閑話 拝啓、遠い異国にいる姉へ
ま昼さんへ
わたしはま夜です。
あなたが私のおねーさんのま昼さんでしょうか。
わたしは今、遠い国から手紙を書いています。
この国はイギリスと言うのです。
イギリスはお魚のりょう理ばかりで、少しいやです。
でも大きなおしろだったり、時計タワーとかあって、とにかくすごいんです。
それにみんなわたしになかよくしてくれます。
でもみんな、よくえい語つかってくるので、えい語が少しにが手なわたしにとってたいへんです。
あと、イギリスで日本の人に会いました。
なぜかわたしと話すと、えい語なんですよね。
そんなにわたしは外国の人に見えますか。
あなたがすむ日本はどんなところですか。
日本にはおいしいものがたくさんあると、お父さんに聞きました。
いつかわたしは日本に行って、おねーさんといっしょにおいしいものたくさん食べたいです。
あと、おねーさんとなかよくなりたいです。
また、手紙書きます。
ま夜より
*
真昼は国際郵便で遠い国イギリスからの妹の手紙を受け取った。
その手紙を受け取って、初めて妹の名前を知った。
ああ、そうか。私の親は向こうで子供作って……。
真昼はどこか嫌な気分になっており、心の中で羨ましさが籠り、こんなことを思うようになっていた。
私のこと捨てたくせに――――――
真昼は最初、手紙を開けることを躊躇していた。
理由は国際郵便で送られた手紙だったこともあり、送り主は親だったと思い込んだからだ。
しかし送り主の名前は『七せま夜』と書かれており、親の名前でないということを知った。
じゃあ、この『七せま夜』とは一体、誰なのか。
ああ、そういうことかと、真夜はすぐに納得した。
『七せま夜』とは真昼の知らない妹のことだと。
そして真昼はその知らない妹の手紙を開くことにした。
手紙を読み終えるころには、真昼はどこか胸が締め付けられるような感覚に陥っていた。
真昼はそれから、この妹に会ってみたいと思うようになっていた。
すぐさま行動に移すべく、私の親代わりである親戚の人に相談することに。
しかし親戚の人の言葉で、真昼の表情は曇った。
だめだという、その一言だった。
真昼は大声で泣きじゃくったあげく、家から飛び出した。
*
太陽が燦々と照らされ肌を焼き付けるような日
白いワンピースの真昼は裸足のまま暑いアスファルトの道路を走っていた。
あんなところいるよりどこかに行く方がましだとい思い、何も履かずに外に出たので、足がすでにジンジンと痛くなっていた。
真昼はしばらく走り続けた挙句、急にめまいで意識が飛んでいき、倒れ込んでしまう。
ああ、私はこのまま死んでしまうのかと真昼は失いかけた意識の中、アスファルトの道路を見ていた。
するとそこに一人の青年は日傘を差しながら駆け寄って来る。
真昼はその姿を見てから意識を失った。
*
真昼は知らない天井を見た。
ここは一体と思いつつも、真昼はベッドから起き上がろうと試みるが身体が思うように動かない。
どうやら熱中症かなんかで倒れたらしい。
というかここどこなのと真昼は天井を睨んだ。
「動いちゃ、だめです」
そんな可愛らしい声がしたので首だけ動かして声のある方を見た。
そこには三つ編みを二つ下げた茶髪の少女がいた。
私と同じ小学生くらいなのだろうか。少し年下のように感じる。
少女の手にはらくがき帳と鉛筆が握りしめられていた。
多分、この子が私に警告してくれたのだろうか。
真昼は少し微笑みかけながら聞いてみる。
「あの、絵が好きなの?」
少女は驚いた様子で、それから少し恥ずかしそうな顔をしていた。
「み、見ないで……」
「え?」
「あ、ごめんなさい。あと、絵は好きかもです」
「なにそれ、好きかもって、ぷぷ……」
真昼は少し笑いをこらえながら聞いていた。
少女は首を傾げた。
「あの、私、何かおかしなことでも?」
「いや、そんなことないと思うよ。へー、絵が好きなんだ」
「え、はい。おじいちゃんが絵を描く人で、お仕事とか見ていたら、いつの間にか自分も……。というかなんで自分は見ず知らずの人に……」
少女は立ち上がった。
「兄を呼んできます」
少女はそう言うと、部屋から出ていった。
しばらくして部屋からとある青年がやって来る。
「あの、君、大丈夫か?」
「えっと、あなたは……」
さっき真昼を助けてくれた青年が目の前にいた。
「いやー。無事で何よりってところかな。あ、初めまして、僕は椎名夕月って言います。それとさっきいた女の子は妹の日奈です」
「あの、ありがとうございます。私、真昼といいます」
「そうか、真昼ちゃんね。よろしくって、あ、いっけねー、僕、彼女とデートの時間だった」
「え?」
「そいじゃー、あとは妹送り込んどく、じゃ!」
青年は颯爽と部屋を出ていき、少女日奈が戻ってきた。
「日奈ちゃん、さっきの人、何者?」
「えっと、お兄ちゃんだよ? 血は半分しかつながっていないけど」
「なるほど。というかあの人、私のことそっちのけで、彼女とデートなんだけど」
「あはは。お兄ちゃんは、そういう人です」
なぜか諦めた表情をしつつ答える日奈。
真昼は部屋を見回した。
どことなく高級感溢れるこの空間に真昼は首を傾げた。
「てか、この家何?」
「えっと、私たちのお家です」
「広すぎ!」
「え、普通じゃないですか?」
「いや、もっとこう、なんというか」
普通って何だろうと疑問に思いつつ真昼は続ける。
「この部屋だけで一人暮らしくらいの広さなんじゃない?」
「そうですか?」
「ま、まあいいか」
真昼はどこか諦めた。
多分、これは一方通行だと思ってしまったから。
真昼は日奈の手に抱えられる落書き帳に目をやった。
「それで日奈ちゃんって、本当に絵が好き、なんだね」
「あ、うん。この落書き帳はいつも持ってる。いつでも絵が描けるようにって、おじいちゃんから貰った大切なものなの」
日奈はそう言いながら落書き帳を大事そうに抱きかかえた。
真昼はそれを見ながら、なぜだか羨ましいと思ってしまった。
私にはそういうものないんだから――――――




