで前後にガクガクと揺さぶった。


「アタシは発売日から毎日頑張ってたのに! なんでアンタが【ユニーク装備】をそんなに持ってんのよーーっ!」


 静かな平原に、青髪少女の魂の叫びがこだました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ