36話 帰宅にて
月奈は、学校での業務を滞りなく終えると、すぐに帰宅する。
「お先、失礼します」
職員室でそんな風に一声かけてから、学校を後にした。
学校からは車でいつも帰宅しており、今日はいつもに比べて少しそわそわした気分だった。
それは少し日奈のことが心配になったからだ。
今日は学校には来ていなかったから、いつも通り学校をズル休みしているのかと月奈は思った。
しかし妙に胸騒ぎがしていて、日奈のことが気になりだしていた。
一応携帯へと連絡を一本したのだが、返信が全くない。
普段なら連絡したら、『ごめん』とか返すはずなのに。
やっぱり日奈の家へと家庭訪問するべきなのかと思った。
しばらく運転していると、見覚えのある姿が歩道で見えた。
華月だった。
月奈は車を道路脇に止め、華月に手招きした。
華月はそれに一回頷くと、車へと乗り込んだ。
そしてどこか寂しそうな表情を携えていた。
「ねーちゃん。ありがとう」
「別に良いんだよ。私が毎日送ってあげても」
「いや、ねーちゃん、心配過ぎだろ」
「あはは。そうかも」
月奈は少しぎこちなく愛想笑いした。
「オレの心配するよっか、日奈ねーちゃんの心配しろよな」
「日奈さんね。うん、分かってる。それで、日奈さんに何かあったの?」
「うげっ」
華月は少し気まずそうに言った。
それから少し微笑んで、
「いや、ねーちゃんってこういう勘が鋭いことが多いよな」
「あんた私が何年、姉やっているわけ?」
「まあ、そうだよな。ねーちゃんには敵わねーや」
「まあ、行くよ、華月ちゃん」
「えっと、帰らんの?」
「今から椎名家にお邪魔するの」
「うげっ……」
また何やら気まずそうな表情になる華月。
「どうかしたの? 私、怒らないから言ってみ」
「いや、だって、日和さんいるから」
「あー、そうだね……」
月奈もつられて気まずそうに苦笑いした。
「だ、大丈夫だと、良いんだけどね〜」
「なんか頼りないけど、交渉はねーちゃんに任せるよ。オレは交渉事は苦手だし、ねーちゃんがしたほうがまだマシ」
「何よそれ。私だって、本当は怖いんだよ。でもね、やるべき時にしっかりしないと私姉として失格だよ」
「ふーん。そんなもんか」
華月はそう言い終えると、窓の景色を眺め始めた。
それからしばらく無言のまま、目的地の椎名家にたどり着く。
こうしてたどり着いた椎名家だったが、何やら少し騒がしいような気がした。
「なんかあったんかな?」
華月は月奈にそんな風に声をかけた。
月奈は首をかしげた。
「なんだろうね」
そうやって月奈が呟いていると、家の方から一人の青年が現れた。
「き、君たち……」
青年は思わず声を漏らした。驚いた顔をしながら。
一方、月奈は冷静を欠けることなく、
「お久しぶりです。椎名日奈さんの担任をしている大泉月奈です」
「あー。そうか、そうか。まずいなー」
青年はそう言いながら、手を頭に当てた。
それかすぐに真剣な目で月奈達を見ると、口を開いた。
「二人に単刀直入に言うぞ。日奈が行方不明なんだ」
「え……」
月奈と華月は思わず声を出した。




