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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第97話 喫茶店での孤独な戦い

 武術大会が行われている頃のロゼリアはというと……。


「こんなに忙しいとは、聞いていないわよ!」


 クラスの出し物である喫茶店の中で、思いっきり愚痴っていた。

 その理由は、喫茶店の中の状況が大きくかかわっている。

 ロゼリアのクラスにはペシエラが所属している。十歳の特待生というものをひと目見ようと考えた人たちが押し寄せて、思ったよりも大勢の人が喫茶店を利用しているのである。。

 だが、そのペシエラは武術大会に参加しており、クラスの中にはいない。いないと分かって落ち込みながらも、食事だけはしっかりとしていくために、滞在時間が短く回転率がよい。そのため、裏方に回っているロゼリアは忙しいのだ。

 それにしても、なぜ侯爵令嬢であるロゼリアが喫茶店の裏方をしているのだろうか。それは、やはり調理経験の有無である。

 チェリシアやペシエラの二人と一緒に、マゼンダ商会の手伝いをしているロゼリアは、その関係で様々なことを経験している。その中には魔物の解体や調理といった内容もあった。結果、ロゼリアの包丁さばきはかなりのものになっている。

 そして、クラスの人間はほとんどが貴族である。それがゆえに、調理経験のない者が大半を占めており、必然とロゼリアに仕事が回ってきたのだ。

 それなら、チェリシアもいるはずなのだが、実はこの日はチェリシアはクラスにいなかった。というのも、ペシエラの応援のためである。すっかり姉バカを拗らせたチェリシアは、クラスのことをそっちのけにしてしまったのだ。そう、すべてはチェリシアのせいで、ロゼリアが苦労しているというわけだった。


(まったく、魔道具を残していってくれたからなんとかなっているけれど、後で絶対に責任を取らせるからね、チェリシア……っ!)


 恨み節を心の中で言いながら、ロゼリアは一人で対応し続けている。その頃のチェリシアは、小さなくしゃみをしていた。

 さて、この喫茶店の営業には、チェリシアが前世の知識を駆使して作り上げた数々の魔道具が稼働している。だからこそ、ロゼリアだけでもなんとかなっている。

 IHヒーターを再現した魔石を使ったコンロ。果物などを砕いてしまうミキサー。使った食器を洗う食器洗浄機。それらが教室の中で大活躍である。

 これだけあればかなり楽そうなのだが、ロゼリアが悲鳴を上げている一番の原因は、今回の目玉として用意した魚のフライである。

 さすがに大量の油で揚げるわけにはいかないので、平パンの中に少し多めに油を敷いて焼くような感じでフライにしている。その魚と油は、シェリアで生産されたものだ。

 だが、王都から十日も離れたシェリアから魚を運ぶと、普通であれば腐ってしまう。

 それを可能にしたのが、チェリシアの再現した最大の魔道具である。それが何かというと、馬車の荷台部分を冷凍庫に改造してしまった冷凍馬車である。

 これらの魔道具は、学園に入るまでの間にコツコツと作り上げたもの。学園祭で喫茶店をすることを見越して用意していたのである。

 そして、この冷凍馬車に詰め込む魚だが、わざわざチェリシアが瞬間移動魔法でシェリアまで出向いて用意していた。魚を釣っては下処理をして、水魔法で凍らせた上で冷凍馬車に積み込んでいた。もちろん、戻ってきた後のチェリシアは泥のように眠っていたのだとか。

 これだけ苦労して用意したので、たくさん売れてくれるのは嬉しい。嬉しいものの、一人で対応するなど誰が思っただろうか。

 クラスメイトも手伝おうかと聞いてくるものの、上げ方のコツを知らなければ焦がしてしまうので、それ以外のことをやってもらっていた。


(チェリシア~……。明日は、絶対に逃がしませんからね!)


 チェリシアに対して、怨念にも近い恨み節を向けるロゼリアである。この時、再びチェリシアがくしゃみをしたとかどうとか。


 ちなみにだが、今回の喫茶店で使っている魔道具の数々は、ドール商会のロイエールから売りに出したらどうだとか言われたらしい。

 しかし、あくまで学園祭用に作ったものなので、結果を見てからということにして誘いを断ったらしい。確かに、効果は見てもらってからの方がいいのである。


 そんなこんなで、マゼンダ侯爵領、コーラル伯爵領、アクアマリン子爵領のそれぞれの生産物を使った喫茶店の初日は大盛況に終わった。

 マゼンダ侯爵家の果物を使ったフルーツバフェは、男女問わず、甘味好きの貴族たちからは人気だったし、ロゼリアが一人で対応していた魚のフライも相当数が売れていた。ペシエラがいないことで回転率が高かったのが思わぬ効果となったようである。

 翌日の学園祭二日目にはペシエラの試合がないために、チェリシアもセットで喫茶店の手伝いにやって来る。おそらくは今日よりも混むだろう。

 裏方をほぼ一人で回していたロゼリアはへとへとになっていた。それでも、翌日の営業のために、学園祭の初日の終了後、クラスのみんなと今日の反省と翌日以降の改善を話し合うのであった。

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