30.皇太子の心の小さな変化
姿を現した皇太子のロンと兄のローランドはブリアの方へ歩いてきた。
ローランドは笑いを堪えられずにいた。
「お兄様?何故こんなところにいらっしゃるのです?それに何をそんなに笑っておられるのてですか?」
ブリアは頬をプクッと膨らませローランドに尋ねた。
「いや、教室からブリアがローズ嬢達と一緒に庭園へと向かう姿を目にしたものだからブリアが何かされるのではと咄嗟に思い心配してきてしまったんだよ。」
ローランドは笑いを堪えながら応えた。
「そうなのですの?それとお兄様が笑いを堪えておられるの事と何の関係がありますの?それに…何故ロン様まで?」
ブリアは首をかしげて尋ねた。
「いや、笑ってすまない…しかし…ブリアとローズ嬢との会話が聞こえてきたものたから…その会話を聞いていたらおかしくてね…ふふふ…」
ローランドは思い出したかの様にまた笑いだし応えた。
「お兄様方はローズ嬢との会話を盗み聞きなされていたのですか?悪趣味すぎますわ。ん?ですが…よく考えてみますと笑える様な話はしていなと思いますど…」
ブリアは更に不思議そうに首をかしげて言う。
「ブリアは普通に話をしていたつもりだろうけど聞いているこちらとしてはとても面白かったんだよ。ブリアが皇太子妃に興味はないと言い出したあたりから長々と話していただろう?自由木登りが出来ないと聞いたときのローズ嬢の面食らった様な表情ときたら…くくく…」
ローランドは笑いが止まらず言うのであった。
「ブリアは迷いなく私の妃には興味ないと言ったもんだな。」
隣で聞いていたロンが少し不機嫌そうにブリアに話しかけた。
「ロン様ご挨拶申し上げます。ロン様まで盗み聞きだなんて…それにお言葉を返す様ですが迷いがないのは本心からだからです。ロン様はロン様に媚を売ったり色目をお使いなられたりされるのはお嫌いなのでしょ?ご安心下さい。わたくしはその様な事はロン様には致しませんので。ですのでどうか誘拐事件の捜索からわたくしを外さないで下さいね。」
ブリアはコロコロと表情を変えながら自信満々でロンに言う。
あまりにもブリアが言い切るのでロンはモヤモヤとしてムッとなった。
「そこまで言い切らなくとも良い。しかし…ブリアは何故私がその様に媚や色目を使ったりされるのが嫌いとわかったのだ?私は自分で言うのも何だか私の笑顔を前にすれば皆疑うことなどなく媚や色目をつかってくるのだぞ?」
ロンはふと素朴な疑問をブリアに尋ねた。
「失礼ながら…以前にも少し言わせて頂きましたが初めてロン様におお会いした時のロン様の笑顔ほど胡散臭……いえ、わざとらしさが滲み出いるものはございませんでしたわ…」
ブリアはうんうんと自分で自分の意見に納得しつつ応えた。
「さすがは私の妹だな。ロンの笑顔の仮面をひと目見て気づくとは…うん…さすがは私の可愛い愛する妹だな。美しさだけではなく聡明で人を見る目があるのだからな。」
ロンが間を割って誇らしげに言った。
「逆に他の方がわからないのも疑問ではありますね…」
ブリアは渋い顔して言う。
「本当にブリアの前だと調子が狂ってしまう…皇太子たるもの調子を狂わされるなどあってはならないものなのだが…」
ロンは険しい顔で言った。
「あらっ…確かに皇太子殿下としてはそうかもしれませんがロン様の時は狂わされるのも良いではないですか。たまには仮面を脱がれるのも必要な事ですわ。きっと今みたいに話されている方がよほど人間味がありますもね。ねぇ?お兄様。」
ブリアは笑顔で何気なしに言いローランドにも話を振った。
「そうだね…私達から見てもロンは少し頑張りすぎるところがあるからブリアの言うように笑顔の仮面を脱ぐことも必要なのかもね。」
ローランドは笑顔でロンに言う。
ブリアにそんな風に言われたロンは何だか胸の奥の霧が晴れ温かい気持ちになった様な気がしたのだ…
「あっ…中休みが終わってしまいますわ。わたくしは急いで教室に戻りますわね。ロン様もお兄様も遅れませんように。あっ…それと、ロン様、将来の婚約者様をもう少し安心させてあげてくださいね。では…お先に失礼致します。」
ブリアは中休みが終わりそうなので慌てた様子で二人へ言い足早に庭園を去っていったのだった。
「ローランド…まさか先程ブリアが申していたのはローズ嬢の事なのか?」
ロンは苦笑いしながらローランドに尋ねた。
「あぁ…だろうね…ハハハ…ブリアって本当に純粋だから簡単にローズ嬢が将来のロンの婚約者だって疑わなかったんだろうね…我が妹ながら本当にそういう純粋すぎるところが心配だよ…」
ローランドは苦笑いしながら言った。
「はぁ…ローズ嬢が婚約者になるなど想像しただけでも疲れしかないな…」
ロンは苦笑いしながら言った。
「ハハハ…本当にあそこまで話にも挙がって居ないような事を堂々と言うあたりすごいご令嬢だよね…さぁ…私たちも教室へ戻ろう…」
ローランドも苦笑いをしながら応えた。
そして、二人も庭園を後にして教室へと戻ったのだった。
教室へ戻る道中、ロンはブリアにローズ嬢との婚約を信じられている事にもその事を聞かされても何も思ってなさそうだったブリアに気に食わないと思ってしまったのであった。




