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第12話:絆の芽生えと仮の協定 第3編:第4の仲間

第12話:絆の芽生えと仮の協定

第3編:第4の仲間


「サルガタナスを倒すまでの『仮の協定』、受け入れよう。お前の力、頼りにさせてもらうよ」


俺がそう告げると、ブラッドはぷいっと横を向いたまま「ハッ! 当たり前だ、俺様は強いからな!」と鼻を鳴らした。相変わらず態度は生意気そのものだったが、その背中に漂っていた刺々しい孤独の気配は、確実に薄れていた。


「ふむ……『仮の協定』か。相変わらず素直ではない少年だが、まあよい」


シバリアが大歩でブラッドに近づくと、その肩をガシッと力強く叩いた。


「ぐはっ!? なにしやがるゴツい騎士! 叩く力が強すぎるだろ!」


「ははは! 歓迎の印だ! これで決まりだな。貴様は今日から、我が旅の仲間の四人目だ!」


シバリアは満足そうに胸を張り、ブラッドをグループの輪の中へと力任せに引き寄せた。ブラッドは「引き寄せるな! 暑苦しいんだよ!」と暴れていたが、本気で戦斧を振り回して拒絶しようとはしなかった。


その様子を穏やかな微笑みで見つめていたノエルが、一歩前に進み出た。


「ブラッドさん、あらためてよろしくお願いしますね。私はノエルです。回復魔法や後方からの支援を担当しています。何か辛いことや痛いところがあったら、遠慮なく何でも言ってくださいね」


ノエルは胸の前で小さな手を握り締め、心からの温かな笑みをブラッドに向けた。 ノエルの澄み切った瞳と柔らかい言葉を正面から受けたブラッドは、毒気を抜かれたように固まり、顔を急速に赤く染めていった。


「あ……あぁ……。わ、分かったよ半エ……ノエル。お前の回復魔法は……まあ、悪くなかったぜ。助かった……かもな」


「はい! ありがとうございます!」


ノエルが嬉しそうに頷くと、ブラッドは照れくささを誤魔化すように激しく咳き込み、俺の方を睨みつけてきた。


「おい、片腕! 勘違いすんじゃねえぞ! 俺様がここに入ってやるのは、あくまでお前らの戦力としてだ! 役割分担くらいハッキリさせとこうじゃねえか!」


「役割分担か。確かに大事だな」


俺が頷くと、ブラッドは戦斧を肩に担ぎ直し、胸を張って威張り散らした。


「いいか! 俺様はな、近接での斧闘術はもちろんのこと、遠距離からの高熱炎魔法『ラ・ルビ』による火力支援も完璧にこなせる! つまり、前衛で殴り合いながら、遠隔から敵の群れをまとめて焼き尽くす、超攻撃特化の万能アタッカーってわけだ! お前らみたいな地味な剣士や騎士とは格が違うんだよ!」


「誰が地味だ、誰が!」


シバリアが即座に突っ込みを入れたが、俺はブラッドの言葉に深く納得していた。


(前衛での近接火力、そして広範囲への遠距離攻撃……確かに俺たちのパーティに最も欠けていた要素だ)


これまでの俺たちの陣形は、俺とシバリアが前衛で敵の攻撃を受け止めつつ斬り込み、後方からノエルが回復と補助魔法『ラ・ヒール』などで支えるという基本形だった。強力な単体敵や、多方向からの集団戦においては、圧倒的な攻撃力を持つ純粋なアタッカーが不足していたのだ。


ブラッドが加わることで、俺とシバリアが前線を作り、ブラッドが前衛と中距離から爆発的な炎で敵を散らし、ノエルが全体を癒す――パーティとしての戦術の幅が、劇的に広がるのは間違いなかった。


「ブラッドの言う通りだな。お前の炎と戦斧の破壊力は、俺たちにとって最大の武器になる。前衛と遠距離火力、頼んだぞ」


俺が真っ直ぐな目でそう伝えると、ブラッドは面食らったように目を丸くした。


「なっ……お、前……普通そこは『調子に乗るな』とか言い返してくるところだろ……。なんで素直に認めてんだよ……やりづらいじゃねえか……」


ブラッドは口元をもごもごと動かし、困惑したように視線を泳がせた。


「ふっ、ルシフェルは無駄なプライドで仲間を貶めるような男ではないからな」


シバリアが大剣を地面に突き立て、腕を組んで爽やかに言い放つ。


「ルシフェルが前衛の軸となり、私が盾となって敵を食い止め、ノエルが我らの命を繋ぐ。そしてブラッド、貴様がその圧倒的な炎で敵を粉砕する。……素晴らしい布陣ではないか! 旅の第4の仲間として、これほど頼もしい男もおらん!」


「男って言うな! 俺様は悪魔だっつの! ……まあ、前衛の火力不足はお前らじゃどうにもならねえみたいだしな。このブラッド様が特別に助けてやるよ!」


ブラッドは最後まで憎まれ口を叩いていたが、その声には先ほどまでの尖った棘はなく、どこか嬉しそうな響きが混ざっていた。


「よし、これで正式に決まりだな」


俺は三人を見渡した。


剣士である俺、騎士のシバリア、回復術士のノエル、そして前衛・遠距離火力を担う悪魔の少年ブラッド。


それぞれ異なる種族、異なる過去を持つ四人が、今ここに一つのパーティとして集ったのだ。


「目的地は、魔王軍幹部サルガタナス。リコリスを取り戻し、あいつの野望を挫く。……行くぞ、みんな」


「「「応!!」」」


シバリアの力強い返事、ノエルの温かな頷き、そしてブラッドの凶暴で不敵な笑い声が、夜の火山街グランに響き渡った。


こうして、俺たちの旅に新たな第4の仲間が正式に加わったのだった。

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