73.キールの気遣い
翌日、休みの日がやってきた。
ブリアはライナーと約束していた乗馬をする為に、朝からせっせと支度をしていた。
正午過ぎに、待ち合わせをしたいたのでこの日はブランチをした。
ブランチを食べ終えたブリアは、乗馬用の服装に着替えて父と母であるケビンとクレアに挨拶を済ませて馬車へと乗り込み出かけたのだった。
乗馬場へ到着したブリアは、ライナーが待っているだろう厩舎へと向かった。
厩舎が見えるとライナーの姿も見えた。
「ライナー様。」
ブリアは、ライナーの姿を見つけたので名前を呼んだ。
「ブリア様…」
ライナーもブリアに気づき言った。
「お待たせしてしまいましたか?申し訳ありません。」
ブリアが申し訳なさそうに言う。
「いえ…」
ライナーがそう言うとすると、後ろから別の声がした。
「ええ…とても待ちましたわ…とてもね…」
そう言って、厩舎の横から現れニヤリという表情を浮かべていたのはローズ嬢であった…
※
同じ頃、王宮の皇太子執務室にはロンとキールが居た。
「休みの日まで借り出してすまなかったな…」
ロンが無表情のままキールへ言った。
「それは…別に構わないよ…はぁ…ただ、その君の表情どうにかならないか?」
キールはため息をつきながら言った。
「私の表情?何かおかしいのか?」
ロンが尋ねた。
「はぁ…おかしいもおかしいよ。この世の終わりみたいな顔してるよ?君がそんな表情してたら周りまで辛気臭くなってたまらないよ…原因は…ブリアかい?」
キールが呆れた様に言うと、ロンが目を見開いてキールを見た。
「何故…ブリアが原因だと?キール、何か知ってのか?ブリアが急に私に冷めた態度を取り私を突き放した事を…」
ロンは、少し前のめりになりキールに尋ねた。
「ロンは、何故急にブリアがそんな事を言って冷たい態度を取ったかわからないの?」
キールは呆れた様に言った。
「わからないから聞いているのだ。何度も何度も考えた。だが、わからないのだ…」
ロンは、悔しそうに応えた。
「本当にわからないの?」
キールが再度尋ねた。
「本当にどうしてなのかわからないのだ…私が何かしてしまったのか…」
ロンは、頭を抱えて応えた。
「……ふぅ〜…一国の皇太子のこんな姿は見せれたもんじゃないね…ロンは今までなんの為に皇太子として過ごしてきたの?あれだけ人を見る目が肥えたのにわからない?」
キールは、少し強めの口調で言った。
「…………。」
ロンは、何も言い返せず黙っていた。
そんな、ロンに痺れを切らせたキールがポッケから手紙を取り出しロンの前へ置いた。
キールは、ブリアから念の為に自分が預かると手紙も預かっていた。
(かお…ごめんな…手紙の事はロンには話さないって約束したけど、破っちまった…こんなロンは情けなくて見てたらイライラしてしょうがないからな。あぁ〜後でかおにガミガミ言われるんだろうな…)
キールはそんな事を考えていた。
キールから手紙を渡せれたロンは不思議そうにしていた。
「この手紙は…何だ?」
ロンは、そう言うと手紙の中身を隠した。
そして、大きく目を見開いた。
「こっ…これは?もしや…これはブリア宛なのか?」
ロンは、険しい表情をしてキールに尋ねた。
「……あぁ。ブリアには手紙の事は、ロンには言わないで欲しいと言われたんだけどね…あんまりにもロンが抜け殻の様になってるのを見たらもどかしくてね…」
キールは苦笑いしながら言った。
「何故…私に黙っておいてくれなど…」
ロンは、少し寂しそうな表情で言った。
「本当にわからない?ブリアは君が危ない目に遭ったのを見て、この手紙がただのイタズラではない思ったんだよ。そして、自分がロンの近くに居ることで、ロンが危険な目に遭うのが耐えられなかったんだろうね…だから、ブリアは君から遠ざかる事を選んだんだよ…ブリアにとって君が大切な存在だからだよ…何ともブリアだし考えだよね…あの子は、自分の事より人の事。って考えを持ってるからね。実際、君が植木鉢を落とされて以降は何も危険な目に遭ってないだろう?きっと手紙の差出人は、近くでブリアを監視しているのかもしれないね。それをブリアもわかってるからロンとの接触を避けてるんだろうけどね…どう?この説明で理解してくれたかい?」
キールは、ふぅーと息を吐きながら言った。
「ブリア……お前は…私の為にそこまで考えてくれていたのか…それなのに…私は自分ばかり傷ついたと思っていたのだな…皇太子として何とも恥ずかしき事だ…」
ロンは、今にも泣きそうな表情で力なく言った。
「まったくだよ…本当に皇太子とは思えない様だったよ。ブリアも自分で決めた選択だったけど辛く悲しんでいたよ…いつもお転婆で元気が取り柄のブリアがだよ?二人を見てたらこちらがモヤモヤして仕方ないからね…ブリアと早く話しなよ?」
キールが、ニヤリと笑いながら言った。
「あぁ…休み明けにでもブリアに会いに行き、話をする事にするよ。たとえ冷たくあしらわれてもな…キール…ありがとう。また、キールに助けられたよ。」
ロンは、ほんの少し微笑みながらキールへ礼を言った。
「あぁ。この借りはまた返してもらうよ。」
キールは、ニコリと笑い言った。
それを聞いたロンも笑ったのだった。
先程まで、無表情で抜け殻の様だったロンに笑顔が戻ったのだった。
その時、ローランドが焦った表情で民街から戻ってきたのだった……




