第95話 武術大会、開始
迎えたサンフレア学園の学園祭の初日。
日程は全部で四日間であり、武術大会は、三日目以外で行われる。
初日と二日目は総当たりの予選、最終日はトーナメント形式の決勝が行われる。
総当たりの予選は、いくつかのグループに分けられており、対戦成績の上位二名が勝ち抜ける。今年は全部で四十人。五人ずつ八つのブロックに分かれて予選が行われる。
さて、ペシエラの参戦の話だが、結果としては認められた。
一番の原因は、やはり入学翌日の武術試験だろう。剣だけでペイル王子に勝ってしまったというのが、かなり大きく影響をしている。
ただ、この武術大会では、魔法が解禁される。そうなると、ちょっとばかり懸念というものが出てくる。
一応、武術大会の行われる闘技場には、周囲を囲むように今は失われた技術で防壁が張られている。新たに作り出すことはできないものの、防壁が壊されても装置さえ無事なら魔力を注げば何度でも復活可能らしい。
そんな設備があっても、懸念が完全に払しょくできない。なんといっても、ペシエラの使う雷魔法は上空から飛んでくるからだ。もし使われれば、被害は避けられない可能性が高いのである。
そして、今年の参加メンバーはかなり目を引くメンバーが多い。そのためもあってか、少々人数が少ない。なにせ学園は六年次までいるのだ。四十人というのは本当に少ない。
理由は、先のペシエラに加え、シルヴァノにペイルという二人の王子、騎士団副団長の子息であるオフライトまでいる。こんなメンバーがいては、おそれ多いとそれなりの人数が参加を辞退したというわけだ。
全体の開会宣言が行われた後、早速武術大会が始まる。
その二戦目にして、早くもペシエラは登場した。
武台の上に上がったペシエラは、堂々と剣を構えている。正面に立つのは、体格のいい五年次の男子学生。十歳のペシエラとの体格差は明らかである。
「おいおい、相手はおチビちゃんだぞ。手加減してやれ!」
「いくらペイル殿下に勝たれたとは申されても、たまたまでしょう」
「あまりにも可哀想だわ」
武台を眺める観客たちが、ペシエラを心配する声ばかりを投げかけている。中には五年次の学生に対して八百長を求めるような声まで聞こえてくる。
ところが、ペシエラはそんな空気を嫌っている。
「さぁ、本気でかかってきて下さいませ。わたくし、手加減されるのはとても嫌いですの。ここは戦いの場でしてよ!」
周りの声などどうでもいいかのように、相手を挑発している。
相手の男子学生は、まんまとその挑発に乗せられる。
「その言葉、後悔させてやるぞ!」
試合開始の合図とともに、五年次の学生はペシエラに向かって攻撃を仕掛けてくる。その剣筋は、確実にペシエラを捉えている。
しかし、その攻撃はペシエラにはまったく当たらない。
剣筋を見切っているのか、踊るようにすべての攻撃を躱していく。
「くっ、一丁前に躱してくれるじゃねえか。だが、そんな恰好でいつまでもつかな?」
五年次の男子学生は、さらにペシエラと攻撃を仕掛ける。
そんな恰好といっていたのだが、なんとペシエラは、この場でも女子の制服にハイヒールという格好で臨んでいる。それでも相手の攻撃はまったく当たらないのだから、とんでもない話である。
それにしても、相手の男子学生は、魔法も使える武術大会でまったく魔法を使おうとしない。それもそのはず、この男子学生は魔法がほとんど使えない。その分、必死に体を鍛えたため、ペシエラよりかなり体格が大きくなったというわけだ。
ただ、その代償も大きかった。力任せになった攻撃は、とても単純で軌道が読みやすい。国家間の戦争を経験したペシエラ相手では、そんな攻撃が通じるわけもなかったのだ。
単純な攻撃ばかりを見せられた、ペシエラはいよいよ飽きてきた。
「ふぅ、お遊びはこれまでですわね」
ペシエラはそういうと、相手の攻撃を躱した後にバックステップで大きく距離を取る。
「はあっ!」
着地したかと思うと、五年次の男子学生の目の前まで飛び込み、怒涛の連続突きを放つ。
そして、とどめとして最後の突きを放つと、くるりと振り返る。
ペシエラが剣を払うように振ると、相手はぐらりと体勢を崩し、武台の上に倒れ込んでしまった。
何が起こったのか分からない観客たちは、静まり返ってしまう。その中で、審判役の教官が武台へと上がり、男子学生の状態を確認する。
脈あり、呼吸あり、意識なし。
「勝者、ペシエラ!」
審判が相手の状態を確認してペシエラの勝ちを宣言すると、会場内からは一気に歓声が上がる。
「すげぇ、勝っちまった」
「一体何が起きたんだ?!」
「連続突きだったよな、あれ」
「だが、攻撃は当たっていなかったぞ」
「ホントかよ!?」
様々な声が上がっているが、ペシエラの攻撃が相手に命中していないことを見抜いた猛者がいたようだ。
そう、ペシエラは突きの風圧だけで相手を圧倒してみせたのである。それだけペシエラの一撃が鋭かったのだ。しかも、魔法をまったく使っていないのだから恐ろしい。
一年次の、しかも十歳という新星の登場に、会場内の熱気は収まることなく、さらなる盛り上がりを見せているのだった。




