31.スリム男爵家の令息ライナー
下校時間になった。
ブリアは兄達が待つ馬車へと向かっていた。
馬車に向かう途中で一人の令息が沢山の荷物を一人で抱えてどこかへ運んでいた。
ブリアは一人では大変そうに見えたので声をかけた。
「あの…すいません…お荷物運ぶのお手伝いいたしましょうか?」
ブリアが声をかけると令息が振り返る。
「あらっ…同じクラスのスリム男爵家のライナー様でしたわね。この量のお荷物を一人で運ばれるのは大変ですでしょう?お手伝い致しますわ。」
ブリアが笑顔で言う。
「これは…スペード侯爵家のブリア様。大丈夫でございます。侯爵家のご令嬢にお手伝い頂く訳にはいきません。」
ライナーは遠慮がちに応えた。
「その様な事気にしないで下さいませ。困っている時は爵位など関係ありませんわ。さぁ、お貸しになってください。どちらへ持ち運べばよろしいのですか?」
ブリアはそう言うとにライナーの荷物を半分持った。
「あっ…ありがとうございます。ブリア様。こちらの荷物は教員室へと運ぶのです。」
ライナーはぎこちなさそうな笑顔で応えた。
「教員室ですね。わかりまた。」
ブリアはそう言うと二人で荷物を持って教員室へと向かった。
「私の様な成り上がりの男爵家の令息などに声をかけてください感謝致します。」
ライナーが歩きながらだが礼を言った。
「先程も申しましたが爵位などで声をかけるかけないなどわたくしは致しませんのでお気軽にお話下さい。それよりこちらの荷物は何ですの?」
ブリアは笑顔で応えた。
「ありがとうございますブリア様。こちらは我が男爵家が作っております剣術の練習様に使用される木刀でございます。学園用の物が古くなった様で新しい物をお持ちしたのです。」
ライナーはブリアへ説明した。
「木刀ですの?スリム男爵家は木刀を生産されていらっしゃるのですね。よく見るととてもきれいでしなやかで丈夫な木刀ですこと…なんて素敵なのでしょう。」
ブリアは目を輝かせながら言う。
(こんな質のいい木刀は日本で買ったら高かったんだよねぇ。あたしは木刀扱うの得意だったしよく買ってたなー。使いすぎてよく折れてたけど。これだけ上質な木刀だとちょっとやそっとの事じゃ折れないわね。ライナー様に聞いて一本譲って貰うっと。)
ブリアはそんな事を考えていた。
「素敵でございますか…?ご令嬢ですのに木刀の質がお判りなのですか?」
ライナーはとても驚いた表情でブリアに尋ねた。
「えっ?ええ…。お兄様方がよく剣術の練習をしてらした時に木刀の質についてよく教えて下さっていたのです。」
ブリアは上手く誤魔化し応えた。
「左様ですか。我が男爵家の木刀を褒めて頂けるなんて嬉しい限りでございます。この木刀や他にも防具などもございますがその様な物を生産していて皇帝陛下にお眼鏡頂き爵位を承ったのでございます。」
ライナーは嬉しそうに説明してくれた。
「そうなのですね。この様な素晴らしい物を生産なさってるのですからお眼鏡にかなって当然ですわ。」
ブリアも笑顔で応えた。
そして、ブリアはさり気なくライナーに言った。
「ライナー様…あの申しあげにくいのですが…もし…よろしければそちらの木刀を一本お譲り頂けないでしょうか……?」
ブリアは恐る恐るライナーに尋ねた。
「木刀をでございますか?」
ライナー驚き混乱気味に応えた。
(そりぁ、令嬢がいきなり木刀欲しいなんて言えばそういう反応になるよねぇー。ははは…)
「はい…このように上質な木刀をぜひお譲り頂きお兄様方に使って頂きたいなと思いまして…やはり難しいでしょうか?」
ブリアは気まずそうに誤魔化様に尋ねた。
「お兄様方にですか…はい。一本ほどでしたら構いませんよ。スペード侯爵家のご令息に使って頂けるなんてとても光栄な事ですので。」
ライナーは納得した様ににこりと笑い応えた。
「本当でございますか?ありがとうございます。ライナー様。とても嬉しいです。」
ブリアは満面の笑みでお礼を言った。
そうこうしているうちに教員室へと到着し二人は荷物を教員に手渡したのであった。
「ブリア様、お手伝い頂き本当にありがとうございました。お陰で早く運ぶことが出来助かりました。」
ライナーは頭を下げお礼を言った。
「いえ。困った時はお互い様ですわ。それに、木刀も譲って頂きましたしこちらこそ感謝致します。ありがとうございます。」
ブリアも頭を下げお礼を言った。
「あっ…今度是非、防具などもお見せ頂けますか?特に腕や身体に身につけられる軽めの物などありましたら。是非、お兄様方にお土産してお譲り頂きたいのです。」
ブリアはライナーに尋ねた。
「はい。畏まりました。良さそうな物を何点かお見せ致しますね。」
ライナーは快く受け入れてくれた。
「ライナー様、ありがとうございます。宜しくお願い致します。それでは、わたくしはこちらで失礼致しますね。馬車でお兄様方が待っておられると思いますので。」
ブリアはそう言うとお辞儀をして足早に馬車へと向かったのであった。




