32話 オレ様に付き合え
真夜は大泉先生と職員室でとあるお願い事を引き受け、下校することにした。
大泉先生のお願いは、日奈に寄り添ってあげることである。
そんなことならいつだってやっていると真夜は思っていた。
だけど大泉先生はいつもよりも少しピリついていた気がする。
何というか、何かこれから起こる最悪な事態を恐れているかのように。
まあ、未来のことを考えったって仕方ないよねと、この時の真夜は少し余裕があった。
下校中、真夜は下駄箱付近でとある少女と再会を果たした。
「あ、お前は……」
少女は大泉華月。大泉先生の妹である。
真夜は華月を見て、
「やっほー。昼休みぶりだね!」
「け、お前は相変わらず、元気いいな」
「華月は元気なかったりする?」
「オレのことなんてどうでもいい!」
「あはは、ボクっ子なら聞いたことあるけど、オレっ子なんだ。華月は変わっているね」
「オレのことバカにしているのか?」
「いや、変わっているなって思っていたけど、馬鹿にしているわけじゃないよ」
「ふん。どうだか」
華月は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「華月は帰らないの?」
「いや、帰るけど。でも、ちょっとな」
華月は何かを指差した。
それはとある女子高生達だった。
「あの子たちがどうしたの?」
真夜は気になってふと、こんな風に聞いていた。
それに対して華月は気まずそうに、
「いや、あいつら、オレにちょっかいよく出してくるやつらでさ」
「そう? なら、やめてって言ってあげようか?」
「いや、いい。そんなことしなくて」
華月はなぜかもじもじしながら視線を落とした。
「もう少し、ここで待ってから、オレは、帰るから」
「そう? じゃあ、私の話し相手になってよ」
「は? なんでオレがお前の話し相手になんなきゃいけないんだ? だってオレは、ずっと、お前を拒絶しているわけだし」
「じゃあ、まあ私の独り言を聞いてくれるだけでいいよ」
「ああ、しゃらくせーな。オレでいいなら、聞くし」
「素直じゃないね、華月は」
「うっせー。オレのことはどうでもいい。それでお前はオレに何か聞いてほしいことがあるんだろ?」
「うん。まあ最初は一人で解決しようと思っていたことなんだけど、ううん、ちょっと他の人の意見を聞いてみたくてね」
「ふーん。ギャルなのに、意外と真面目なこと考えているな。オレ様、少し関心したぞ」
「あ! だから私のことギャルって言うの禁止だから!」
真夜は思わず声に出して否定した。
「それでさっきさ、大泉先生、いや、華月のお姉さんにお願いされた事なんだけど。そう日奈のこと」
「日奈って。お前、日奈ねーちゃんと知り合いだったのかよ」
「うん。知り合いというか、友達」
「なんだよ。それなら最初から早く言ってくれよ。だってオレ、日奈ねーちゃんとはいとこ同士で」
「え? そうなの?」
「うん。だからさ、日奈ねーちゃんって呼んでる」
「そうだったの!?」
「ま、そういうこと」
まさかの事実を知ってしまった真夜は思わず驚かずにいられなかった。
「てか、オレのねーちゃん言ってなかったのかよ」
「まあ、そんなとこ」
「相変わらずオレのねーちゃん、ぼーっとしてやがる」
「あはは。確かに月奈ちゃんってそんな感じだよね。なんていうかいつものんびりしている感じ」
「そうそう。ねーちゃんいつもそんな感じだからさ、日和さんにも、あ、この話はいいや」
「ん? どうしたの?」
「まあ、日奈ねーちゃんが信じれる人なら、オレも信じるよ」
「おや、180度性格が変わったね」
「うっせー。だからオレのことは良いんだ」
「全然可愛くない……」
真夜は少し苦笑いした。
「で、さ、真夜」
「よ、呼び捨て……」
「良いだろ、そんなこと、お前だって呼び捨て。だが、お前に一つ忠告してやる!」
「何?」
「悪いことは言わねー。日奈ねーちゃんの家庭事情には絶対に踏み入れるな!」
「え、どうして?」
「まじで、特に、日和さんって人がヤバいから」
「どんな感じに?」
「とにかくあの人とレスバしても100パー、正しいこと言っていても勝ち目ないってことだよ。それくらい、あの人は頑固なの」
「そうなの? じゃあ、気を付けるね」
「ああ。そうしてくれ」
華月は遠くの方を見て、あの女子高生達がいなくなったのを確認し、
「なあ、真夜」
「ん?」
「オレ様に付き合え」
「いいよ」
「否定しないのかよ」
「だって華月は悪い子じゃないんでしょ?」
「ま、まあいい。とりあえず出よう学校から」
華月は少しばつが悪そうに言った。
それから華月と真夜は二人で下校することになる。




