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真夜とトーラス  作者: 白糸モモ
2章ドーナツ・ロンド編
33/35

31話 ジュルネ

 椎名日和の来訪による嵐が過ぎ去ったすぐのこと。

 大泉先生こと、大泉月奈は密かにとある作戦を考えようとしていた。

 それは椎名日奈をあの母親、日和から自立させることだった。

 だが、相手は日和であり、大泉先生にとっては昔からの天敵である。

 日和はとにかく自分が言ったことを曲げないまっすぐなところがある。

 要するに頑固な性格で、厄介である。

 頑固な性格が故に、他者が意見しようとしても、否定され、最終的に日和の意見が押し通されてしまうのだ。意見には正直100%正当なものであるとは言えないときもある。

 こういうところが高校の先生たちにも有名であり、一年の時に担当した先生も辟易したのだとか。

 大泉先生は自分が日奈の担任になったからには、この一年で少しでも日奈の問題を解決してあげたいと考えていた。

 多分、昔から日奈のことを知っているからであり、日奈は私にとってのもう一人の妹みたいな存在であるから。

 こういうのも椎名家と大泉家は親戚関係があり、大泉月奈、華月は日奈とはいとこ関係にあたる。

 だからなのか日奈にはもう一人の妹に思えて、どうしても助けてあげたいといった気持ちになってしまう。

 こうして考えている間にも、次の授業時間への予鈴が鳴る。

 あ、急がなくちゃと、月奈は急いで職員室へ行き、授業の教材を取りにいくのだった。

 


 放課後になってから、大泉先生はとある女子生徒を職員室へと来るように指示を出していた。

 

「失礼します!」


 明るく元気な声と共に現れた女子生徒は七瀬真夜。

 そんな女子生徒を呼び出したのは、大泉先生である。

 なぜ真夜がここに現れたのかというと、それは問題解決のためのキーパーソンとなりうる存在だから。

 これから起こりそうな問題として日奈が母親に縛られること。それは日奈はきっと望んでいない。

 そのためには真夜の協力が必要だと、大泉先生は考えていた。

 

 真夜は大泉先生を見つけるとすぐに駆け寄ってくる。


「月奈ちゃん! 月奈ちゃんが私を呼ぶって珍しいね!」

「しー。職員室では静かにね。それに私のことは大泉先生って呼ぶこと。いい?」

「はーい」


 この子は本当に分かっているのだろうかと思いつつ、大泉先生は少しクスっと笑った。

 それから大泉先生は真剣な眼差しで真夜を見た。


「七瀬さん。あなたに頼みがあります」

「あー、はい。何でしょうか」


 真夜は何か察したわけか真剣な顔で大泉先生を見た。


「あなたに日奈ちゃん、いえ、椎名日奈さんを救ってほしいです」

「先生」


 真夜はジーっと大泉先生を眺めてくる。

 大泉先生は少しだけ気まずくなって、


「えっと、七瀬さん? どうかしましたか?」

「うん。やっぱりなんでもない。でも、良いよせんせー」

「ありがとう。七瀬さん」

「それで私にできることってありますか?」

「そうですね。とにかく今は椎名に寄り添ってあげてください。小さな変化があったら私に言ってほしいです」

「うんいいよ」

「ありがとう。やっぱりあなたが日奈の友達になってくれて嬉しいわ」

「あの、せんせー」


ふと、真夜は気になったわけか、大泉先生に聞いてくる。


「私なんかで良かったわけ?」

「あなたじゃないとだめだと思ったから。それにあなたが日奈と一番仲が良さそうだからじゃだめかな」

「そうなんだ。うん分かった」


 真夜は納得するかのように頷いた。

 それから職員室を出る前に真夜は一言。


「せんせー任せてよ。私に」


 真夜は少し上機嫌に職員室を出ていった。


 真夜が出ていった後、大泉月奈は日奈の元へ一本電話を入れてみることにした。

 しかし電話が繋がらなかった。

 なので大泉月奈はメッセージを送ってみた。


『あなたは今、どこにいますか』


 すると既読がすぐに着き、それから返信が来て不安な気持ちがこみ上げた。

 日奈からの返信は、『今、実家にいます』というものだった。

 それは日奈があの母親の言いなりになるということを意味していた。

 大泉先生は日奈への返信に悩ませつつ、ため息をついた。

 それから後日、大泉先生は椎名家の屋敷へと赴くことになる。

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